実は、午前中に「動き出す浮世絵展」を見て、午後の時間が空いたので、それを利用して、日本橋に行って、久しぶりに、ロイヤル・オペラのライブビューイングで「ホフマン物語」を見てきました。
えっと“ロイヤル・オペラのライブビューイング”と書きましたが、正確には“英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ”と言いますが、私は今後も“ロイヤル・オペラのライブビューイング”と書くことにします。ちなみに“ロイヤル・オペラ”とは、通称“コヴェント・ガーデン”の事で、映画の中でも、自分たちのことを「コヴェント・ガーデン」と呼んでいるくらいの通称です。それが今年度から、正式名称を“英国ロイヤル・バレエ&オペラ”と変えたわけです。まあ「今後はバレエにも注力するよ」って事なのでしょうね。実際、映画も、バレエとオペラの比率が6:4だしね。で、ライブ・ビューイングではなく“in シネマ”というのも、メトとの区別化でしょうね。
さて、ホフマン物語ですが、以下にキャスト&スタッフを書いておきます。
指揮:アントネッロ・マナコルダ
演出:ダミアーノ・ミキエレットホフマン:ファン・ディエゴ・フローレス(テノール)
ニクラウス:ジュリー・ブリアンヌ(メゾソプラノ)
ミューズ:クリスティーネ・ライス(メゾソプラノ)
リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:アレックス・エスポージト(バリトン)
オランピア:オルガ・プドヴァ(ソプラノ)
アントニア:エルモネラ・ヤオ(ソプラノ)
ジュリエッタ:マリーナ・コスタ=ジャクソン(ソプラノ)
あまりオーソドックスな演出ではないので、初心者の方にはお勧めできませんが、なかなか面白い上演でした。
まず「やっぱりオペラは、スターが出てナンボだよね」と思いました。テノールのフローレスや、ソプラノのヤオは、やっぱりスター感が溢れていて見応えバッチリです。スター主義だった往年のメトを思い出します。あと、オランピアを歌ったブドヴァの超高音歌唱は実に見応えバッチリです。そんなわけで、歌唱がかなり充実していて、うれしいです。
演出は、かなり演劇寄りで、そのため黙役の俳優さんも多くて、演出と歌詞は一致しない部分も多いのですが、そんな黙役の俳優さんの演技のおかげか、わりとすんなり、この演出を楽しめます。そんなわけで、芝居として見ていても、面白いです。
特にこの演出で、変わっているなあと思ったのは、通常の演出では、ニクラウスとミューズは同じ歌手が二役で演じるのが普通ですが、ここでは全くの別人で、同時に舞台に出てきたりします。同時に歌うことはないですが、お芝居としてのからみは若干あったりします。
で、そのニクラウスは、通常はズボン役なのですが、この演出ではオウムです。いや、オウムと説明されていたけれど、使用している人形は…コンゴウインコなのでオウムではなくインコなのです(笑)が、そのオウムの人形と、その人形を操っている人形の妖精(人間の目には見えない存在)で成り立っています。当然、歌手は、パパゲーノみたいなカッコウをして、オウムの妖精を演じながら歌います。
また通常は、3つの悲恋の悲しみからホフマンがミューズによって救われる…のですが、この演出ではミューズによる救済はありません…ってか、この3つの悲恋が、ホフマンの少年期の恋、青年期の恋、壮年期の恋であって、救われるも救われないもないからです、ってか、ここのホフマンには、しっかり奥さんがいるし(笑)。ミューズによる救済ではなく、ミューズに導かれて、これらの悲恋と出会い、ホフマンは人格形成をしていき、それが詩情の獲得につながる…ってストーリーなのだろうと思います。ま、ホフマンはミューズの手のひらで踊らされているわけなのです。
踊らされている…というと、この上演では、やたらとバレエシーンがあります。全体の1/3くらいはバレエシーンかもしれません。とにかく、誰かが歌い出すと、どこからともなくバレエダンサーたちが現れて踊り始めます。とにかく、バレエが充実した上演なのです。なにしろ、第2幕のアントニアは歌手でばなく、踊れなくなったバレリーナって設定ですから、ほんと、オペラ全体にバレエが満載されています。
そんなわけで、全くオーソドックスではありませんが、見どころは随所にあり、とても楽しめる上演になっています。私のような擦れた客には、これくらいエキセントリックなオペラもアリですね。
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