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歌舞伎の不思議について

 アシェットの「歌舞伎特選DVDコレクション」を通販で定期購入している私です。当初は全100巻のセットでしたが、それが150巻に延長され、また延長されて、今では全200巻になりました。結局、全何巻になるんだろ?

 そんなわけで、定期的に送られてくるので、それを片っ端から見まくっている私です。そんなわけで、最近は正直、オペラよりも見ているかもしれません(笑)。

 そんな感じで歌舞伎のDVDをたくさん見ている私ですが、ここまで見てきて、色々と思ってしまった「歌舞伎の不思議」について書いてみたいと思います。

1)言葉が難しい
2)セリフのない劇(舞踊劇)ほど解説が必要
3)何でもかんでも江戸時代
4)何でもかんでも鎌倉時代&室町時代
5)花道がある
6)歌舞伎は芝居を観るものではなく、どうやら役者を観るもの…らしい
7)ひとまず衣装は豪華、大道具はチンケ
8)リアルさは求められない、基本的に紙芝居を3Dで演じている

 まずは1)の「言葉が難しい」だけれど、歌舞伎で使われている言葉の大半は江戸語です。もちろん、最近作られた演目は現代語やそれに近い言葉が使われていますが、おそらくは作劇された当時の台本をそのまま使っているのでしょう。それは伝統芸術としては正しい姿でしょうが、エンタメとして考えた場合、現代人には難しいです。ちっとも楽しめません。

 そのために、DVDでは、一部のディスクには“音声解説”が副音声で付いていますが、それはほんの数枚だけで、ほとんどのディスクには解説はありません。なので、何をやっているのか、どんなストーリーなのか、よく分からないものがたくさんあります。まあ、演技を見て、内容を推測しているわけなのですが、ぞれでもよく分からないものが大半です。これで新規ファン獲得は難しいよね。若者に限らず、新規顧客の獲得は…正直無理だよね。

 ほんと、令和の現代に生きる現代人には江戸語は難しいです。子どもの頃に、時代劇を浴びるように見せられた我々世代ですら難しいのですから、もはや時代劇のテレビ放送がなくなった今の時代、大半の日本人にとって、江戸語はほんと難しいです。せめて、演者のセリフや謡の歌詞などの字幕が付いていたら(江戸語でもよし、可能なら現代語訳なら、もっとよし)だいぶ理解もすすみ、より歌舞伎を楽しめるようになれたのになあ…と思ってます。

 字幕、欲しいです。

 2)の「セリフのない劇(舞踊劇)ほど解説が必要」ですが、江戸語は難しいですが、歌舞伎の演目の中には、ほとんどセリフのない舞踊劇がいくつかありますが「そもそもセリフがないのだから、内容は分かるだろう」と思われそうですが、これがちっとも分からないのです。そもそも前提となる社会常識や風俗が分からないのですから、言葉による説明(つまりセリフ)がない分、ほんと、分かりません。舞踊劇は、通常の芝居以上に解説が必要ですよ、ほんと、ワケワカメなんです。

 3)「何でもかんでも江戸時代」ですが、これは衣装や風俗の話です。ストーリーが平安時代であろうが、室町時代であろうが、人々の衣装や所作は江戸時代なんです。なので、パっと見では、何時代のお話なのか分かりません。登場人物が、源頼朝であっても、北条のなんたらであっても、足利将軍であっても、基本的に江戸時代の衣装を着ております。「そんなわけあるかい!」と思いますが、そうなんだから???です。

 逆に4)「何でもかんでも鎌倉時代&室町時代」とも言えます。例えば「忠臣蔵」で言えば、時代は元禄で、江戸城松の廊下で吉良上野介に浅野内匠頭が切りかかって…から始まるストーリーですが、歌舞伎の世界では、時代は室町時代に変更され、登場人物の名前も全部変更されて、おまけになにやらラブストーリーも絡んできて、もうなんか訳分からない状態になってます。とにかく、武士が絡むお話は、たいてい時代が鎌倉時代または室町時代に変更されて、登場人物の名前も変更されているので???ってなりがちです。

 ただし、武士が出てこない話や、明治以降に作られた作品は、普通に江戸時代のままだったりもします。ううむ、不思議不思議。

 5)「花道がある」は、不思議というよりも歌舞伎の醍醐味でしょうね。主要人物の登場や退場の際に花道が使われますが、ここが一つの見せ場で、むしろ「なぜ普通の演劇には花道がないのかな?」と思ってしまうくらいに効果的です。これは好意的な不思議です。

 6)「歌舞伎は芝居を観るものではなく、どうやら役者を観るもの…らしい」のです。「え? そうなの??」と思いますが、どうもそうみたいです。役者をかっこよく見せることに力が注がれ、ストーリーを観客に伝えようとか、ストーリーを楽しんでもらうおうとか、そういう事は軽く無視されています。そもそも、歌舞伎座とかじゃあ、お芝居の途中から始まって、途中で終わる…なんて、こともザラです。とにかく、一本のお芝居として観ることは、最初から放棄されているのが、歌舞伎の上演のようです。

 たまに、最初っから最後まで通しで上演される時は、わざわざ“通し狂言”と言って、特別扱いするくらいですから。それくらい、ストーリーを軽視しているのが、歌舞伎です。

 まあ、これは演じる側だけでなく、観る客も悪いんだけれどね。実際、映画やテレビドラマでも、どんな話なのか…ではなく、誰が主役かで、興行成績や視聴率が変わるんだから、日本人は昔から、ストーリーではなく、役者を観るために、芝居を見ている…ってわけですね。

 7)「ひとまず衣装は豪華、大道具はチンケ」 実際、歌舞伎の衣装は、本当に豪華絢爛です。主役クラスの役者たちが着ている衣装は、ほんとに立派です。対して、いわゆる大道具は、ほぼ書き割りですから、チンケもチンケ。背景がチンケな分、手前にいる役者のゴージャスなのが目立つ…って寸法なのでしょう。でも、ほんと、背景はチンケですよ。

 8)「リアルさは求められない、基本的に紙芝居を3Dで演じている」 これは7)とも通じますが、リアルさは欠片も求めていないので、背景がチンケでもいいのでしょう。

 そもそも、女性の役を女形が演じているところから、リアルもクソも無いわけです。

 役者の演技も、所作動作も、決まり切った型があるみたいで、通り一遍です。良く言えば「演技に様式美がある」わけで、悪く言えば「どれも同じ演技、マンネリ万歳」なわけです。まるで、紙芝居を人が演じているような時すらあります。3D紙芝居?と思う時すらあります。

 歌舞伎役者さんってお芝居が上手…というイメージがありますが、歌舞伎の舞台では、その演技上手さは、ほぼほぼ発揮されないようです。時には「これはページェント?」と思うほど、動きのない演目もありますねえ。ま、様式美なんでしょうが、実に不思議です。

 とまあ、半分クレームみたいな事を書き連ねましたが、元々が伝統芸能であり、古典芸能であり、カビ臭い演芸なのですから、不思議な部分もたくさんあって当たり前です。それどころか、面白い演目もたくさんあります。

 たぶん私は、いわゆる新作歌舞伎が好きなんだろうなあって思います。新作歌舞伎とは、基本的には明治以降に書かれた演目を言うそうです。これらの歌舞伎は、セリフは聞いていて、よく分かるし、演技にも説得力があります。まあ、様式美に欠ける部分はあるのかもしれないけれど、楽しめないものよりも楽しめる作品の方が好きです。

 スーパー歌舞伎とか好きだったんだけれど、猿之助があんな事になってしまった以上、もう新作は作られないんだろうなあ…残念だなあ…。

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