だって、両者とも同じ“クラシック声楽”という音楽ジャンルに属する音楽だし、実際、ドイツリートもオペラアリアも、同じ歌手が歌っていたりするわけです。違うはずはありません。
音楽ジャンルが違えば、発声法は当然変わりますし、同じ歌手が両者を歌いこなすのは、よほど器用でない限り難しいです。例えば、オペラと演歌の両方を巧みに歌いこなす…というのは、無理ですね。昔、美空ひばりがオペラアリア(トスカの「歌に生き恋に生き」を歌っているの聞きましたが、音程が合っていれば歌えている…ってわけじゃないんだなあと思いました。
でも実際問題「ドイツリートとオペラアリアは発声法が違う」という人も見かけるし、ドイツリートしか歌わない歌手とか、イタリア歌曲は歌ってもドイツリートは歌わない歌手とかもいますので、そういう人たちを見ると、やはりドイツリートとオペラアリアは発声法が違うのかな? と思ってしまいがちです。
結論を言ってしまうと、発声法は同じです。両者ともに、いわゆるベルカント唱法で歌えばいいのです。ただ、歌としての表現方法は変えていかないといけません。ドイツ人とイタリア人は気質が違います。かなり違います。だから、歌に載せてくる感情が、たとえ同じ感情であっても、気質が違いますから、その表現方法が違ってくるわけです。
ドイツリートは、ドイツ人の気質に従って、ドイツ人の気持ちに沿って細やかに心情を表現して歌わないといけませんし、オペラアリアは(イタリアオペラなら)イタリア人の気質に従って、能天気に音楽に身を任せて歌い飛ばさないといけないのです。
だから違うのは、発声方法ではなく、感情の表現方法なわけです。で、表現方法が異なるため、発声法が違って聞こえてくるだけの話で、同じ“クラシック声楽”なので、実は発声法は両者ともに共通しているのでした。
昔々の日本のクラシック声楽に関する参考書で、ドイツリートはドイツ式発声法で、オペラアリアはベルカント唱法で歌いましょう…って書いてあるモノがありますが、あれはまだまだ日本の声楽界が未熟で勉強不足の研究不足だったために誤解していたんだと思います。
ちなみにドイツ式発声法なんて無いよ(笑)。あれは、昔々ドイツに留学してきた人たちが、帰国後に広めた発声法なだけで、ヨーロッパなんて狭い世界なんだから、実はドイツ人もイタリア人もフランス人もスペイン人もイギリス人も、クラシック系の歌手たちは交流をしていて、一番効率的な発声法を互いに学び合い教え合っているわけで、それを今日“ベルカント唱法”と呼称しているわけなので、ドイツ式発声法なんて、日本にしか存在しないんだよね。
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