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声量の不思議

 近くで聞いた時に、大きく聞こえる声は、遠くまでよく聞こえる…と思いがちだけれど、現実は必ずしもそうではないのです。と言うのも、近くで大きく聞こえる声は、往々にして、いわゆる“側鳴り”の声だったりするからです。

 遠くまでよく聞こえる声は“遠鳴り”と言われます。

 遠鳴りの声は、不思議な事に、近くで聞いた時はさほど大きく聞こえなくても、離れたところまで、よく聞こえるものです。しかし、側鳴りの声は、近くで聞いた時は大きく聞こえたとしても、少し離れると聞こえなくなってしまうのです。不思議ですね。そして“声量うんぬん”を語る時に「声が大きい」と言われるのが、実は声が遠くまで聞こえる遠鳴りの声の方だったりするのです。

 物理的に考えるならば、近くで大きく聞こえる声は、エネルギー量が豊富なのだから、遠くでもよく聞こえるはずなのだから、そもぞも“側鳴り”とか“遠鳴り”とか言われるのが、おかしい…と言うか、非科学的なのだが、現実は、案外非科学的な結果となってしまったりするわけです。

 これはおそらく、声が正弦波ではないからでしょう。だから理屈どおりにはならないのでしょう。

 声には色々な周波数の音が混じり合って、その結果、音色が作られるのです。その際に、その声を作っている主な周波数の音が、互いに共鳴共振しあって、強め合っていく関係の場合、その声は遠くまで伝わり、互いに打ち消し合っていった場合、割と短距離で減衰してしまい、遠くまでは伝わらない…ということが起きている…と、別に声楽関係の書籍には書かれていないけれど、私はそんなモンだろうと考えています。そしてそれが“側鳴り”“遠鳴り”の正体だと思うわけです。

 要は「声なんて、そんなに遠くまでは聞こえないものだけれど、ある種の音色にすると、不思議と遠くまで声が届くものであるから、クラシック系の歌手は、そんな“ある種の音色”の声で歌うべきじゃないか」って事で、その“ある種の音色”の声を“遠鳴りの声”って呼んでいるだけなんだと思うわけです。

 だから、我々歌手は、声の音色を重視し、発声テクニックをみがいていくわけなのです。

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