声楽を…と言うか、発声を学ぶ上で、一見良さそうだけれど、実はやっちゃいけない勉強方法に「プロの声をマネる」というのがあります。
誤解が無いように書いておくと、マネてはいけないのは「プロの声」であって、そのプロの表現方法とか、歌唱テクニックとかは、大いに学び、マネできるものならマネするべきです。やっちゃいけないのは、あくまでも、プロの声をモノマネする事です。
いや、モノマネがモノマネレベルなら…つまり、お遊びレベルなら、まあ良いのかもしれません。ただ、ガチ歌レベルで、特にオペラ歌手のモノマネをやっちゃうと…声が潰れちゃいますからね。
声、壊れるよ、マジで。ノドって弱いんだよ、だって粘膜だもの。だから無理をしちゃいけないんだよ。
さて、ではマネてはいけないのなら、どうしたら良いのか?
…自分を受け入れて、ひたすら鍛える…だけです。
美しい歌声とか、理想の歌声とか、そういうモノは確かに存在します。でも、発声を学ぶ時に、それを目指すのは、かなり違うのです。
自分の声は、たとえどんな声であれ、自分の声なのです。で、私達にはこれしか与えられていないのです。だから、自分の声をひたすら鍛え上げるだけなのです。
憧れる声がそばにあったとしても、その人と自分が持っている楽器は違うのです。楽器が違う以上、それをマネてはダメなのです。あなたの声がフルートならば、いくら憧れても、トランペットやヴァイオリンには成れないのです。フルートは、フルートとして育てないといけないのです。
理屈はその通りなんだけれど、現実問題として、憧れはあるし、危険だと言われても、マネしたくなるよね。器楽なら、憧れのプレイヤーとお揃いの楽器を購入すればいいだけなんだけれど、声って、そういうわけにはいかないんだよ。
だから、大切なのは、自分を受け入れる事であり、自分を伸ばす事なんてす。
私も、男らしくて強い声に憧れるけれど、実際の私の声は、全然、そんなモンじゃないわけで、無理して作り声で、それっぽい声で歌っている限り、上達は見込めないんだよね。だって、無理を無理やり通しているんだもの、うまく行くわけないよね。
こんなエラそうな事書いている私だって、以前は、キング先生に「プロの声をマネろ!」と指導されて(彼はそれを日常的に言ってました)、それを無理無理やって、ノドを壊しかけた事、ありますもの。ダメよ、絶対。でも、その時の癖はなかなか取れず、今でも必要以上に重い声で歌ってしまうのは、その時の癖から、まだきちんと抜けきっていないからです。だって、私がマネしたプロは…マリオ・デル・モナコだもん、そりゃあ、声も重くなるよね(涙)。
結局、歌うためには、自分自身と折り合いをつける事が大切なんだと思います。理想の声をマネるのではなく、自分を受け入れて、自分を鍛えて、自分の良いところを伸ばしていく…これに尽きるのだと思います。たとえ、それが自分の理想とは、遠くかけ離れていたとしても…です。
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