少し前にもありましたが、老犬ブログには定期的に「この人の演奏(歌唱)は楽譜通りに正しく演奏(歌唱)しているのか」という質問が来ます。
正直に言えば、私はソルフェージュの先生ではないので、赤の他人の、それもプロの方の演奏(歌唱)に関して、正しいとか正しくないのか、言うべき立場にはありません。そういう質問は、プロの音楽家のブログ等でしてほしいと本音で思ったりします…が、それでも一応、私なりに誠実に対応したいと思い、いつも私見ですが、答えさせてもらっています。
と言うのも、質問の前提として
1)私(質問者)は楽譜が読めない。
2)音楽は耳コピで楽しんでいる。
3)この演奏(歌唱)は楽譜通りなのか。
->私はこの演奏を真似してよいのか?
となるからです。
はっきり言ってしまえば、教材用に録音された音源で無い限り、楽譜通りに演奏している演奏家なんて、まずいません。だって、楽譜通りに演奏するなんて、あまりに平凡でしょ? プロの演奏家は自分の演奏が商品です。だから、自分の演奏(歌唱)には、自分の個性を込めて one & only な演奏に仕上げて、他の演奏家の演奏とは差別化を図って販売するわけです。それができなきゃ演奏家として成功しないし、日本に住んでいる我々が耳聞するような演奏家は成功した演奏家ですから、その音源が楽譜通りなんて事は、まずありえないのです。
だから「この演奏は楽譜通りに正しく演奏されているか」という質問に関しては「正しいか正しくないかで言えば、正しくない」と答えています。
でも、そんな事は、本音で言えば、どうでもいいと思ってます。
楽譜通りであろうがなかろうが、その演奏が素晴らしいものなら、音楽鑑賞をする上では、なんの妨げにもならないわけですから、その演奏をそのまま受け入れて、楽しめばいいと思います。
その演奏をお手本として、それを真似て演奏して、うれしくて楽しくなれたら、その演奏が楽譜通りでなくても、全然構わないのではないでしょうか。
つまり「楽しければ何でもアリ」なのが、アマチュアの音楽の楽しみ方だと思うからです。それでは楽しくないと思うなら、楽しくなるための方法を探し、それが見つけられれば、それをすればいいし、見つけられなければ、別の楽しいものを探せばいい…と私は思ってます。
楽譜だって読めた方がいいけれど、別に読めなくても、音楽が楽しめるなら、それでいいと思います。
ただ、楽譜を読めない事を負い目に感じるなら、それは楽しくない状態にあるわけだから、楽譜が読めるようになればいいだけの話です。楽譜通りに演奏できない事が負い目に感じるなら、それは楽しくない状態にあるわけだから、楽譜通りに演奏すればいいだけの話です。
クラシック音楽を趣味とするなら、楽譜は読めた方が絶対に楽しみの幅が広がるので、読めるに越したことはありません。でも楽譜が読めなくても、音楽を楽しめないわけではないし、耳コピで演奏できるなら、楽譜は読めなくても、あまり困らないかもしれません。
そういう事をツラツラと考え合わせてみると、この問題の根底には楽譜コンプレックスがあるのかな?って思います。楽譜コンプレックスとは「楽譜が読めない自分は、なにか間違っているのではないか」って悩み、楽譜が読めない事を負い目に感じている…ってコンプレックスです。
楽譜が読める読めないなんて、読み書きの問題ですから、勉強すればいいだけの話です。ただ、独学で勉強して楽譜が読めるようになれるかどうかは…私には分かりません。
私も長い間、ロクに楽譜は読めませんでした。だって、専門教育なんて受けてませんからね。私の音楽教育なんて、義務教育レベルで修了していました。だから楽譜が読めない負い目って、身に覚えのある話なので、分からないでもないんです。
それがいっぱしに楽譜が読めるようになったのは、フルートのH先生のおかげです。H先生のレッスンを受け、私がロクに楽譜が読めない事に気づいた先生は、ごくごく簡単な楽譜から始めて、フルートを学びながら、楽譜を読めるようにしてくれました。
たぶん私の場合、独学では楽譜が読めるようにならなかったと思うし、声楽だけやっていても(声楽は耳コピでもどうにかなるので)読めるようにはならなかったと思います。最初にフルートを学んだ、ジャズの笛先生のところでも、楽譜が読めるようになったかは…甚だ疑問です(笛先生は、H先生とは指導方針が真逆で、いかに楽譜から離れた演奏をするかを教えてくれました)。
なので、楽譜を読めるようになるには、たぶん、きちんと真面目にクラシック系の器楽を勉強しないと難しいのかなあ…って、個人的には思うわけです。
なんか、話があっちこっちにとっちらかって、ごめんね。
↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
コメント
とても良くわかる内容でした。プロの演奏家なら、いかに自分らしい演奏をするかが大事で、楽譜通りに演奏することとは違う課題があって然るべきです。また、ジャズなどの場合は、プロでもアマチュアでも、いかに楽譜通りに演奏しないかが大事だと聞きました。
でも、クラシックでアマチュア演奏家の場合は、まずは楽譜通りに演奏出来てナンボですよね。それが出来るようになって初めて、楽譜から離れた演奏が出来ると思います。
あ、でもアマチュア演奏家の一番大事な事は、楽しく演奏出来るかという事でしょうね(^-^)
kyonzyさん
私は、アマチュアの場合、一番大切なのが「本人が楽しい事」だと考えています。たとえ、周囲が不快/不愉快であっても、本人が楽しい事が最優先事項です。一方プロは、本人の楽しみ以前に、観客を喜ばす事が最優先で、お客が喜んでくれるからプロ活動ができるわけで、そこらへんが、プロとアマの違いだと思ってます。
技術的には、アマの場合、初級レベルにいる人が多いでしょうから、まずは基礎基本。楽譜どおりに演奏できることが、最初の目標になると思います。実際、楽譜通りに演奏するのって、ほんと、難しいもの。とは言え、楽譜通りに演奏する過程で、つらい思いをするならば、楽譜通りで無くったって、楽しけりゃいいじゃんと私は考えているんですよ。