スポンサーリンク

声色の統一は大切

 クラシック声楽というジャンルを学んでいく上で、まず手始めにするべき事は、楽器を入手する事です。

 楽器を入手する…これが器楽なら、楽器屋さんに行って気に入ったモノを購入すれば良いだけなので話は簡単ですが、声楽の場合は、楽器屋に行っても“声”という楽器は売っていないのです。歌手が使う“声”という楽器は、残念なことに、歌手が自分で作っていくしか無いのです。

 “声”という楽器を作る…自分の声を見つめ、持っている声のキャラクターのうち、ベストなものを見つけ出し、それを徹底的に鍛え上げて磨いていく。そうやって、自分だけの楽器を作っていくんだと思います。

 自分の声を見つめるのって…難しいですよね。何しろ、大抵の人は自分の声が嫌いなんだそうです。まあ、私も好きじゃないから、その気持ちは分からないでもないです。自分の声が気に入らないあまり、カラオケなどでは、他人のモノマネとか、作り声とかで歌う人の多いこと多いこと。ああ、やりがちだよね。

 なにしろ器楽なら、楽器屋に行って、自分の気に入った楽器を選んで買えばいいけれど、声の場合、気に入ろうが入らなかろうが、自分の手持ちの声を使うしかないわけで、それが自分の理想とはかけ離れた不満だらけの声であっても、それを使うしかないのです。

 でも、自分の声を受け入れて、きちんと見つめていくと、色々と分かってくる事があります。例えば、一つしか無いと思っていた自分の声には、実は色々な音色があって、色々なキャラクターの声がある事に気づきます。それらを極端にすれば、作り声になってしまうけれど、そこまでしなくても、大抵の人は、数種類の声を持っているのが普通です。そのバリエーションのそれぞれを全部鍛えて“七色の声を持つ歌手”として歌っていくのもアリかもしれないけれど、それはジャンル違いの歌手の話であって、クラシック声楽の場合は、その中から、ベストな声を探して、それを徹底的に鍛えていくわけです。

 マシな声をいくつも揃えるのではなく、最高の声を一つにしぼって作っていくのです。最高の声にしていく…つまり、最高の声に、自分が持っている声のキャラクターを統一していくわけです。低音域も中音域も高音域も、同じ最高の声色で歌えるようにしていくのです。これが楽器作りの要であり、案外難しいのです。

 まずは自分が自然に楽に歌える中音域の声色を基本にして鍛えていきます。中音域が使えるようになってきたら、これを少しずつ上下に広げていって、自分の声という楽器を作っていきます。

 私は、少し前までは、低音を胸に落としがちでした。私の場合、声を胸に落とすと、やたらと野太くなるんだよね。なので、低音になると、まるでバリトンのような声で歌っていました。バリトンであるY先生よりも太い声で歌っていて、よく注意されたものです。

 逆に高音は、声がノドに詰まって音にならない事が多かったのだけれど、たまに音程重視で高音を歌おうとすると、思わず裏声になってしまい、アルトのような、カウンターテナーのような声になってしまいました…が、テノールは裏声を使ったら負けだから、それはダメなんだよね。

 低音は油断をすると声が胸に落ちてしまうので、そうならないように油断しないで歌い続け、高音は声が裏返らないようにしながら歌っていくことで、低音域~高音域までテノールの声で歌えるように頑張っている最中なのです。あくまでも最中なのですが…ね。

 そんな感じで、まだまだ楽器を作っている最中の私なのでした。

 なので、少し前まで歌っていたシューベルトの「死と乙女」のD2なんて低音は、声を胸に落とすつもりはなくても、落ちていたと思うんだよね。きっと、傍らから見れば「テノールのくせに、バスもどきの声で歌っていて、気持ち悪い」って思われちゃうだろうなあってねえ。そこが“出せる声”と“使える声”の違いです。

 どんな音域を歌うにせよ、声色の統一は大切だし、それができないと、聞いている人に不快感を与えかねないから、早急にマスターしないといけないわけです。どんなに立派で広い音域の声が出せたとしても、その声色が統一されていないと、とても「使える声」とは呼べないし、そんな声は楽器ではないのです。

↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村 クラシックブログ 声楽へ
にほんブログ村

コメント

タイトルとURLをコピーしました