少し前の話になりますが、メトのライブビューイングでベートーヴェン作曲の「フィデリオ」を見てきました。スタッフ&キャストは以下の通りです。
指揮:スザンナ・マルッキ
演出:ユルゲン・フリムフィデリオ/レオノーレ:リーゼ・ダーヴィドセン(ソプラノ)
フロレスタン:デイヴィッド・バット・フィリップ(テノール)
マルツェリーネ:イン・ファン(ソプラノ)
ロッコ:ルネ・パーペ(バス)
ドン・ピツァロ:トマシュ・コニエチュニ(バスバリトン)
ジャキーノ:マグヌス・ディートリヒ(テノール)
私が見に行った日は、とりわけ老人が多かったです。オペラ映画って、そうでなくても観客の平均年齢が高いのですが、この日はとりわけ高かったです。車椅子の方もいれば、杖をついてヨボヨボの人もいれば、階段をエッコラショと登っている人もいて、たぶんいつもよりも平均年齢が10歳以上は上だなあ…って思いました。
これは…ベートーヴェン効果? 何しろ今回の「フィデリオ」は“楽聖”唯一のオペラですからね。何を置いても見に行かなぎゃ!というご老人が多かった…のかもしれません。年寄りのクラシックファンにおけるベートーヴェン推しは、そりゃあ想像を絶するものがありますからね。
それはさておき、今回の上演の私の正直な感想は…分かっていた事だけれど、面白くはない上演でした。ですので、全く皆さんにはお薦めしません。
出演歌手は悪くないですよ。ダーヴィドセンにせよ、パーペにせよ、最近のメトにしては珍しく、一流どころを揃えています。若手も粒ぞろいです。
しかし、肝心のオペラそのものが…ねえ。
「フィデリオ」って、そもそも脚本がつまらないんですよ。で、そんなつまらない脚本に、ベートーヴェンが大した事ない音楽しか付けられなかったんです。それがオペラ「フィデリオ」なのです。
ベートーヴェンは、このオペラと同時期に「クロイツェル・ソナタ」とか「英雄交響曲」などを作曲していますが、残念な事に「フィデリオ」はそれらの曲の水準には達していません。まあ、ベートーヴェンほどの作曲家であっても、打率十割なんてありえないわけで、名曲も書けば凡曲も書くわけで、たまたま唯一のオペラである「フィデリオ」は凡曲だっただけの話です。この後もオペラを書き続ければ、いずれ名曲を生み出せたかもしれませんが、それが出来なかったのがベートーヴェンなのです。
そんな退屈なオペラですが、歌手と演出は頑張っていました。なので、見るべきはそこなのでしょうね。とは言え、いくら演出で頑張っても、そもそもの筋書きが凡庸なのですから、どうにもならないのは、もう、どうにもならないのです。
ボリコレに配慮したのでしょう、マルツェリーネ役に中国人のイン・ファンを起用していました。彼女は、歌唱能力的には全く問題ありませんが、生粋のドイツ人であるパーペの娘が、コテコテの中国人のイン・ファンって、演出的にどうなの? 無理があり過ぎます。だからボリコレって大嫌いさ!
それに、アメリカと中国の外交関係を考えると、イン・ファンも今後どれくらいメトで活躍できるのでしょうか? 案外、これが見納めになるかもしれません。ロシアとの関係が悪くなってネトレプコが出てこなくなったように…ね。
それにしても、白人女はタフだなあと思いました。実は主役のダーヴィドセンは双子を妊娠中で、そのため今回が産休前の最後の舞台で、この後、休みに入るそうです。実際、体型は見るからに妊婦体型でした。そんな体型&体調でも、これだけの舞台をこなしてしまうのだから、ほんと白人さんの体力って、すごいなあって思いました。ちなみに、出産したら、すぐにまた舞台復帰するんだそうです。ほんと、すごいなあ。
ぞれにしても「フィデリオ」って、どの公演を見ても、たいていつまらないです。面白い公演はあったら、知りたいくらいです。
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