さて、声楽レッスンの続きの続きです。
最後にトスティ作曲の「Luna d’estate!…/夏の月よ」を軽く歌ってみました。
歌ってみて感じたのですが、この曲は、トスティ歌曲の中では、かなり異質な歌曲だなと思いました。
まずはトスティにしては、歌いづらいのです。メロディの作りもしつこいし、おまけに歌っていくにつれ、どんどんノドが閉まっていきます。優れたテノール歌手だったトスティの作品とは思えない感じなのです。
なので、普通にトスティ作品に挑むような歌い方では、なんか歌とは合いません。
そこで考えて実践してみたのが「もっとバカなテノールになって歌ってみる」です。
トスティの作品って、テノールにしては知的な歌い方が求められるのですが、それを世間一般が求める「バカで愚かでアホなテノール」のように歌ってみたら…この曲に関しては、見事にいい感じでハマりました。
この「Luna d’estate!…/夏の月よ」を歌う時は、頭の中から、脳みそを抜き出して、何も考えずに、ただただお気楽極楽な気分で、歌い飛ばしていくのが吉だったようです。何も考えなけれは、ノドも閉まらないし、歌いづらいもありません。
そう考えて、この曲を見直せば、確かにメロディがバカッぽいですよねえ…。
そもそもテノールって声が軽薄だし、歌っている人も“俺様”でバカっぽい人が多いから、古来よりテノールの歌には、知性というモノが欠如しがちで、それを不満に思う知的なテノールもいたわけで、トスティって、そんなテノールたちに、知的な雰囲気を伴った曲を提供してくれた貴重な作曲家なのです。
トスティ自身がテノールであった事を考え合わせるならば、そんなバカ役を演じ続けるテノールにトスティ自身が飽きていたのかもしれません。
事実、トスティ作品を歌う際には、バカッぽさは求められる事はありませんからね。そこが多くのテノールに支持される点だし、テノール以外の声種の歌手にも支持されてきたところでしょう。
そんなトスティ作品の中にも、たまにバカな曲も混じっているって事なのです。実際、嫌だ嫌だと言いながらも、テノールの声には、バカっぽさって似合うものね。
トスティのチクルスを上演するなら、賢い系の曲がズラっと並ぶわけですが、その中に、この「Luna d’estate!…/夏の月よ」のようなバカっぽい曲がまざると、いい感じのアクセントになるよね。そういう意味で、この曲はトスティの作品群の中では、貴重で大切な楽曲なのでしょうね。
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