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テレビで楽器の良し悪しが分かるのか?

 時期外れの話題で申し訳ない。またお正月になると放送されるんでしょうが、これは人気テレビ番組「芸能人格付けチェック」を見て、毎度思うことです。
 目隠しで、2~3種類の販売価格の異なる楽器を聞かせて、どれが高級楽器なのかを当てるゲームをやっているのですが、これ、現場で生音を聞くならともかく、テレビの電波に載せて、果たしてその違いが分かるものなのか…という疑問を毎回持っている私です。
 例えばヴァイオリン。まあ、格付けチェックのたびに出てくる定番楽器なんだけれど、何億円もするヴァイオリンと、10万円~100万円程度の楽器の2つを聴き比べて、どっちが高級ヴァイオリンかと当てる問題。
 これ、現場なら、割と簡単なんだろうと思います。と言うのも、ヴァイオリンの場合、価格って音量と比例するからです。決して音色と比例するわけじゃないんですね。ヴァイオリンの場合、音色は奏者が好き好きで選べばいいわけです。それこそ、あれこれたくさんの音色をしたヴァイオリンが存在しますからね。
 ヴァイオリンって、実はそんなに音量の大きな楽器ではありません。だからこそ、大きな音が出せる楽器って、高額で取引されるんです。ストラドのような高級楽器は、きちんと弾き込めば、かなり大きな音が出るんです。だから、どちらがストラドか当てろと言われたら、単純に大きな音の楽器を選べばいいんです。
 まあ、奏者が未熟で、楽器本来の音量を引き出せないと困りますが、テレビ局が用意している演奏者なら、きっとそんな事は無いだろうから、大きな音の楽器を選べは良しです。
 だから現場で選ぶのは割と簡単だろうけれど、テレビの場合、放送される音声は調整された上で電波に乗るわけです。どんな調整をされるのかと言えば、音量の平均化です。大きな音はキレイに聞こえるように小さくされ、小さな音ははっきり聞こえるように大きくされ、全体を均一した音場にして、それが電波に載ります。なので、テレビで見ている我々は、ストラドだからと言って、大きな音では聞かせてもらえませんから、楽器の区別はつかないのではないかと思うわけです。
 別にストラドだからと言って、全部が全部、良い音色の楽器とは限らないから、音色で選ぶと失敗しちゃうかもね。ただ、入門用の安いヴァイオリンって、安い音がする(ごめんなさい)ので、安いヴァイオリンの音を知っている人なら、音色で判断できるかもしれないけれど、ヴァイオリンと縁遠い人だと、単純な音色の良し悪しでは、楽器の良し悪しは分からないだろうと思ってます。ちなみに、ヴァイオリンは100万円も出せば、もう十分に良い楽器です。安い音はしないし、モノによってはストラドよりも良い音もするから、なおさら音色で区別するのは難しくなるでしょうね。
 もっと困るのは、秋の特番で出てくるフルートです。フルートの場合は、だいたい三択で、ゴールドフルート、入門用の洋銀フルート、その他のフルートの中から、ゴールドフルートを選べって問題なんです。ちなみに、その他のフルートとして、今年はプラ管フルート、昨年は水道管フルート(!)が取り上げられていました。
 これ、素人さんは、この3つが全然違うモノだと思うんだろうなあって考えるんだろうけれど、実はこの3つって、ほぼほぼ同じなんだよ。フルートって、管体が鳴るわけではなく、管体の中の空気が鳴るわけだから、別に管体が何で作られようと、実はあまり大きな問題ではありません。大切なのは、誰が吹くか…です。フルートは、管の素材の音よりも、奏者の音の方が強い出る楽器なんです。だから、どれを吹いても、その奏者の音が出る…わけです。
 ただ楽器が違うと、奏者にとっての吹きやすさ吹きにくさは段違いです。プロ奏者にとって、一番吹きやすくて鳴らしやすいのは、日頃から吹いているゴールドフルートであって、次は洋銀フルート。おそらくプラ管とか水道管フルートなんて、普段は吹かないでしょうから、よく鳴らせないと思います。
 よく鳴る楽器は音量が大きく、あまり鳴らない楽器は音量が小さいものです。だから、現場で生音を聞けば、朗々と鳴っているのがゴールドフルートで、スカスカした音で鳴っているのがプラ管フルートだったり水道管フルートだったりするわけです。
 そういう意味で、どの楽器がゴールドフルートなのかって、当てられないわけじゃないけれど、これは別に楽器の音色を聞いて判断しているわけではないのです。
 この奏者に十分な練習時間を与えて、プラ管フルートや水道管フルートを十分に鳴らせてもらえば、もう区別をつけるのは難しくなるんじゃないかしら?
 あと、あの番組では、プロ奏者は本当のプロの方を使うので問題ないのですが、アマチュア奏者として、しばしば音大生や音大卒の方を使うのですが、音大生って、時々、下手なプロよりも上手い人もいるので、こういう人をアマチュア代表として使うのは、いかがなものかと、時折思ったりします。とは言え、本当に素人の演奏は…電波に載せられる出来じゃないから仕方ないと言われれば、納得せざるをえません。
 とまあ、ゲームとしては面白いけれど、なかなかテレビ越しには、楽器の良し悪し(ってか、高い安い)は分からないものだと、私は思っているのです。

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コメント

  1. reyus より:

    同意です。
    生で聴いていれば人間には聴こえない音でも身体に感じる部分もありますし、何より私の家のテレビに組み込まれているようなショボいスピーカーなんかじゃ音色が微妙に違うくらいは何となく感じはしますが、どちらが高い楽器の音色かなんて分かろうはずもありません。(笑)

  2. すとん より:

    reyusさん
     まあ、所詮バラエティのお遊び企画ですから、無心に楽しんでいればいいだけの話なのですが、なまじ音楽を趣味としてしまったために、ちょっとだけ、こだわっちゃうんですよね。
     デジタル録音された最新音源でさえ、生演奏の生々しさは再現できないわけですから、ましてやテレビのスピーカー程度(我が家のテレビだって、大したもんじゃないです)では、ほんと、おっしゃる通りだと思います。
     でも、面白いから、また今度のお正月も放送されれば見ちゃうんだけどね(笑)。

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