開場時間となりました。お客さんがホールに入ってきました。妻は…本来はお客なんですが、今回は関係者(私の付き人)として、早くから会場入りしていますし、息子は、何やら何処ぞの模擬試験だし、私の方の親兄弟は母の入院先に見舞いに行ってますから、私の方は、とりたてて見知った人はいない状態でした。Nさんの方は、お母様が見に来られました。私は当然、相方としてご挨拶をさせていただいたわけですが、その時に「今回パスしていたら、この人をガッカリさせたんだな」って思ったら、なんか一つ善行をしたような気分になりました(笑)。
やがて、開演時間となりました。私は楽屋に戻って、急いでタキシードに着替えました。はい、私、出番が早い順番なんですね。キング門下にいた頃は、トリを取ったり、トリでなくても、割と遅い出番の私でしたが、ここの門下ではペーペーですし、下手くそなので、出番が結構早いんです。まあ、男性陣の中では、私が切り込み隊長さんなんですね。
自分の二つ前の演者さんが歌っている時に、舞台袖の入り口前ドアに集合し、一つ前の人の歌になったら、ドアを開けて、中に入って、舞台袖で前の人の歌を聞きながら待つ…という段取りとなってました。なので、相方のNさんの歌は…舞台袖のドアのところで、モニタースピーカーを通して聞きました。ああ、生で聞きたかったなあ。
私の前の方は、シュトラウスの「春の声」を歌ってらっしゃいましたが…この曲って、長くないですか? いつまで経っても曲が終わらなくって、なんか楽しかったです。
私は舞台袖には、飲み物と音叉を持ち込みました。まあ、お守りみたいな感じです。別にノドがカラカラになるわけじゃないので飲み物は不要ですし、今更音叉を鳴らして「何するの?」って感じですね。
でも、やはり、お守りは必要ですよ。
実は私、歌詞はきちんと覚えられたと思ってました。イタリア語であるベッリーニはほぼ完璧。ドイツ語のレハールは一部不安が残ってますが、まあ、たぶん大丈夫な程度には覚えました。それに間違えたとしても、どうせ誰も「Dein ist mein ganzes Herz/君は我が心のすべて」の歌詞なんて、知らないでしょ。だから、間違い上等っすよ。
そう割り切って、舞台袖に行った私でしたが、ふと、ベッリーニの歌詞をど忘れしてしまった事に気づきました。「えええ~?」って感じですよ。なんとか頑張って、出だしの1行目は思い出しました(まあ曲名だしね)。問題は2行目を忘れてしまった事です。ほんと、きれいに忘れました。何も頭から出てきません。
お守りとして、楽譜を舞台袖に持ち込まなかった事を激しく後悔しました。楽譜を舞台袖に持ち込んでいれば、不安な箇所をチラっと確認するだけで済む話なのに、歌詞を忘れた事を自覚した私は、その確認作業ができないことも相まって「ヤバイよ、ヤバイよ、ヤバイよ」と勝手に追い込まれていきました。
そのままパニック状態に…なったらカワイイもんですね。歌詞は相変わらず思い出せませんが、どうせ誰も「Ma rendi pur contento/喜ばせてあげて」の歌詞なんて知らないだろうと思ったので、言葉につまったら「スパゲッティ~、ボンゴレ~、ペスカト~レっ!」と歌っても大丈夫じゃないの?って勝手に思ってしまいました。
肝が据われば、こっちのもんです。「失敗したところで、誰も損をするわけじゃないし~」とか開き直っちゃいました。
やがて、長い長い「春の声」が終わり、いよいよ私の出番です。ピアニストさん(って簡単に言っちゃいますが、実は音大のセンセでエラい人なんですね:笑)と舞台袖でガッツポーズを取り合って(前の方はご自身専属のピアニストさんで歌ってました)、いよいよ舞台に出ちゃいました。
ご挨拶をして、会場を見渡したところ…少なっ! いやあ、あんまり人が少なくて、ビックリしちゃいました。350名入る会場が、実にスッカスッカで、なんかファイトが沸きますね。
とりあえず、一曲目の「Ma rendi pur contento/喜ばせてあげて」を歌いました。
結論。やっぱ、ダメなもんはダメだね。無い袖は振れない…と言うか、声が無ければ歌えません。
リハーサルで成功しちゃうと本番が残念な事になる…なんていう、都市伝説そのままにやっちまいました。
反省点は色々とあります。
まず最初は「調子が悪い時は、歌わない事」 やっぱり、これが一番大切。次は、声の温存を最優先にする事。練習なんてしなくても平気、って思えないとね。
家に帰ってから、この時のビデオを見ましたが、私、無意識なんでしょうが、結構、歌っている最中に目を閉じますね。目を閉じている時は、自分の姿なんて見えませんから、今まで、この癖に気づきませんでした。でも、目を閉じれば、自然とカラダのアチコチが閉じます。ああ、こんなところで思わぬヘマをしていたわけです。
それと、高音を発声しようとすると、無意識に背伸びをしてしまうようです。本当は逆で、高い音ほど、カラダを下に引っ張らないといけないのに…。ダメだな。
とにかく、今回は“撃沈”と言うよりも“ボロボロ”って感じでした。自分が全力を出して、それでも失敗したとか、明らかなの力量不足のために、下手くそな歌になってしまったなら、それはそれで仕方ないし、それならそれで、いい思い出になるので、音源だって積極的に公開したいのですが、今回は不本意な、あまりにも不本意な結果だったので、音源のアップはしない事にしました。
やはり、本調子でない時の下手くそさ加減は、ほんと底無し沼だし、仮に勇気を出して音源をアップして「調子が悪かったので、お手柔らかに」とブログで頼んでみても、鬼の首を取ったかのように勝ち誇って、ここのブログを荒らす人が必ずいるんですよね。匿名だと思うと気が大きくなるタイプの人ってね。
まあ、以前の私なら、多少ブログを荒らされても、ブログに活気のある方が良いので、そういう人でも相手をしてきましたが、今は、仕事もプライベートも忙しくって、日々の自分の事だけで手一杯で、とても招かざる客の相手をしている余裕がありません。ですから、そんな事もあって、エネルギーの無駄遣いをしないために、今回は音源をアップしない事にしたのです。
まあ、たとえ失敗したとしても、全力で挑んだならば、音源のアップも考えなくもなかったのですが、まあ、今回は勘弁って事で…。
あ、そうそう。心配していた歌詞ですが、歌い始めたら、流れるようにクチから出てきました。頭では歌詞なんて覚えていなかった私ですが、カラダはしっかり覚えていたようです。
つまり「練習は嘘をつかない」って事ですね。
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コメント
すとんさん、発表会の前の晩は?、よく眠れました?
出来はいまイチでもいまニでも、いま三でも、がんばった自分にごほうびをあげるための発表会ではないでしょうか。
歌だって笛だって同じですよ。緊張感で固まる上に、すとんさんは体調がいまイチどころかいま三だったんですもん。
来年を、またくる明日を信じましょう。・・と、私は発表会のたびに自分に言い聞かせています。
以前、反省点の多すぎる発表会が済んで落ち込んでいたとき、ある方からこの動画を紹介されてスカーッとしましたので、はい、プレゼント。マイケルで笑ってください。
https://www.youtube.com/watch?v=gclydmWbYvw&feature=player_embedded
だりあさん
この画像を使ったマイケルの“困った”奴って、結構ありますよね。でも、ピアノの発表会なのに寝られなくて困ったは、始めてです。サンクス。
>発表会の前の晩は?、よく眠れました?
寝た寝た(笑)。具合が悪いと、いくらでも寝れるんですよね。
>来年を、またくる明日を信じましょう。・・と
来年ではなく、今年の秋を次の目標に設定しました。今度は何を歌いましょうかと、ボチボチと悩み始めたところです。
ま、人生色々です。失敗したら、まずは反省して、反省が終わったら、忘れて、次を目指す…そんな感じでいこうと思ってます。