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どうやら「東海道中膝栗毛」ってヤバい書物らしい

 「サロメ」を見た後、時間が余りました。なにしろ、まだお昼前だったんです。なので、お昼をバーガーキングで食べるにしても、まだ少し時間が早いなあと思って、時間つぶしに“藤澤浮世絵館”に入りました。ここは無料で楽しめる、浮世絵の博物館なのです。

 現在の展示テーマは「東海道中膝栗毛 江戸のコメディアン弥次さん喜多さん」って事で「東海道中膝栗毛」の原本の挿絵と、関連本の挿絵と、関連浮世絵の展示でした。

 なかなか、面白かったです。で、きちんと「東海道中膝栗毛」を読んでみたいと思いました。だって、子どもの頃に、児童向けの再話本を読んだきりですからね。そう言えば、大学で江戸文学の勉強をして、それなりの数の青本や黄表紙を読んだけれど、その中に「東海道中膝栗毛」はなかったなあ…。あれほど有名な作品なのに、なぜ読まなかったんだろ? あと「東海道中膝栗毛」って、我が家の本棚にも無いしなあ…。

 そんなわけで、じゃあちゃんとした現代語訳本でも購入して、改めて読んでみよう…なんて思い立ったわけです。

 そこで、ザザっと、大人向けの全訳本を探してみましたら…あれだけ有名な作品なのに、全訳本がほとんど無い事を知りました。あるのは抄訳本ばかりです。

 無論、原本…というか、古文のままのモノは(おそらく学生&研究者向けに)あるにはありますが、そういうモノは読みづらいので、パスです。楽しみのために江戸語の本を読み趣味はありません。

 いくつか見つけた全訳本は、どれもこれも訳が古くて、とても現代語訳とは言えないものばかりです。

 どうやら、昔はともかく、今の出版業界的には「東海道中膝栗毛」って、人気が無いみたいです。江戸後期~明治にかけては、爆発的な人気を誇った作品なのに、時代が変わると、全然ダメみたいです。

 というのも「東海道中膝栗毛」ってコメディー小説なんだけれど、そこでのコメディーって、やはり時代に即したギャグばかりなので、現代人には受けが悪そうなので、そこが敬遠されているんだろうなあ…とは思いました。

 だって、どうやら鉄板のギャグが「若い女に夜這いをかけたら、年増女でガッカリ」とか「夕食時に貝に指を挟まれて大騒ぎ」とかなんだもの。これが物語の中で、何度も何度も繰り返されているギャグ(つまり天丼)らしいです。それくらい、当時はこの手のギャグが受けたんだろうね。

 あと、主役の弥次喜多は、どうやらバイセクシャルなんだよね。彼ら自身は、ホモカップルだし、それなのに行きずりの女とやりまくるわけで、はっきり言っちゃえば「性的にだらしない」のですよ。おまけに金銭にもだらしいんです。何しろ、東海道の旅のきっかけが「借金が返せずに、女房を置き去りにして、ホモのダチと夜逃げ!」なんです。現代の真面目な人たちからは「ドン引き~」されてしまうようなキャラなわけです。

 そんなわけで、そういう、今の観点で見ると“つまらないギャグ”とか“ドン引きするようなだらし無さ”をカットせざるをえないので、現在流布している「東海道中膝栗毛」のライトユーザー向けの本は、抄訳本にならざるをえないわけです。

 でもね、だからと言って、お笑いの本から、毒を抜いたらダメだよね。その毒こそが、可笑しみってヤツなんだから。

 とは言え、その毒が現代には、どうやっても受け入れられないタイプの毒だから、読みやすい現代語訳が出版されないわけです。なにしろ、河出書房新社から出ている、最新の日本文学全集にも「東海道中膝栗毛」は入っていませんからね。実に残念です。

 それにしても、こんなキャラである弥次喜多なのに、江戸後期~明治にかけては、スーパースターだったなんて、今の時代的には信じられません。

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