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声はすぐに無くなってしまう…発表会 その2

 シュウマイ弁当を片手に、ちょっぴり型崩れしたスーツケースを引きずった私が会場入りしたのは、ほぼ予定の時刻どおりでございました。楽屋に一番乗りですよ、立派なもんです。ちなみに、楽屋は男女別でして、先生方もピアニストさんもゲスト歌手の皆さんたちも、我々と一緒に楽屋を使います。そういうところは、分け隔てがなくて、仲がよくて良いのだけれど(ゲスト歌手の方は、プロ歌手ですが、Y先生のお弟子さんなので、身内扱いでもいいんですけれど…)ピアニストさんは外部の方なので、落ち着かなかったんじゃないかしら?

 さて、楽屋に自分のスペースを確保して、楽屋周辺の位置関係やらホールロビーやらを観察して、ホールの中に入ると、すでにNさんが一人で歌っておりました。そうそう「早めに会場入りをして、動きの確認をしましょう」って連絡したんだっけ?

 朝のリハーサル前の30分ほどの時間は(誰でも)自由にステージを使っていいという事になっていたので、演技をするために、実際の現場であれこれ確認しないといけない事も多いので、Nさんを誘っておいたんだっけ?

 なにしろ、事前の打ち合わせなんて、無いに等しい状態ですからね(笑)。

 実際に、ステージに立って見た感じ、今回のステージは思った以上に狭いことが分かりました。奥行きはそれなりにあるけれど、舞台のほぼ中央にピアノ(ミニグランドです)があるので、奥の方は使えないものとして考えてみると、案外、動けるスペースが少ない事に気づいたので、若干の動きを訂正する事にしました。

 まだリハーサル前で、ピアニストさんは舞台にいないので、お互いにアカペラで歌いながら、立ち位置の確認をしました。ひとまず通してみたところで、返しをしようと思ったら、舞台袖から我々をジーと見ているお姉様方の存在に気づきました。

 「舞台を使われますか?」「待っているんです!」

 我々に遠慮する必要なんて全く無いのに…別に舞台は私たちの占有物ではないし、同時に二組三組が使っても全く問題ないと思うのですが、どうもお姉様がたは、舞台を占有したいようだし、こちらは一通りやったので、譲ることにしました(Nさんは、なんか納得していなかったようです)。まあ、当日にアレコレやって、慌てても仕方ないので、こちらは“まな板の鯉”ですね(笑)。

 ちなみに、そのお姉様がた、棒立ちデュエットでした。だったら、私たちを退かしてまでやることではないじゃんって思ったけれど、問題はそこじゃないんですよね。本番前の不安を何とかして取り除きたい、そのために舞台を使って事前練習がしたい…そういう事なんですね。

 今日は誰もが不安で、誰もがナーバスになってますから。

 そうこうしているうちに、舞台のフリータイムが終了し、リハーサルが始まりました。リハーサルは一人12分ずつです。本番が一人10分ですから、本番通りに通して、先生のアドヴァイスをもらえば、それでお終いって程度の時間です。

 私の前は、F先生の門下のお姉様方のリハーサルでした。それぞれの先生は、ご自分の生徒さんのリハーサルの時にフラっと現れてきます。ちなみに、F先生の門下生は全員女性です。Y門下は男性がほとんど、それもバリトンばかりで、テノールは私だけ、女性の生徒さんはNさんだけです。やはり、生徒さんからすれば、先生は同じ声種の人の方が良いのかもしれません。

 私のリハーサルの番になりました。ピアニストさんに軽く挨拶をして、ひとまずベッリーニから歌ってみました。この時は、ちゃんと歌えました。それもおそらく、最近にしては最高の歌唱ができたんじゃないでしょうか? 先生からは「もっと、声を遠くに飛ばして」とアドヴァイスをいただきました。

 レハールの方は…やっぱり高音はカラダが開かないですね。しかし、高音以外の箇所は、まあまあ人に聞かせられるレベルの歌が歌えたかな?って思いました。あとはカラダが開きさえすれば、どうにかなると思いました。

 で、リハーサルなんかで声をたくさん歌って減らしたくなかったので、Nさんを呼んで、早めに二重唱のリハーサルをしました。歌いながら、相手との距離を試してみたりとか、色々やってみました。先生からは「目で演技をしなさい」と言われました。歌っている人が演技をするのは、当然だけれど、歌っていない方が「今は私、関係ありませんから~」という態度を取ってはいけないんだそうです。歌っていない方は、歌のジャマにならないように、しっかりと演技をしないといけないんだそうです。

 「歌っている方は、歌うのに一生懸命なんだから、むしろ演技はしなくてもいいよ。歌っていない方が、一生懸命に演技をしないと」って言われたので、とりあえず、ネモリーノは「アディーナ、好き好き(はぁと)」という目線で演技をする事にして、リハーサルを終えました。

 リハーサルでは、なるべく声を消耗しないように気をつけていたようですが、二重唱は相手もいますので、思わず、ついつい歌ってしまって、声をだいぶ減らしてしまいました。

 で、二重唱のリハーサルの後、その続きでNさんがソロ曲のリハーサルをしたので、そこまで見物してから、お昼御飯を食べる事にしました。早めにお昼を食べて、お腹をこなしておかないと、歌に差し支えますからね。

 お弁当は、本来は楽屋で食べるべきですが、妻と二人で食べたかったので、ホールロビーで食べました。そこにNさんがやってきて「本番前に、もう一度、動きの確認をしたいんですけれど…」と申し込まれました。不安なんでしょうね…。『今更、何をしても変わらないよ』と心で思ってみたものの、そんな冷たい事を言っては可哀相なので「いいけど、御飯を食べてからにしませんか」と返事をしました。だって、そうでしょ?

 まあ、本音で言えば、リハーサル後は、自分の出番まで“無言の行”をしたかった私です。少なくともリハーサルで無駄遣いしてしまった声を回復させないといけません。でも、なかなかそういうわけにはいきません。Nさんの食事が終わったところで、ロビーの片隅で、アカペラで歌いながら、最後の動きの確認をしました。「ああ、声、もったいないなあ…」って思いながら、練習につきあいました。動きの確認を終えたところで、自分でも分かるくらいに声がスッカラカンになってしまいました。

 そんなこんなのうち、やがて会場時間が迫ってきました。

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