一部の合唱団では、声聞き等をはぶいて、その人の話し声から声種(つまりパート分け)を類推するようだけれど、私が思うに、それはたぶん無理です。
なぜなら、喋り声と歌声は根本から違うから、その人の喋り声を聞いても、その人の歌声を想像する事は難しいからです。基本的に、喋り声と歌声は別物なのです。
ただし、世の中には、少なからず、歌声で歌えない人もいます。そういう人は、平気で(あるいは、仕方なしに)喋り声で歌うわけです。私が聞くに、アマチュア合唱団の男声にその傾向があるように思われる。そういう人に関しては、喋り声で声種を類推するのも仕方ない話です。
しかし多くの女性は、普段から声の使い分けをしている人が大勢います。いわゆる、普段の声と余所行きの声です。例えば、電話に出た途端に声が変わるでしょ? あれですよ、あれあれ。あんな感じで、お喋りをしていた声と、歌の時の声を自然に切り替えられる人が大勢いるわけです。
だから女性は、自然に声を切り替えてしまうので、喋り声から歌声を類推する事は難しいです。
そこへ行くと、男性は女性と比べると単純な生き物なのでしょうか? 普段は、あまり声の使い分けをしません。一種類の声しか使っていない人が多いのです。その一種類の声は…当然、喋り声です。だから、この声で歌ってしまう人が多いわけで、だから「喋り声を聞いて声種を決めてしまう」という事が可能なのですが、女性が喋り声と歌声が違うように、男性だって、本当は喋り声と歌声は違います。
男性の場合、まずその人の歌声を見つけるところから始めないといけない事すらあります。で、歌声を見つけても、その声は全く未使用の声ですから、ある程度歌いこんで、本来のパフォーマンスが出せるようにして、それで初めて、その人の声種が決まるんだと思います。
だから、喋り声から声種が分かるなんて事はなく、それどころか、ある程度歌いこんでからでないと、声種なんて分かるわけがない…と私は考えているわけです。
ちなみに男性の場合、喋り声で声種を決めた場合、ほとんどがバリトンになってしまうと思います。でも日本男性の多くは、体格が(世界標準で考えると)小さくて、バリトンなんて、そんなにたくさんいるはずが無いのです。体格から考えれば、日本人男性の大半はテノールになっても良いはずですが、そうではないのは、きちんと歌声で声種を決めていないからなのだろうと、私は考えています。
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