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スラーとそれ以外の箇所の歌い方の違いについて

 声楽のレッスンに行ってきました。

 まずはバーンスタインの「サムホエア」から。カレンダーの都合で、最近は妻とのレッスンが続いていたので、Mさんとは久しぶりのデュエットです。この曲は、多少なりとも歌い慣れてきた事もあって、少しずつ自分なりに余裕を持って歌えるようになってきた…つもりだけれど、まだパートナーのMさんの歌を、ちゃんと聞けていないのかもしれないです。先生に「トゥッティの部分が下手くそだ」って言われちゃいました。

 二人とも、一人一人を見れば、それなりに歌えているのだけれど“1+1”が、必ずしも“2”にならないのが、デュエットの難しさ。うまくいければ“2”どころか“3”にも“4”にもなるけれど、うまくいかなきゃ“1”以下になってしまう事だってあるわけだ。

 まだ、歌の寄り添い方が足りないんだろうなあ。もっと心情的に、ズバッと寄り添って歌っていけると、色々とビタッと合わせてキレイな歌になっていくんだろうと思います。「サムホエア」は美しいラブ・バラードだからねえ、お耽美な雰囲気で歌いたいものです。

 私が個人的に注意されたのは…英語の発音かな? 子音を発音するたびにポジションが下がるので、イタリア語の歌を歌うときと同じように、英語でも子音を高い位置で発音するように言われました。

 あと、私が普段使っている英語は、基本的に、庶民的な(笑)アメリカ英語っぽい雰囲気を取り入れたジャパニーズ・イングリッシュです。なので、発音なんか、あまり美しくはなく、やたらと訛まくっています。例えば、語尾の子音って、飲み込む事が多いし、リエゾンだってしまくっちゃうし“r”も巻かない。それでも英米人とはコミニュケーションが取れているので、良しとしていますが、先生からは「そういう(汚い発音の英語)は無しで、もっとちゃんとした(上品な)英語で、それぞれの子音も母音も、はっきり発音しましょう」って言われました。ううむ、そのイメージってイギリス英語っぽい奴だよね。いわゆるステージ・イングリッシュって奴かな?

 私の場合、なまじソコソコ話せちゃうし、英語はロケンロールで覚えた人なので、今更「ちゃんとした(上品な)英語」って言われると、すっごく難しいです。ってか、そんな言葉じゃ歌えないかも(汗)。

 Mさんから「サムホエア」だけでなく「トゥナイト」も一緒に歌いたいと言われました。もちろん、二重唱の方ね。ううむ、あれって音が高いし、お芝居部分もたくさんあるんじゃないかな? さて、どうしましょうか?

 さて、二重唱の時間は終わって、私の個人レッスンになりました。(時間がなくなってしまったので)発声練習代わりにコンコーネをやりました。

 まず最初に、スラーとスラーじゃないところの歌いわけについて尋ねました。と言うのも、例えばフルートなら、スラーの部分は息を出しっぱなしのレガートで、スラーじゃない部分はしっかりタンギングを入れて吹き分けるでしょう。ヴァイオリンなら、スラーの部分は一弓で、そうでないところでは弓を返して演奏するわけで、スラーとスラーじゃない部分の奏法が明らかに違うわけです。それを歌の場合では、どうするかって事を(今更ですが)悩むようになったので、質問してみました。

 先生の解説を要約すると…。歌ではスラーがあろうがなかろうが、ブレス記号や休符があるまでは、ずっとレガートで息を流し続けて歌います。なので、別にスラーとスラーじゃない部分の歌い方で、テクニック的な違いはありません。と言うのも、スラーとスラーじゃない箇所に明確な違いをつけて歌っちゃうと、やりすぎな感じがして、いやらしく聞こえてしまうからです。声楽の場合、スラーはあくまで「ここの音列は絶対に切っちゃダメ」というシルシであるけれど、スラーではないところだって、切っちゃダメなのは同様なんです。ただ、あえて言うと、気持ちの上で「絶対切っちゃダメ」と「切っちゃダメ」程度の差がスラーとスラー以外の箇所にはあるそうです。つまり、テクニックというよりも、気持ちの上でのスラーとスラー以外の箇所の差をつけて歌いましょうという事です。

 結論で言えば、声楽では「スラーの有無に関わらず、全部レガートで歌う」が前提で、スラーがある場所は「特にレガートを意識して歌う」ようです。

 さて、コンコーネの8番は、五段目の三小節以降の、音が上がる部分がヘタって言われました。また、9番は、最後の「レド/シドレミファソ/ラ~」の高いラ(As)で押していると注意を受けました。どちらの曲であっても、上への跳躍が苦手な私です。高いところは、声を張らずに、しっかり声を後ろに引っ張って歌えるようになりたいものです。

 曲は、イタリア古典歌曲を歌いました。何を持ってきたのかと尋ねられたので、練習に時間があまり取れなかった事もあったので、全くの新曲ではなく、リベンジ組の曲の中から「あなたは知っている/Tu lo sai」を歌ってみました。「久しぶりに…ヘタだねえ」と言われました。「以前とあまり変わっていない」とも言われました。私的には、だいぶマシに歌えるようになったつもりでしたが、先生的には、相変わらずダメなところが出来ていないのだそうです。

 ま、この曲は苦手だし、苦手だから、未完成のまま保留で後回しにされたんですよね。この曲は「時間がないので、譜読みが完了している曲を歌っちゃえ~」というノリでチョイスしたわけですが、もう一度、最初の音取りからやり直してきます。

 以前にも言われたけれど、とにかくこの曲は、サラっと歌う事。楽に歌う事。これがポイント。私の場合は、ついつい歌いすぎてしまって、後半バテバテになるので、歌いすぎず、気合を入れすぎに、体力温存してサラっと歌う事。サラっと歌うためにも、まずはテンポを勝手に揺らさないこと。声を決して張りあげない事、声を押さない事。声を温存する事。…いずれも苦手だな。

 …すとんさんは声に関しては十分なんだから、それを如何にコントロールするかを勉強しないとね…なんだそうです。

 音程も全体的に甘くて、ポジションも低めになりがち。最後の「Tu lo sai, lo sai crudel」の部分は音程が低くても、高いポジションで歌うことと、二度目の「sai」は四分音符なので、その直前の「lo」の倍の長さで歌うことです。それと、楽譜に書き込まれているブレス記号が少なくて、歌うのが大変なんだけれど、歌詞の切れ目で適宜ブレスをとってもいいと言われました。これで多少は楽になります。

 今回のレッスンでは、ロッシーニの「約束」は歌いませんでした。暗譜が宿題だったのですが、実はまだ暗譜が完璧でないので、助かりました。

コメント

  1. グレッチェン より:

    声楽とフルートってスラーとそうでないところが随分違うのですね。声楽が特殊なのかしら?声楽は音色に加えて発音の問題がありますし、子音の扱いも難しいと思います。レガートを心がけていても子音で切れたりするのです。それに普段使い慣れた日本語の特性が発音にも出て、例えばcrudelなんて cとlのあとに母音のuを入れて「くるでえる」と発音してしまうんです。crのタイミングも下手をすればもたつくし。でもイタリア語の方が英語よりまだしも楽です。メサイアなんて はっきり日本語で りじょぃす!って歌ってますもの(笑)それでいて日本歌曲が苦手なんですね、これが。コンコーネ8番のppであがるところ 弱拍なのに高いって嫌です。それになんで三拍子が多いのかしら!私はどうも、もたれたような歌い方になってしまって、サラっと歌うことが出来ません。日本民謡が血の中に根付いちゃってるのかしら。それにしても英語がご堪能だなんて羨ましいです!

  2. すとん より:

    グレッチェンさん

     レガートっぽさに関しては、私の中では、まずクラシック音楽とポピュラー音楽に分かれ、クラシック音楽が声楽と器楽に分かれているような気がします。

     ジャズフルートやジャズヴァイオリンを習っていた時に、散々注意されたのがリズムです。とにかく“リズムを粒だてて”演奏する事が要求されます。すべての音符が、アクセントやらスタッカートやらが付いているような感覚です。なので、スラーの部分だけがレガートになります。

     それがクラシックフルートの世界に来た途端に、リズムが強すぎると注意され、かなりリズムを控え目に、それこそジャズの世界的に言えば“すべてをレガートで”演奏するような感覚になりました。

     ですから、音楽全体について、レガートを基本において演奏するのがクラシック音楽ならば、リズミックに演奏するのがポピュラー音楽なんだと思ってます。

     で、そのクラシック音楽の中では、器楽と声楽に分かれ、声楽は器楽よりも、よりレガートを意識して演奏するのではないかと思います。

     グレッチェンさんもお書きの通り、声楽には言葉が伴います。とりわけ“子音”って奴があります。子音があるからこそ、レガートを強調していかないと、音が横に流れていかないのでは…なんて、今は思ってます。

     日本語話者である我々にとって、外国語は難しいですね。どうしても、訛の問題からは逃れられません。日本語訛りの英語、日本語訛りのイタリア語、日本語訛りのドイツ語…。どうしても、クチが横に開いて、母音が浅くなりがちです(涙)。

    >それでいて日本歌曲が苦手なんですね、これが。

     日本語の発音と、クラシック発声の両立が難しいのだと思います。最近のクラシック系の歌手の皆さんは、このあたりの両立が上手ですが、私が子どもの頃は、プロの歌手ですから、なんか変でしたもの。アマチュア歌手にとって、日本語の歌って、親しみやすいけれど、きちんと歌うには、極めて難しいんだと思います。

    >それになんで三拍子が多いのかしら!私はどうも、もたれたような歌い方になってしまって、サラっと歌うことが出来ません。

     グレッチェンさんは乗馬をしないでしょ? クラシックのリズムって、乗馬のリズムなんですよ。馬は四本足だけれど、ゆっくり歩くと四拍子で歩き、小走りになると、二拍子で走り、普通に走ると三拍子になります。全速力で走ると…そんな事した事ないので、分かりません(汗)。

    >英語がご堪能だなんて羨ましいです!

     堪能じゃないです。ただ、それなりに使えないと、仕事に支障が出るだけの話なので、やむなく使っているだけです。だから「通じればいいや」の世界だし“気合と根性とジェスチャー”は常にマックスです(笑)。

  3. プリロゼ より:

    音程が低くてもポジション下げないでってよくキング先生が言われてると思うんだけれど(今までの記事で)、ポジションってなーに?(笑)
    ど素人って困るわねぇ。興味はあるんだけれど、理解できないの。
    目の前で歌ってくれたら、理解できるのかしら?
    英語も嫌いだしローマ字アレルギーがあるから、声楽ってハードルが高いのよねぇ。

  4. すとん より:

    プリロゼさん

     いやあ~、一番聞かれたくない事を聞かれちゃいましたよ(笑)。

     ポジションって、一体、なんなんでしょうか? いえ、自分では分かっているつもりなんだけれど、そこをうまく説明できないと言うか、なんと言うか…。

     私的にはポジションってのは“声の座”だと思ってます。あくまでも感覚の問題なんですが、カラダのどの部分に声(のよく響く場所)を持っていくかって事なんじゃないかなって気がします。

     たぶん、具体的には、口腔やノドのカタチが変わったりするんだと思いますが…分かりません。

     ポジションって、分かる人には説明抜きで分かり、分からない人にとっては本当にチンプンカンプンな用語だと思いますよ。

    >目の前で歌ってくれたら、理解できるのかしら?

     どうだろ? ただ、高いポジションで歌うと、声は輝き増し、低いポジションで歌うと、渋い声になります。

    >英語も嫌いだしローマ字アレルギーがあるから、声楽ってハードルが高いのよねぇ

     そういう人、多いですよ。ただ、外国語も(趣味の範囲なら)話せるほど上達する必要はないですし、必要のところから、少しずつ慣れていけばいいんですよ。いきなり、高みを目指すとビビっちゃいますから、まずはできるところから、手の届く範囲から始めるのがコツですね。

  5. グレッチェン より:

    ご明察の通り、乗馬は致しません、と言うか運動全般ですね。運動苦手なんです、運動オンチ。あ、だから私はリズム音痴なのね!そのクセ グラナドスとか好きなのです。そういえば騎馬民族と音楽の拍子の関係は聞いた事あります。ただ日本にも絹にまつわる伝承で馬は出てきますが 乗ってたかどうかは分かりません。ジャズはルーツはアフリカ音楽なのでしょう?リズムが命ですよね

  6. すとん より:

    グレッチェンさん

     リズムに関しては、乗馬という説もあれば、ダンスという説もありますね。どちらにせよ、西洋貴族の方々の日常にあって、我々日本庶民の日常にはないものですね。

     馬は、よほどの物好きでないと乗りませんよね。ダンスは…最近の若い子たちはそれなりにやっているみたいですが、私などのオッチャンだと、せいぜいが“盆踊り”ですからね。“盆踊り”では、音頭か民謡か演歌のいずれかで踊るわけで…どれも四拍子だよね。だから、四拍子ならなんとかなっても、日本人の多くが三拍子とか六拍子って苦手なのは、そういう事ですね。

     学校で習ったフォークダンスなんて“西洋盆踊り”としか言い様のないレベルのダンスだったしなあ…。

    >ジャズはルーツはアフリカ音楽なのでしょう?リズムが命ですよね

     はい、リズムに関しては、ジャズはクラシックの比ではなく、豊かで複雑です。結局私は、ジャズのリズムをカラダに入れる前に、ジャズの勉強を中断しちゃったわけです。もうちょっとジャズの勉強を続けたかったなあ…って時々思います。

  7. YOSHIE より:

    こんにちわ。

    余計なお世話なんですが“声楽のポジションって何?”と興味が沸いてしまいググってしまいました(声楽やっている方なら見ているかも…ですが)

    以下…

    ・9と12の項
    http://www2n.biglobe.ne.jp/~shin-os/vocal.htm

    ★Posizione の項
    http://www.h5.dion.ne.jp/~odake/canto%20yougo2.htm

    へぇww!イタリア人は日常会話も“高いポジション”なんだぁ!!!!と驚き、また納得もしました。

    何だかとても楽しい発見でした。

    疲れている時には日本語が耳に優しいですね。

    ある意味フランス語…って言うかシャンソン?…の発声はポジション低いのかしらん?

    余談、欧米人の発声は人によっては声帯に負担がかかりやすく、痛めた人が“ハスキーボイス”になる…と聞いたか読んだかしたことがあります。

    だから日本語onlyの日本人はハスキーボイスになりにくいとか…らしいです(これは詳しく調べてません)

    以上、ヨコヤリでした。こういう雑学が好きで…失礼しましたwm(_ _)m

  8. すとん より:

    YOSHIEさん

     私に代わって、ググってくださって感謝です。

     山中先生の方は以前見て、うんうん、キング先生の言っている事とほとんど一緒だなあ…と思った事があります。尾田先生の方は始めて。しかし、これだけ丁寧に書いてあるページを読んでも、ポジションを短く分かりやすく書き直せない私って何? って気分です。

     なんか、こう…、もう…、私の体内のイメージがうまく言語化できないモドカシサがあります。たぶん、まだ私自身がポジションについて、明確に理解していないからなのかもしれません。

     イタリア人は普段から高いポジション? …って事は、よく声楽関係者で「歌う声でしゃべる」という言い方がありますが、あれって「高いポジションのまましゃべる」って事なんでしょうね。ちょっと、目からウロコです。

  9. YOSHIE より:

    >ポジションを短くわかりやすく書き直せない

    >>実際、私のような門外漢がサクッとググってインスタント耳学(目学?)である程度のレベルまで体得するわけはなく、何となくイメージが浮かぶだけですので
    実地で実技レッスンを受けている方が、短く説明できないというのは、なるほどそうだwwと思います。

    バッチリ説明とお手本が出来たら先生になれますよね…。

    でも“高いポジションで歌うように話す”って“自己アピール”にうってつけで、日本語はそれ自体が“自己アピール系言語じゃないんだなぁ、って思ってしまいました。
    勝手に想像するには、すとんさんの話し声はポジション高そうだな…ではあるんですけれど。

    ユーミンって…歌が下手なんじゃなくて声のポジションが低いんじゃないかな?と、ふと思ったり…。

    学校ではポジション高めのよく通る声の先生の授業は聞きやすい…なんかそんな感じの私的な理解です。

    色々脱線しましたww。

  10. すとん より:

    YOSHIEさん

     実はキング先生に単刀直入に「ポジションって何ですか?」と質問してきました。そうしたら、やはり短く説明するのは難しいみたいでした。ひとまず「声の響く場所」って事ですが、それだけではだいぶ言葉が足らないみたいです。

     おそらく、歌う人はみな体感して分かっているのですが、それを歌っていない人に説明するのが難しいタイプの事柄なんだと思います。私が思う、そこに“カラオケ歌唱”と“クラシック声楽”の違いがあるのかもしれません。

    >勝手に想像するには、すとんさんの話し声はポジション高そうだな…ではあるんですけれど。

     確かに低いポジションでは話してませんね。でも、歌うポジションよりは低いところで話してますよ。だから、歌の時に苦労しているんです。自分の感覚では、話し声の時は真ん中あたりのポジションを基本とし、朗読をする時などは、そこから上下にポジションを動かしているような気がします。

     私の場合、ポジションが高いのではなく、そもそも甲高い声なんですよ。

    >ユーミンって…歌が下手なんじゃなくて声のポジションが低いんじゃないかな?と、ふと思ったり…。

     うん、そうかも。確かにそうかも。

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