さあ今年も、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(以下、ラ・フォル・ジュルネと略)の季節がやってきました。
今年でラ・フォル・ジュルネも11年目で、リニューアルなんだそうです。昨年までは、作曲家をテーマに取り上げ、その作品を中心にコンサートを行っていたわけだけれど、ネタ切れ…なのかな? 今年からは、作曲家ではなく、これまでとは全然違ったテーマを持って来ることにしたそうです。
で、今年のテーマは『パシオン』です。パシオン…英語で言えば“パッション”です。日本では「情熱」と訳されることの多い言葉ですが、あちらではむしろ「(キリストの)受難」という意味で使われる事も多いパシオンです。ですから、ラ・フォル・ジュルネでも『祈りのパシオン』『恋のパシオン』『いのちのパシオン』と3つのサブテーマで展開する事になったんだそうです。
つまり「なんでもアリ」ってわけだ(笑)。「なんかーなー」とは思うものの、ひとまずラ・フォル・ジュルネが継続される事に祝杯をあげちゃう私でした(パフパフパフ~)。なにしろ、ラ・フォル・ジュルネが始まった頃の大人気状態と、原発事故以降のみすぼらしくなってしまった現状の両極端を見てきた私にとっては、11年目も継続されて実施される事自体に奇跡を感じているくらいですから。
と言うわけで、11年目の今年も、さっそく東京に出動してきた私でございました。ちなみに、今年は、5月2日(土)と4日(月)の2回出動した私ですが、まずは初日の出来事から記事にしていきましょう。
で、初日の5月2日ですが、まず私が向かったのは、東京国際フォーラムのある有楽町ではなく…日本橋です。日本橋にあるパソナ本社での無料コンサートから、今年のラ・フォル・ジュルネを開始した私でございました。
恋色パシオン(ソプラノ:竹内恵美)
11時半開始のコンサートに若干遅刻して、最初の一曲目を聞きそびれたダメ男とは、私の事でございます(涙)。11時ちょい過ぎには会場に到着する予定だったのに…会場のすぐそば、ほんの100mかそこらまで来た所で妻がしでかしまして、それで遅刻しました。ううむ、残念。ちなみにプログラムは以下の通り。
アルディーティ:くちづけ
ロッシーニ:約束
ショパン:バラード第1番
中田喜直:サルビア
小林秀雄:日記帳
プッチーニ:わたしのお父さん~「ジャンニ・スキッキ」より
一曲目の『くちづけ』が終わる頃にバタバタと会場入りをしたので、その曲はほとんど聞けませんでした。いや、むしろ、席に座れた事自体が恵まれていたわけです。
この『くちづけ』という曲、私、好きなんですが、あまり縁がないんですね。前の門下では誰も歌っていませんでしたし、テノールが歌う曲ではないので、つい最近まで、その存在すらしなかった曲(笑)なんですが、この曲、昨年の発表会で、私の相方をつとめていただいたNさんのレパートリー曲なんです。で、どんな曲なのかな…と思って、色々と調べてみたら、ソプラノ界では大人気な曲で、歌って楽し、聞いて楽しの名曲である事が判明。でも、当然私は生で聞いたことはなく「そのうち、生演奏で聞いてやろう」と決心していだけに、そのチャンスがありながらモノに出来なかった悔しくて…ねえ。ああ、遅刻して残念無念。
二曲目の「約束」から、きちんと聞いたわけですが…色々と考えながら聞きました。この歌手さんの発声のスタイルは劇的なんですが、肝心の歌唱スタイルは淡々としていました。劇的な声で淡々と歌われると…居心地悪いですね。その声なら「そこはもっとタメて歌ってよ~」「もっと伸ばしてよ~」とか思うわけですが、淡々と歌うんですよ。ロッシーニはイタリア系の作曲家なんだからさ~…って思うのです。
三曲目のショパンは、ピアノを担当していた雲野栞里のソロでした。
四曲目からは再びソプラノの竹内さんが登場して、今度は日本歌曲を歌ってくれました。彼女の抑制された歌唱は日本歌曲によく合っていたと思います。で、最後はイタリア・オペラとなって、またも聞いていて欲求不満を感じたわけです。
たぶん、このソプラノさんは、歌唱スタイルからすると、イタリアものはあまり得意ではない…というか守備範囲には無いのかもしれません。今回は歌っていなかったけれど、案外、リートを歌うと良いかもしれませんね。リートなら、この発声にこの歌唱法で良いと思うのだけれど、イタリアものを歌うなら、もっと大胆に、楽譜を飛び越えた歌が歌えないとなあって思った次第です。イタリア系の歌は、真面目なだけじゃ歌えないものね。
若い歌手さんだなって素直に思った次第です。
音楽が語り継ぐ情熱(フルート:鈴木菜穂子)
前のソプラノさんのステージが終わると、そのまま休憩も無しで、次の方が舞台に登場してきました。次はフルートさんのステージでした。
カーク=エラート:シンフォニッシュ・カンツォーネ
ゴーベール:ロマンス
ブリチアルディ:マクベス・ファンタジー
いやあ、実に腕扱きなフルートさんでした。上手い上手い。すごく指が回る方でした。使っているフルートは…おそらくムラマツ14Kかな? と言うのも、フルートの音色が、いかにもムラマツサウンドだったのです。私、ムラマツサウンドって、ちょっと苦手なんですよね。くすんだ感じで中低音が押し出される、あの感じの音は、情念がこもりやすく、ちょっぴりウェットで、私には重たく感じるんですよ。なので、そういうフルートの音は敬遠して逃げていた私ですが、今日はうっかりつかまっちゃいました。曲も素晴らしく、演奏も素晴らしかっただけに、音色が好みでないのが残念でした。
でもね、二曲目の『ロマンス』はところどころにフルートの音を魅せつけるフレーズがあって、私、ムラマツはあまり得意ではないはずなのに、思わず「これ、いいかも~」って思っちゃいました。音色の好き嫌いを越えて、心を掴まれちゃったかも…。ならば、なおさら、私の好みの音色で演奏されたら、きっとメロメロになっちゃったかもなあ…なんて思って、途中からフルートの音色を、脳内でムラマツからアルタスに変換しながら聞いてました。いやあ、人間の脳って、結構高度な処理に耐えるものですね。もう、音色を脳内変換して聞いたロマンスは最高でしたよ。やっぱ、フルートの音色は、キラキラしていないとダメっすね。
三曲目の『マクベス・ファンタジー』は、ブリチアルディの作曲となっているけれど、実はヴェルディの曲です。歌劇『マクベス』の中のソプラノのアリアをフルートで演奏するようにアレンジしたものです。フルート曲には、アレンジ曲がたくさんあるわけですが、当時はやったオペラを題材にしたアレンジ曲がたくさんあって、この曲もそういう感じの曲です。元々アリアってのは、歌手たちの超絶技巧を聞かせるための曲なんだけれど、それはフルートにアレンジされても同じ事で、この手のオペラ系のフルート用のファンタジーってのは、フルートの超絶技巧を聞かせるための曲だったりします。つまり、オペラアリアのメロディーでフルートのアクロバチックな演奏が聞けるわけで、一度で二度美味しい曲なわけです。
私も、こういう曲をフルートで吹けるようになりたい…って、一瞬思ってしまいました。でもたぶん、死ぬまで練習しても無理だな、いや、死んでも無理かもしれない。それくらいに難しい曲だという事は聞くだけでわかりました。いやあ、それでもいいや。上手な演奏を聴けばいいわけで、なんでもかんでもアマチュアが演奏できちゃうなら、プロ奏者の存在意義はないわな。
いやあ、実に良かったですよ。それにしても、パソナ本社の、この玄関ホールは実に音楽の演奏に向いたホールで、残響が実に美しい場所だったりします。声楽とかフルートには良いですね。昨年はホールの中央部にステージを作りましたが、今年はステージをホールの片側に寄せたので、さらに響きが良くなった感じがします。で、これだけ広いホールなのに、そのほとんどが水田(玄関ホールは水田なんですよ、パソナって面白い会社ですね)なので、お客はほんのちょっとしか入れないんです。実に贅沢な造りになっています。だから良いのかもしれません。
で、続きはまた明日アップします。
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