今回のお薦めオペラは、ヴェルディ作曲の「オテロ」です。ヴェルディ作曲のオペラとして推薦するのは「椿姫」以来の2作品目ですが、気にしないでください。「他の作曲家が1作ずつなのに、なんでヴェルディだけ2作なの?」って、そりぁあ、それだけヴェルディがオペラ作曲家として大物だからって事です。
ま、それ以前、私がヴェルディ大好きって事もありますが(笑)。
「椿姫」が女性向けでソプラノが主役のオペラだとしたら、「オテロ」は男性向けでテノールが主役のオペラです。
原作はシェークスピアの「オセロ」です。いわゆる、シェークスピアの4大悲劇の一つです。その“オセロ”をイタリア語読みにして“オテロ”なんですね。ストーリーはこんな感じです。
オテロはベネツィア軍の将軍で、今日も大きな戦果を上げて、港に帰還した。喜んで迎える街の人々。街中が戦勝ムード一色。
軍の旗手であるイヤーゴは、自分よりも先に出世した副官のカッシオが気に入らない。そこで一計を案じて、カッシオを酒に酔わせて悪乗りをさせて騒動を起こさせて、将軍であるオテロに彼を罷免させる。
職を失い失意のカッシオに、イヤーゴは親切そうなフリをして、オテロの妻であるデズデーモナに仲介を頼めと言う。カッシオがデズデーモナに取り成しを頼んでいるところを、遠くから物陰に隠れながら眺めるオテロとイヤーゴ。実はイヤーゴが気に入らないのはカッシオだけでなく、オテロも嫌っていて、彼の失脚も狙っていたのだ。
オテロは人格者であり立派な将軍であったが、彼には大きなコンプレックスがあった。それは彼が黒人であり、ベネツィア軍の中では将だけでなく、兵卒まで含めても、黒人は彼だけであったという事だ。彼以外は皆白人。その中で、功を上げ、人々の信頼を勝ち取って、ここまで出世してきたオテロだが、やはり肌の色によるコンプレックスは彼を捉えて離さなかったのである。
彼の妻デズデーモナは、聡明で美しい白人の女性であった。オテロにとって、妻は最愛の人であり、自慢の妻であったが、心の何処かで黒人である自分をなぜ愛してくれるのか自信がなかったのであろう。オテロのそんな心の弱さに、イヤーゴはつけ込んだのである。
デズデーモナの側で彼女に忠実に仕えているエミーリアは、イヤーゴの妻である。イヤーゴはエミーリアを脅して、デズデーモナがオテロからもらったハンカチを奪い、そのハンカチをカッシオの部屋に落としておいた。
カッシオが自分の取り成しをしてもらいたく、デスデーモナに面会を求め、親しげに話している様子を、遠くからオテロに見せるイヤーゴ。実は二人は不倫を働いているのだとオテロに吹き込むイヤーゴ。大いに心が動くオテロ。不倫の証拠を見せろとイヤーゴに迫るオテロ。イヤーゴはオテロをそこに残したまま、カッシオの元に行き、親しげにカッシオに話しかける。イヤーゴはカッシオに彼の恋人の話をふり、カッシオは照れながらも自分の(現在つきあっている本当の)恋人の話をする。その話を途切れ途切れに聞くオテロ。どうもカッシオは自分が付き合っている女の自慢話をしている…ということは分かるのだが、その詳細までは分からない。
ジリジリしているオテロの心を、見透かすかのように、イヤーゴはカッシオに話をふると、カッシオは、先日、自分の部屋でこんなモノを見つけたと言って、オテロがデズデーモナに贈ったハンカチを見せる。イヤーゴはそれを手に取り、遠くにいるオテロにも見えるようにハンカチを高くかざす。それを見たオテロは、デズデーモナがカッシオと不倫をしていると、完全に誤解をしてしまう。
オテロとイヤーゴは相談をして、オテロがデズデーモナを、イヤーゴがカッシオを殺す事に決める。
オテロはさっそくデズデーモナを詰問した。彼女はありのままを述べたが、彼女を信じる事ができなかったオテロはデズデーモナを殺してしまう。そこに女中のエミーリアが現れ、自分の夫がカッシオとオテロの二人をハメた事、デズデーモナは不倫などしていない事、証拠となったハンカチは、夫のイヤーゴが自分から脅し取っていったものだと告白する。すべてイヤーゴの計略だと悟ったオテロ。イヤーゴは自分が失敗した事に気づき逃げ出す。オテロは自分のつまらない嫉妬心から最愛の妻を誤って我が手で殺してしまったを悔い、妻の傍らで自決をする。
と、まあストーリーはこんな感じです。では、お薦めするディスクなんですが…「オテロ」というオペラは、実に歌い手を選ぶオペラなんです。特に主役のオテロを歌う歌手は、昔から“オテロ歌手”と呼ばれるほどに、容姿と演技力と歌唱力と声に高い水準のものを求められました。…なにしろ、オペラ界の巨匠、ヴェルディの最晩年の作品ですからね。上演に際しては、名人クラスの歌手が必要なんです。
…となると、歌える歌手も限られてくるわけだし、ディスクだって、そんなにたくさん出ているわけじゃないし、最新の上演なら良いというわけでもなくなるのです。なので、上演そのものは、少し前のモノですが、このディスクなら安価だし、入手しやすいので、お薦めしたいと思います。
私達の世代の“オテロ歌い”と言えば、プラシド・ドミンゴしかいません。このディスクは彼が60歳の時の上演だそうです。すでに歌手としての全盛期は過ぎてますが、それでも歌では力不足を感じさせる事はありません。年齢がいっている分、演技力の方は鬼気迫るものがあります。…まあ、本当はドミンゴの全盛期に映画として撮影した「オテロ」があるので、入手が容易ならそれをお薦めしたいのですが…仕方ありません。
と言うわけで、画像の方は、1979年、つまり全盛期のドミンゴとミルンズによるメトで上演した「オテロ」です。音声が一部で残念な感じですが、ドミンゴ演じるオテロの凄さがよく分かる二重唱だと思います。「オテロ」というオペラは、終始こんな感じで、実に男臭いオペラなんですよ。
もはや、ドミンゴも年を取り、ほぼ引退状態です。次の世代の中から、優秀なオテロ歌手が現れるのを待ち望んでいる私ですが…どうでしょうね。一時はホセ・クーラに期待していたのですが、なんか違うんだよなあ。円熟してくれば、また変わるかな…って思ってますが、どうでしょうね。
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