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声楽的な歌い方と合唱的な歌い方の違いについて

 最近、合唱の人と、何かと歌の話をする機会の多い私です。そこで、気づいた…というか、互いに認めあった、声楽的な歌い方と合唱的な歌い方の違いについて、メモ程度に書いておこうと思いました。

1)レガートとマルカート

 おそらく、一番の違いはここかな?って合意したのですが、それがレガートとマルカートの違いです。

 レガートと言うのは、音と音をなめらかにつないで歌う事です。一方、マルカートと言うのは、音と音をはっきりと粒立てて歌う事です。

 声楽的な歌い方の基本はレガートです。メロディーラインをたっぷりと溜めてつなげて美しく歌っていくわけです。合唱的な歌い方の基本はマルカートです。マルカートで歌う事で、歌詞をクリアに発音し、縦のラインを揃えて歌っていくわけです。

2)飛ばす声と溶ける声

 声を遠くに飛ばして歌うのが声楽的な歌い方であり、自分の声を周囲の声に溶け込ませて歌っていくのが合唱的な歌い方です。もし、これを逆に行ってしまうと台無しになります。周囲の音に溶けて観客に聞こえない声楽歌手の歌なんて聞きたくないでしょ? 合唱団の中から、特定の声だけが飛び出して聞こえてくるなんて、せっかくの合唱をぶち壊しにしてしまうでしょ? つまり、そういう事なのです。

 別の言い方をすれば、目立つ声と目立たない声の違い…とも言えます。

3)美しい声と正しい声

 もちろん、声楽であれ合唱であれ、美しくて正しい声で歌う事は前提ですが、どちらがより強調されるのか言えば、声楽では美しい声が、合唱では正しい声が、より必要とされます。

 ってか、声楽では、いくら音程やリズムやアーティキュレーションが正しく理想的に歌えたとしても、声に魅力がなければ、お話になりません。全然ダメです。正しく歌えるのは前提条件であり、それに加えて、美しい声で歌えないといけません。

 合唱だって美しい声で歌える越したことはありませんが、周囲の仲間たちとの声のバランスを取ることの方が、もっと大切です。自分一人が理想的に美しい声で歌えても、周囲の仲間たちがそこまでの声でなければ、あなたの声ばかりが目立ってしまい浮いてしまいし、せっかくの合唱をぶち壊して兼ねません。合唱では美しい声である事に越したことはありませんが、それよりも周囲と息を合わせ、声を溶かしていく方が大切です。

 ですから、声の美しさに関しては、声楽ほど突き詰めていく必要はなく、むしろハモっていくために、正しい音程・リズム・アーティキュレーションで必要があるのです。

4)一人で背負って立つ声とあなたに全部おまかせの声

 これは発声というよりも歌う姿勢の違いかな? 声楽ってかソリストと言うのは、その場の音楽的な責任を背負って立って歌わないといけません。これは、プロアマ関係ありませんし、舞台の大きさも関係ありません。一度ステージに立ったならば、ピアノなりオーケストラなりをリードしつつ、自分の音楽世界を作らないといけないのです。歌手が音楽を作っていくのです。

 一方、合唱の場合は、あなたまかせ…と言うか、すべてを指揮者にゆだねて歌います。ざっくり言うならば、指揮者が演奏者であって、合唱は、指揮者の良き楽器でなければなりません。指揮者の意図を忠実に再現していくように歌わないといけません。決して自我をむき出しにしちゃいけません。あくまでも自分は抑えて、指揮者に声を捧げていくのです。

5)イタリア語とラテン語

 日本語以外の外国語と言う意味で、一番よく歌うのが、声楽ではイタリア語、合唱ではラテン語ってところでしょうか? ラテン語はほぼローマ字ですから、さほど難しくありませんし、イタリア語もほぼローマ字ですけれど…ラテン語程ローマ字っぽくないのが、たまに傷だったりします。ま、それでもドイツ語やフランス語と比べれば、どちらの言語も日本人には親しみやすい言語なんですけれど…ね。

 とまあ、こんな感じの結論を出したわけです。

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コメント

  1. tetsu より:

    こんばんは。

    > 声楽的な歌い方と合唱的な歌い方の違いについて
    プロオケの笛吹きの方でオケとリサイタルが両立できないというのはスケジュールを除いたらあり得ないでしょう。
    アマチュア笛吹きの感想です。

    1)レガートとマルカート
    某アマオケの指揮者からレガートとか柔らかい発音はかなり要求されます。タンギングがキツイと言われてtとかdではなくpで吹いたこともあります。

    2)飛ばす声と溶ける声
    周りののOb.,Cl.,Fg.と溶けることは大前提です。
    某所での現役プロオケの方の公開レッスンで、アンブシュアは何も作らず体幹を楽にしたまま息を吐いたらフルートの音が溶けて飛んでいました。言葉ではなかなか難しいですが。

    3)美しい声と正しい声
    オケではまずリズム、音程とカデンツ終止は最低限必要です。
    ドソロではいろいろな表現を要求されますがなかなか難しいです。

    4)一人で背負って立つ声とあなたに全部おまかせの声
    2ndも一人なので1stに合わせるのは当然ですが背負っています。

    5)イタリア語とラテン語
    フルートの話題と離れますが、ミサのラテン語典礼文は定型なのでなんとなくカタカナで覚えてしまいました。こちらは歌うことはないので発音とかよくわかりません。

    他人様のブログですが、
    https://plaza.rakuten.co.jp/kumanomonomo/diary/200505180000/

    > 発声法的にはソロも合唱も基本的に違いはない
    > この質問の本質は、「ソロと合唱の発声法の違い」ではなくて、「声楽のレッスンを受けた人と、受けていない人が一緒に合唱をするにはどうすればいいのか?」ということにあったのですね。

    ということでしょうか。

  2. すとん より:

    tetsuさん

     フルートの場合は、オケでもソロでも、使っている楽器は一緒だからね。でも、歌の場合は、往々にして、声楽と合唱では、使っている楽器が違うんです。そこが悩ましいところです。

     引用されたくま先生のおっしゃる『声楽のレッスンを受けた人と、受けていない人が一緒に合唱をするにはどうすればいいのか?』という切り口は、まあその通りだなって思います。ただ、『発声法的にはソロも合唱も基本的に違いはないと考えるべきでしょう。』と言うのは、ちょっと間口を広げすぎかな…って気がします。

     管楽器言えば、サックスの場合、クラシックとジャズでは発音法がかなり違います。と言うのも、サックスでは、クラシックとジャズでは求められている音が違うため、その発音法は自ずと変わってしまいます。それを以て「サックスでは、どんなジャンルでも発声法は同じ」と言い切って良いかという命題と同じだと思いますよ。「リードに息を吹き込めば鳴るんだから、どんなジャンルでも一緒」と言えば言えるけれど「いやいや、そうじゃないんだよ」と言いたくなる人もいるわけです。

     あと、声楽と合唱には、単体と群体の違いがあります。声楽は単体だけれど、合唱は群体です。そういう点では、むしろオケの話をするなら、ヴァイオリンあたりを例に持ってきた方が良かったかも。だって、フルートは、ソロでもオケでも単体でしょ? 声楽的な歌い方と合唱的な歌い方の違いは、単体音楽なのか、群体音楽なのかの違いは、絶対に無視できない要素だと思います。

     …って、今思いついたんだけれどね(笑)。

  3. tetsu より:

    こんばんは。

    > サックスの場合、クラシックとジャズでは発音法がかなり違います

    サックスというかリード楽器の経験はないのでまたフルートの話題になってしまい失礼します。
    アンブシュア何も作らないで楽に溜息つくみたいに吹くと意外とジャズっぽい音になる、というのも先日の講習会でありました。以外と通る音になります。クラシックで使う場合はもう少し息をまとめる必要がありますが。

    あと、メトロノームを裏箔で合わせる、たとえばドレミファソファミレの1,2,3,4,5,6,7,8拍でメトロノームを3,7拍めで合わせる練習はなかなか面白いです。今まで裏拍をここまで強調されたことがなくて一人で練習していてもけっこう熱くなります。講師の方は7拍目だけをメトロノームに合わせていてビックリでした。ここまで正確に吹けると休止符あとの音とかタイのあとの音とかリズムが不正確になりやすいよくあるパターンも簡単に正確に吹けそうな気がします。

  4. すとん より:

    tetsuさん

     フルートの場合、ジャズもクラシックも基本的な発音法は同じだし、目指す音色も同じです。ただ、ジャズの場合は、クラシックではあまり使われない現代奏法を普通に使うので、その部分で音の違いを感じるのかもしれません。クラシックじゃ禁忌である“歌いながら吹く”とか“強めの息で雑音をわざと出しながら吹く”とか常套手段ですからね。

    >たとえばドレミファソファミレの1,2,3,4,5,6,7,8拍でメトロノームを3,7拍めで合わせる練習はなかなか面白いです。

     割と初歩のルーチンの練習でおこなます。私も散々やりました。あと、2で合わせるとか4で合わせるとかもやります。拍頭が強拍とは限らないって事です。

     あと、ジャズっぽい音っていうと、クラシック系とは和音の重ね方や省き方がだいぶ違うって事かな? あと、使っているスケールが案外違うとか…所詮は違うジャンルの音楽なんですよね。

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