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2025夏 声楽コンクールを聞いてきた

 何の声楽コンクールなのかと言うと、東京音楽コンクールの第2次予選です。これは例年、夏休みの終わりごろに行うコンクールなので、割とよく聞きに行っているコンクールだったりします。

 それにしても、皆さん、素晴らしい歌唱です。これだけ粒ぞろいの歌手たちの中から、本選出場者を選ばないといけないのだから、審査員の皆さん、大変です。何しろ、審査される側は人生かかってますから、いい加減な気持ちでは審査できません(当然だね)。

 よく言うと、高水準な若手歌手たちが揃いました。悪い言うと(良い意味で)どんぐりさん…かな? そんなに差がなかったような気がします。

 でもね、聞いていて思いましたよ。皆さん上手で素晴らしいのだけれど、ある意味、そりゃあ当然だよね。だって、皆さん、古めのオネエサンだったり、若めのオジサンだったりするんだもの(韓国のテノールさんだけは例外的に若かったね)。

 このコンクール、参加上限が35歳だよ。そして参加者のほとんどが30歳超えだよ。

 35歳手前って、普通に考えれば、もう中堅だよ、社会人になって10年選手で、新人教育とかに携わっているような年齢の人だよ。そんな人たちが、今更新人ぶってコンクール? クラシック声楽界って、大丈夫なの?…って、割と真剣に思ってしまいました。

 コンクールって、無名の新人さんの売り込みの場でしょ? 「業界の皆様、名前と顔を覚えてください、仕事をください!」って場でしょ? そんなところに、30代の中堅の人たちが集まらざるを得ない業界って、ある意味、ヤバいでしょ。

 音大の卒業生って、正確な統計がないそうだけれど、文科省の「学校基本調査」では、2020年度の音楽大学の学生数が約1万6千人だそうだから、単純に4で割ると4千人でしょ。つまり、毎年4千人の音大卒業生が生まれているわけです。

 そのうちの声楽科卒業生を少なめに1割と見込んでも、毎年4百人の歌手の卵たちが生まれるわけです。じゃあ、その4百人が学校卒業したら、みんな、プロのクラシック声楽家として稼げるのかって言えば、私でも分かります。

 「そんなわけ、ねーじゃん」

 だから、30歳過ぎてもコンクールが必要なんですよね。分かります。それだけ就職難な業界なわけです。

 大学という専門教育を終えて、10年近く研鑽を積み重ねていけば、そりゃあ腕前は十分でしょう、皆さん、素晴らしい歌を歌うのは当然ですよ。彼ら彼女らには、仕事の経験以外のものは、もはや十分に備わっているのでしょう。足りないのは、仕事であり、働き口です。そして、働くことで得られる経験です。

 問題点は、仕事がないから、仕事の実績が不足し、彼らの職歴がきちんと形成されない事です。そんな年齢まで、前途有望だった元若者たちを無職のプーのままで塩漬けにしちゃう業界の体質にあると思います。

 コンクールを聴きながら、そういうブラックな業界構造ってヤツを考えてしまいました。

 やりがい搾取、夢盗人な業界だね。でも、これは別にクラシック声楽界だけでなく、多くのエンタメ業界に共通する仕組みなのかもしれないけれど、クラシック業界がヤバいのは、この業界が学校教育産業(音楽大学業界)とリンクしている事かな?

 私が若い頃は、音大卒業するのは、花嫁修業の一環だったけれど、今は…そうじゃないよね。学校で学んだ事は、将来の職業につなげていきたいよね。音楽学んだのなら、演奏家になりたいよね。

 みんながみんな、演奏家を目指せるわけじゃないけれど、その中でも、大きな才能や、中途半端な才能を持った人たちは、当然、プロの演奏家の道を志してしまうわけだけれど、プロの演奏家の座席って、日本では、ほとんど無いんだよね。そこが厳しいわけだ。

 この道に進んだのは自己責任だろうけれど、舞台で一生懸命に歌っているオネエサンたちを見ていると、ほぼ徒手空拳なんだけれど、それでも「頑張れ!」って声かけたくなりますよ、マジで。

 まあ…オジサンたちは…なんやかんや言って、この業界で食っていけるだろうけど…オネエサンたちは、ほんと、厳しいと思うんだよね。

蛇足 本選出場が決まった4人の方、本当におめでとうございます。私は本選見に行かない(だって平日の夜だもん)けれど、全力出して頑張ってください。

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