実は、先日のLFJの声楽マスタークラスで、これと似たような質疑がありました。天羽先生は「お好きな曲を練習なされたらよいでしょう」という答えをしていましたが、それはおそらく、質問者の意図や経歴、歌手としてのレベルが分からないから、そう答えざるを得なかったようです。
実際、質問者の方は、今回始めて、クラシック系の声楽曲を聞いた…そうなんのです。つまり、本当に何も知らない全くの素人さんって事です。
私なら、そういう全く何も知らない素人さんから、そういう質問をされたら、どう答えるか…考えてみました。
まず、質問者の年齢と本気度を確認しないといけません。
若い人なら、これから本格的に勉強すれば、プロに成れるかもしれませんから、そのあたりまで見通して答えてあげないといけません。いい年したオトナなら…そこまで突き詰める必要はないでしょうけれどね(笑)。
本気度…つまりは、カラオケ上手になりたいレベルなのか、かなりガチで勉強したいのかって事です。もちろん、若い人の場合は、ガチからプロへの道があるでしょう。
次に確認しないといけないのは、どこに住んでいるのか、どれくらいの経済的な余裕(あるいは家族の協力)があるのか…です。東京はもちろん、関東近郊なら、まあ良いです。しかし、地方在住者となると…よくよく話を聞かないといけません。実際、LFJで質問した方は、地方在住の方で、宿泊しながらLFJに参加していたようなのです。地方在住だと、本当に、学びの選択肢が狭まります。あと、声楽に限らず、ピアノ以外の音楽を勉強するってのは、お金がかかります。遊びの延長で学んだとしても、かなりかかります。ガチで勉強するとなると、本当にかかります。
なぜ、そういう事を私があれこれ考えるのかと言うと、結局、クラシック声楽って、独学できないからですし、独学できるような教則本や練習曲集が無いからです。
つまり、クラシック声楽を学ぶならば、まず最初にしなければいけないのは、先生を探すことなんです。それも自分の目的を理解し、自分と(人間的な)相性が良い先生を見つけないと始まらないからです。
じゃあクラシック声楽の先生はどこにいるか…ですが、その前に、クラシック声楽の先生って、私が思うに、3タイプの方がいると思うのです。
1)演奏家の方が副業として声楽教師をしている。
2)元演奏家の方(現教育関係者または現指揮者)が副業/本業として声楽教師をしている。
3)ピアニストの方(たいていコレペディさん)が副業として声楽教師をしている。
私が見るに、まあだいたい、この3つのパターンのいずれかなんです。そして、この3パターンに共通する特徴としては、東京近郊にお住まいなんです。
と言うのも、声楽関係の音楽家の方々って、原則的に東京近郊に多くいらっしゃいます。と言うのも、声楽関係の仕事って、日本だと東京に集中しているからです。地方だと、学校の音楽の先生以外に、音楽家の仕事って…まあないし、地方で必要とされている音楽仕事って、すでにその地方にいる少数の音楽家(たいていはポピュラー系の音楽家たち)に独占されているので、そこにクラシック系音楽家たちが移住していく事って、まあ無いし、地方の仕事は、東京から出かけていって行ってくるので、本当に地方在住のクラシック声楽家って、本当に少ないのです。
まあ、地方にも、一応、オペラカンパニーはありますから、地方在住のクラシック声楽家の方はゼロってわけではないけれど、東京近郊の人数から見れば、限りなく少ないというのが実情なわけです。
なので、現実的な話、クラシック声楽を学ぼうと考えると、東京近郊にお住まいの先生のところに通う…という事になる事が多いのですが、これが地理的/金銭的に難しいケースもあるわけです。
ここなんだよね、クラシック声楽を学ぶ難しさってのは…。
独学がある程度効けば、自分ひとりで勉強して、モノになりそうだなって思った段階で、東京に出るなりなんなりができますが、クラシック声楽の場合は、初歩の段階から先生について学ばないと難しいわけです。
ピアノ教師のように、演奏経験がなくても、教師専業でやられている方って大勢いらっしゃるし、都会ばかりでなく、ある程度の地方都市なら先生はいらっしゃるものですが、クラシック声楽となると、演奏経験無しで先生やられている方は少ないですし、地方都市にお住まいの方も少ないのです。
難しいんだよね。
あと、クラシック声楽の先生って、看板出してない先生が多いしね。ウチの近所にも、声楽の先生はそこそこいますが、皆さん看板出してないので、知る人ぞ知るって状態です。
これは声楽教師を専業でやられている方が少ないからなんだろうと思うからです。ピアノの先生なら、電話帳(って古いか?)でも探せますが、クラシック声楽教師なんて電話帳じゃあ見つけられないからね。ネットで探せないわけではないけれど、ネットで見つけても、自分の生活圏とはかけ離れた地域の先生じゃ意味ないしね。
なので「声楽を始めるにあたり、まず何から始めたらいいでしょうか?」って質問に対しては“まずは自分に合った先生を見つけましょう”が答えになりますが、その先生を見つけるのが初心者には大変なのです。なので、本来ならば“あなたならば○○先生に習われるのがよいでしょう”とアドヴァイスしてあげる事が必要なのでしょうが、世の中、そんなに甘くないんだよね。
生徒側に先生を探す(選ぶ)権利があるように、先生側にも生徒を引き受けない(選ばない)権利があるし…ね。
ああ、ほんと、いろいろ難しいーわ。
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