東京は練馬区の光が丘にあるIMAホールに行って、モーツァルト作曲「ドン・ジョヴァンニ」を見てきました。オペラバフという団体による公演です。この団体の公演は、昨年「ハムレット」で見ましたが、なかなか頑張っているオペラ団体なのです。格安料金で本格的なオペラ公演を実施している団体なので、私、実にお気に入りの団体なのです。
今回のスタッフ&キャストを書きます。
指揮:松村優吾
演出:尾城正代ドン・ジョヴァンニ:岡野守(バリトン)
ドンナ・アンナ:林真美(ソプラノ)
ドン・オッターヴィオ:長倉駿(テノール)
ドンナ・エルビィーラ:楠野麻衣(ソプラノ)
レポレッロ:藤岡弦太(バリトン)
ツェルリーナ:上島春菜子(ソプラノ)
マゼット:新町佳風(バリトン)
騎士長:志村文彦(バスバリトン)
その他、オーケストラと合唱団も参加していました。格安オペラだと、伴奏をピアノとかエレクトーン等にしてしまう団体もあるのに、ここはきちんとオーケストラを使っているのはすごいなあと思ったし、合唱団も30名の大所帯だったので、それもまたすごいなあと思いました。音楽的に、ほんと、頑張っているなあという印象です。
実際、演奏は水準以上で、目を瞑って聞く分には、とても楽しめました。あえて言うなら、ホールが悪いのかな? おしなべて歌手の声量に不足を感じました。私は最前列で見ていたのですが、それでもオーケストラに歌手の声がかき消されて、声がほとんど聞こえないという状態が何度もありました。まあ、不足する声量は、聞き手の脳内補正を掛けて、どうにかするのですが、冷静に見た場合、声量不足は否めないかな?と思いました。
今回、私は目を見張った歌手さんが2人いました。ドン・オッターヴィオを歌ったテノールの長倉さんと、ドンナ・エルビィーラを歌ったソプラノの楠野さんです。
テノールの長倉さんは、とにかく美声なのです。実に美しい声で歌われます。こんなに美声なテノールって、なかなかいないです。実に貴重な存在でした。もちろん、技巧的にも優れていたし、声量も大きめな歌手さんです。で、この長倉さん、実は代役だったんです。本来、別の歌手さんが歌うはずだったわけで、ピンチヒッターとして登場したのですが、いやあ、ほんとに良かったのです。代役万歳…って感じですね。
ソプラノの楠野さんは…彼女が歌ったドンナ・エルビィーラって、楽譜上はソプラノの役ですが、実際の公演では、メゾソプラノが歌うことが多いし、ソプラノが歌うとしても、かなり声の強いソプラノがキャスティングされる事が多いのですが、楠野さんは藤原歌劇団で夜の女王を歌うくらいのコロラトゥーラソプラノさんで、そういう意味では、珍しいキャスティングなのですが、それゆえにでしょうか? 私は楠野さんの歌うドンナ・エルビィーラに目が行ってしまいました。そのため、本来のヒロインであるドンナ・アンナはほとんど見ていませんし、聞いていません。それほど、ドンナ・エルヴィーラが役として立っていたのです。
今まで、ドンナ・エルヴィーラって“気が強いストーカー気質のオバサン”だと思っていましたが、楠野さんのエルヴィーラって“ドン・ジョヴァンニにべた惚れな可愛い女性”なんですよ。こういう人物造形は初めてだし、それを体現した楠野さんは、なかなかに演技派の歌手だなと思った次第です。
オペラ全体の演出は、基本的にベタで、最近の「演出で魅せるオペラ」とは違っていて、これはこれでアリかな…と思いました。
良いところを書いたので、次は残念なところです。
ドン・ジョヴァンニを歌った岡野さんは、歌は完璧ですが、外見は、私が思うドン・ジョヴァンニではありませんでした。体格が中肉中背という事もあって、なんとも存在感が不足していたし、イケメンにも見えなかったです。むしろ、従者であるレボレロの方がお貴族様に見えてしまう瞬間が何度もありました。やはりドン・ジョヴァンニは、ダーク・ヒーローですから、存在感がたっぷりないとダメだなって思いました。少なくとも女性が一目惚れしてしまうくらいのイケメンなのですから、身長は必要だなって思いました。ただし、これは岡野さんの責任ではなく、単純にキャスティングの問題でしょうね。大柄なバリトン歌手なんて、掃いて捨てるほどいるわけだし。結局のところは適材適所なんです。人は使い方で光もすれば霞みもするのです。
有名な地獄堕ちの場面では、最近の「業火に焼かれながら地獄の釜に落ちていくドン・ジョヴァンニ」を見慣れているせいか、今回の演出は、全然物足りなかったです。あと、騎士長は陰歌で良かったのでは? 石像そのものを人が演じているため、なんかスケールダウンしてしまっているような気がしました。貴族の墓標に立つ石像ですから、人間の何倍の大きさがあってもいいと思いました。
また、照明が効果的に使われている演出なのですが、前回のハムレットの時も思いましたが、舞台から客席に向かって強いライトを当てるのは止めて欲しいと思いました。あれ、ほんとに目がくらむし、舞台が何も見えなくなります。不愉快で不快なライティングです。ほんと、止めて欲しいです。そもそも、こういうライティングが流行ったのは、80年代でしたよね。演出のスタイルが古すぎます。
とまあ、苦言も書きましたが、全体的には、とても楽しめたオペラ公演だったと思います。次回も、この団体のオペラ公演があったら、ぜひ行きたいと思ってますが…でもここの団体の公演の情報って、手に入りにくいんだよなあ。そこが私にとっては、大問題だったりします。
オペラバフ、良いオペラ団体です。
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コメント
https://gateson-holdings.com/E_GO_opera_chorus_2026DonGiovanni.html
合唱団員、募集していたようですよ。
匿子さん
だから、東京住まいはうらやましくて妬ましいんだよなあ。オペラ合唱は、東京ならいくらでもチャンスがあるだろうけれど、地方に住んでいると、そうそう簡単なモノではないので、うらやましくて妬ましく感じてしまいます。
これは程度の差はあれ、地方在住者に共通する悩み(妬み?)です。