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聞き比べ、アルペジオーネ・ソナタ

 今はもうこの世に存在しない楽器、アルペジオーネ。調弦はギターと全く同じで音域も同じ、フレットがあったそうなので、やっぱりギターみたいな楽器。違いは弓で弾くことと、膝にはさんでチェロのようなスタイルで弾いていたらしいこと。一応、ヨーロッパの楽器博物館などにはレプリカがあるみたいだけれど、一応、絶滅した楽器の一つとして考えて良いのだと思う。

 このアルペジオーネのために作曲された名曲が、シューベルト作曲の「アルペジオーネ・ソナタ」。もう、オリジナル演奏楽器が事実上無いため、他の楽器で代用されて演奏されます。だって、曲自体は、美しくて、すごく良いから。

 普通はチェロで演奏します。同じ弦楽器だし、音域も近いから。ただし、チェロは4弦、アルペジオーネは6弦なので、色々と難しいみたいです。

 だったらいっそ、ギターを弓で弾けばいいんじゃないかと思うのだけれど、チャレンジした人はいるのかな? 一応、ギターだって、弓で弾けるんだよ、ブリッジに若干の改造を加えれば…、確か、ジミーペイジが弓で弾いたと思う。

 チェロの演奏が多いとは言え、オリジナル楽器がない以上、他の楽器で演奏しても、誰も文句が言えないので、オリジナル楽曲の乏しい…ヴィオラとかフルートとかも、こいつを演奏したります。

 ヴィオラのことは、横に置いて(笑)、先日、私は、この曲の聞き比べというのをやりました。もちろん、CDですが(大笑)。チェロ盤が、ロラン・ピドゥー(チェロ)&ジャン=クロード・ペヌティエ(ピアノ)のフランスコンビのもの。対する、フルート盤が北村薫(フルート)&刑部佳子(ピアノ)という日本コンビです。

 チェロのピドゥー氏は、昨年のラ・フォル・ジュルネのマスター・クラスで、私の本当の目の前(2mほどの距離)で、この曲を演奏してくれて、それ以来のお気に入りなんです。すでに国内盤は廃盤なので、輸入盤をリンクしておきました。

 フルートの方の北村氏とは、全くの面識がありません。CDのプロフィールをみると、桐朋学園大学とムラマツフルートレッスンセンターで教えられているようなので、このブログを読んでいる方の中には、この方のお弟子さんがいらっしゃるかもしれませんね。

 お二人とも、一流のプロ奏者なので、演奏に文句はありません。録音もすごぶる良いです。ですから、ここからの比較は、演奏家の比較ではなく、アルペジオーネ・ソナタを、チェロで弾いた場合と、フルートで吹いた場合の比較として、捕らえてくださいね、よろしく。

 てなわけで…。

 やはり、原曲が弦楽器を念頭において書かれたせいもありますが、しっくり来るのは、やはりチェロの方。曲の持つ奥行きもチェロの方がより深く表現できているような気がします。はっきり言って、より歌っているのはチェロの方です。ま、これらは弦楽器と管楽器のポテンシャルの差だね。ううむ、ずるいぞ、弦楽器。

 じゃあ、フルートではダメかと言うと、そうでもなく、フルートの方が聞いていて身近な感じがします。より親しみやすいというべきか。別にこれは私が笛吹きだからというひいき目の話ではなく、何というのかな、フルートの方が自然体の音楽になってます。

 テレビ放送に例えると、チェロの演奏は、劇場からの演劇中継ならば、フルートの演奏は、スタジオ収録のテレビドラマのようです。つまり、チェロだと濃いけど、フルートだとフレンドリー? フィルムとVTRの違い? なんかそんな印象があります。ヴィブラートの違いかな? やはり弦の方がヴィブラートを駆使した表現には長けているような気がしますが…人によってはおおげさに感じるかもね、特にクラシックを聞き慣れていない人だと、フルート演奏の方が「癒される~」とか言って好むかもしれない。

 ま、結論を言っちゃうと、好き嫌いの問題なんだけれどね。

 それにしても、フルートって管楽器だから、弦楽器と比べると、呼吸というハンデがあるし、この曲のフレーズって決して短くないから、本当は、フルートの演奏だとかなり聞き劣りがするだろうなあと思ってましたが、いやいや、実際、プロともなると、これくらいのフレーズは(楽ではないでしょうが)なんとかしちゃうものなんですね。

 チェロで聴くと、美しいです。フルートで聴くと、良い曲です。ああ、どちらも悩ましいし、どちらも大好きです。

 あと、フルートにせよ、チェロにせよ、実はこの曲、ピアノがとても大切だと思います。上手さも必要だけれど、なによりもピアノには、こぼれるほどに美しい音色が要求されます。

 やっぱ、ロマン派の音楽はいいね。フルートって、バロックと現代曲とポピュラーしかない(は言い過ぎか?)から、ロマン派の音楽は、心にしみるね。ズンズンしみこむよ。

 蛇足。ヴィオラで聴くと、ちょっと地味なチェロ? って感じになります。あの渋さが好きな人にはたまらないでしょうが、一般受けするかと言われると微妙。改めて、チェロという楽器の音色の素晴らしさに感服しますね。

 チェロに転向しようかな(嘘)。

コメント

  1. シラスマ より:

    アルペジオーネソナタ、本当に美しい曲ですよね。
    一時期はまって聞き込んでいた時期がありました。
    そのCDもチェロでしたねえ。
    シューベルトって天才って思いましたもん。
    いつか吹いてみたいですが、歌い上げるのは大変そうです^^;

  2. すとん より:

    >シラスマさん

     アルペジオーネソナタ、美しいでしょ。チェロでの演奏がやっぱり一般的なんでしょうし、たぶんそれでいいと思います。

     でも、笛吹きの方々にとっても貴重なレパートリーですよね。吹いてみたいですよね。私のような門前小僧でも「いつの日か…」と思う曲です。

    >歌い上げるのは大変そうです^^;

     この曲に限らず、シューベルトは演奏が難しいと思います。いや、奥が深いと言った方がいいのかな? いづれも一筋縄ではいかないと思います。

  3. YOSHIE より:

    ちょっくらユーチューブに行って駆け足で聞いてまいりやんした。チェロだらけで…。マ様も聞いてまいりました。ううう…悲しい曲…(T_T))。チェロだと湿気ちゃって「ほれ泣け、それ泣けぃ!!」みたいな感じが、いや増してしまうけれど、他楽器でノンビブラートでサラリとしてるのも、夜に想う曲としては良いと思います(夜八時以降は悩まないことにしてます)。チェロ、《絶対に楽器に入れ込まない!》と条件付きでボチボチやるのもよいかもです。体格的にすごく合っていると思います。

  4. すとん より:

    >YOSHIEさん

     おっしゃる通り、悲しいです。なぜ、こんなに悲しいんでしょう。

     さらにチェロだと音楽が湿っぽいですね…。いや、フルートで演奏しても、やっぱり悲しいのですが、たしかに湿度は違いますね。フルートって、基本的に根明な楽器ですから、悩んでも悩みきれないというか、悲しんでも悲しみきれないというか、必ず音色のどこかに“希望”が入り込んでいる楽器ですから、悲しいけれど、まだ明日になれば元気になれそうな悲しみです。そこへ行くと、チェロだと、絶望的に悲しいですね。でも、そこがいかにもロマン派っぽくていいですね。やっぱりロマン派の音楽は弦楽器向きなのかなあ…。

    >《絶対に楽器に入れ込まない!》と条件付きでボチボチやる

     これ、絶対に無理。だって私、オタクだもん。オタクってのは、道具に異様なまでの執着心があるのよ。お道具には徹底的にこだわるのよ、スペック至上主義なのよ。楽器に入れ込まなければ、音楽をやる意味ないじゃん。

     ? 本末転倒? ま、それが悲しいオタクの気質だから。

    >体格的にすごく合っていると思います。

     体格的に言ったら、チェロよりコントラバスです(大笑)。

  5. YOSHIE より:

    >体格的にはコントラバス
    コントラバスって…めちゃくちゃ格好いいです!桶でチェロは編成によっては「あれ?どこ?」(見えるは見えるけど)なのにコントラバースは絶対的に目立ちます。案外と高音も出て何でも弾けるでしょ?

    >悲しんでも悲しみきれない

    うわ、いいですね(o^o^o)バロックの長調のメヌエットみたいなのが好き(お馬鹿な白塗り・付けボクロ貴族がチンタカ踊ってるみたいなやつ)なので…
    フルートに変更しようかな…(大嘘)

    >仕様変更のきかないオタク気質

    考え方としてチェロのときだけ裏すとんさんになる…とかそんな感じです…と書きながら、既に無理ぽ、と思いました。
    ただ、ギターをされていたなら、特に気負わなくてもいつでも開始できるかもすね。先生もいるし。

    ギターのアル…ソナ良かったです。

  6. すとん より:

    >YOSHIEさん

     そうそう、コントラバスの話をして、私がチェロをやりたいのに、二の足を踏んでいる理由の一つを思いだしました。それは…楽器が大きいから(爆)。

     いやあ、チェロって楽器が大きいでしょう。おまけにハードケースに入れて持ち運んだりして、移動が大変でしょう。ましてや、コントラバスの移動なんて、さらにもっと、大変でしょう。そこが二の足を踏む理由の一つでした。

     ギターは、コントラバスはもちろん、チェロと比べても小さいし、軽いです。ケースも“ソフトケース”なんて無防備な布をかぶせて、それでOKって感じだったし。それでもあの大きさだし、結構かさばりました。移動って言うと、なんか大変だったなあ…。チェロやコントラバスになると、もっと大きくて重い楽器を持ち運ぶのだと思うと、根が面倒くさがりな私には大問題です。

     私はどこへ行くでも、基本、徒歩&電車、な人ですから、大きな荷物はちょっと苦手です。

     その点、フルートは小さいから、どこへ行くでもラクラクです。一度、このラクさを知ってしまうと、なかなか別の楽器には移れませんよ。

  7. YOSHIE より:

    あら、やだ!ばかじゃん、まちがえたじゃん!(笑)
    ソナタなのに、何回もソナタって書いてあるのに(自分でも!)“ノクターン”と勝手に脳内変換してました。

  8. すとん より:

    >YOSHIEさん

     ん? よく分からないけれど、アルペジオーネソナタを聞いたつもりで、ノクターンを聞いてしまった、という話ですか?

  9. YOSHIE より:

    おはようございます。
    ちょっと答えになっていなくて申し訳ないですが、奇しくも、
    ダンベルドアさんと言う方が書いている『日曜チェロ弾き無伴奏日記』に“五弦のチェロ”(7/20付け?)がUPされていて、
    コメントを書かれているOkusanと言う方がアルペジオーネを再現しています。
    (URLを貼れなくてすみません)
    ※スレ違い?ですが、吹奏楽・ブラバン談義すごかったですね!!勉強にもなりました。

  10. すとん より:

    >YOSHIEさん

     再現されたアルペジオーネを見たかったですが、当該の箇所は見つけられませんでした、残念。その代わり、アルペジオーネで録音したアルペジオーネソナタのCDジャケットの写真を発見。六弦のチェロと言うか、チェロっぽいギターと言うか、なんとも微妙な楽器ですね。ああ、音を聞いてみたい。

  11. YOSHIE より:

    ナヌッ?!なんとな・・・私の書き方が悪かったかもデス。

    http://arpeggione.blog48.fc2.com/?m
    (『古楽器』というブログです)

    http://arrpegione.web.fc2.com/

    奥村さんが書かれているのだと思います。どちらかで画像・製作課程・演奏風景・音色が見れたり、聞けるはずです。
    と言うことで、お暇な時にでも・・・
    アルペジオーネのつづりが微妙に違うんですが・・・
    やはりギターみたいな可愛い楽器(分数チェロみたい)です。

  12. すとん より:

    >YOSHIEさん

     上の方にある、英語のブログの方で、やっと画像を見ることができました、感謝です。それにしても、画像に辿り着くまでが大変でした。なんでだろ?

     人と一緒に写っているの大きさがよく分かりますが、これは明らかにギターサイズですね。カントリー&ウエスタンでよく使う、ホローボディのギターにそっくりです。ブリッジのあたりがチェロっぽいけれど、あとの部分はほぼギターですね。現代のチェロよりも、幾分小振りかな?

     ああ、こいつの音を聞いてみたい。このサイズだと…たぶん、そんなに深い音は出ないだろうと思うけれど。

     たぶん、こいつで演奏するよりも、チェロで演奏した方が、アルペジオーネソナタは、感動的に聞こえるような気がする。

     おもしろいサイトを教えてくださって、感謝です。

  13. okusan より:

    YouTubeに自作自演で放映しました。
    アルペジョーネで「鳥の歌」(カザルス)を演奏しています。

    http://www.youtube.com/watch?v=gkrDTQyjAN4

  14. すとん より:

    >okusan

     リンク先にアクセスしたら、画面が横向きで驚いちゃいました(笑)。

     それはさておき、最初、私は勘違いしていたみたいです。何を勘違いしていたのかというと、アルペジオーネ・ソナタの演奏だと思っていたのですが、出てきたメロディーが全然違うので???でした。

     これはアルペジオーネという楽器を使って、カザルス作曲の「鳥の歌」という曲を演奏した動画ですね。了解しました。あ、アドレスが一部間違っていたので、修正しておきました。

     音を聞くと、かなりチェロに近い感じがします。大雑把に言っちゃうと「フレットのあるチェロ」って感じがします…たぶん、実際はそんなもんじゃないでしょうが。私はこの楽器なら好きになれそうです。音色もいい感じだし。あ、もちろん、okusanの演奏もいい感じで好きです。

     おもしろそうな楽器ですが、なぜ廃れてしまったのでしょうね。やっぱり6本弦だと、弓で弾きづらいのかな? あと、フレットを使用していると、音程の微調整が難しいので、そういう部分が嫌われたのかな?

     貴重な動画の情報をありがとうございました。

  15. okusan より:

    返信ありがとうございました!アルペジョーネソナタでなくて失礼しました。実際はすごく難しい曲で全曲は弾けません。友達のニコラス氏のYouTube をご覧ください。かれは楽に弾いています。2代目を製作中で、完成しましたら、シューベルトのアヴェマリアや子守歌などまた動画にアップします。どうぞよろしく、次回は画面を縦にしますね。

  16. YOSHIE より:

    音、聴けたのですね!よかった、よかったヽ(*^_^*)…(しかも、okusanからコメントが来ているのでびっくりしたりしてます)

  17. すとん より:

    >okusanさん

     いえいえいえ、私はチェロはまったく門外漢ですが、それでもアルペジオーネソナタが、おそらく難曲であろうとは予測が付きます。なので「本物のアルペジオーネでアルペジオーネソナタ? そりゃあ、ワクワクだね…」と勝手に勘違いしただけの話なんです。

     かえって恐縮させてしまったようで申し訳ありません。

     それとやっぱり画面は縦の方がいいです。ずっと首を曲げてみると、首が痛くなったしまいますから(笑)。

  18. すとん より:

    >YOSHIEさん

     はい、聴けました。ありがとうございます。

     聴いてみた感じは、思ったよりも、チェロっぽい音だなあという事。もちろん、録音ですから、生で聞くとまた感じが違うのかもしれないし、あと復元楽器ですから、もしかすると製作者側が気分的にチェロに引っ張られている可能性もないわけではないでしょうが、それでもひとまず、アルペジオーネという楽器の音を確認できました。

     何度も書きますが、なんでこの楽器、廃れちゃったでしょうね。簡易チェロみたいな感じで十分使えそうだし、これなんかうまく電気化すると、ポップスでも使えそうな気がするし…なんかもったいないです。

  19. YOSHIE より:

    ねぇ…なんで廃れちゃったんでしょうね?
    ヴァイオリン族にもヴィオール族にも属せなかったのかなぁ。
    ところですとんさん推奨のエレキ版ですが、《くもり空》というバンドの方が自作で演奏を披露してます。“私のお気に入り”も演奏動画ありです。
    YOUTUBE/投稿者;“GokigenyaLive”さんです。ニホンの現代の若人も捨てたものではないです。
    演奏者の彼はたぶんチェリストと思われます。

  20. すとん より:

    >YOSHIEさん

     いやほんと、日本の若者も捨てたものじゃないですね。と言うか、私が思いつく程度の事は、すでに誰かが実現しているというわけですね。

     関係のない話ですが、私はこのように、頑張っている若者を見ると、オッサンとして、今の世の中をきちんとしてあげたいと思います。彼らが安心して、その才能を開花できる社会を作り、きちんと維持していかないといけないと思ってます。

     若い時は、政治なんて興味なかった私ですし、大人たちが政治の話をしていても、???だったのですが、この年になって、政治の大切さが身に沁みるようになりました。

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