コンサート会場にも色々あります。クラシック音楽の関係者が主に利用するのは、響きの良い会場です。“響きが良い”とは“残響音が残る”会場です。天井の高いキリスト教会の礼拝堂とか、内装が木製品ばかりで作られている音楽ホールなどが良い会場とされています。一般的には、残響音が多くなるので、広めの会場が好まれます。
でもコンサートって、別にクラシック音楽だけが行うわけじゃない…ってか、数だけ言ったらポピュラー音楽の方が多いでしょうし、日本のホールは、コンサート以外の目的にも使うことの多い“多目的ホール”ばかりだから、必ずしもクラシック音楽に適しているモノばかりではありません。
実は、いわゆる“市民会館”のような多くのホールでは、基本的に、響きの悪いデッドな作りになっているようです。床は絨毯敷きで、壁には吸音材が入っている…なんてザラだものね。と言うのも、P.A.(マイクシステム)を使う前提ならば、デッドな方がハウリングなどのトラブルを避けられるので、好都合なのです。P.A.使用ならば、響きなどは電気的に処理すれば、いくらでも付け加える事ができますしね。
そうやって、クラシック音楽に不向きなホールが多い中、クラシック関係者は、なるべくクラシック音楽に向いた会場を選んでコンサートをするわけで、会場選びにはあれこれ苦労があるわけです。
先日、聞きに行ったコンサートは、声楽系のクラシック音楽のコンサートだったのですが、演奏会場が、以前は映画館だったというライブハウスでした。ライブハウスは大半がデッドな作りになっている事が多い(ロックに残響音の多い会場ならば…そりゃあ大変なことになるわけです)のですが、元が映画館って事で、その会場はライブハウスの中でも、かなり強烈なデッドな空間になっていたと思います。おそらく、反響はほぼゼロでしょう。
分かりやすく言うなら、カラの映画館にたった一人で入ったと想像してみてください。映画館って、遮音が凄いですし、吸音も凄いんですよ。すごく静かに感じるはずです。おそらく、鼓膜のそばを流れる血管の血流の音が聞こえるかもしれないほどに、映画館って無響にして無音な構造になっているのです。
とにかく(元)映画館はクラシック音楽のコンサートには向きません。
なので、今回のコンサートでは、クラシックの演奏会にも関わらず、しっかりP.A.が入っていました。入っていると言っても、マイクを手に持って…というのではなく、エアモニが入っていました。エアモニと言うのは、会場の雑音を拾うマイクとそれに付随するシステムの総称です。主な使用方法は、会場の雑音を拾って、それに電気的にエコーを付け加えて会場に流すという奴で、人工的な響きを作り出すシステムです。デッドで響きのない会場でクラシック音楽の演奏をするのだから、人工的に響きをつけてあげましょう…って事です。
観客的には、これもアリかなって思いました。デッドな音を聞かされるよりも、人工的とは言え、響きのついた音の方が耳に優しいからね。ただ、演奏家的にはどうだったのかな? 特に今回は、モニターを使っていなかったようだから、響きのついた音は客席には聞こえても、舞台には聞こえていなかったわけです。
演奏者によっては、反響音の少なさを気にする素振りを見せない方もいれば、かなり歌いづらそうにしていた方もいました。プロなんだから、どんな会場にも対応して当たり前…とも言えますが、得手不得手などもあるし、本来的には厳しい会場なので、そこまで求めるのは可哀想かなと思わないでもなかったのです。
こういう無響無音な場所でコンサートを開くなら、たとえクラシック音楽でも、マイクを使用するのもアリかなって思います。ハンドマイク…では興ざめでしょうが、スタンドマイクの使用ぐらいはアリだと思います。あと、モニタースピーカーも必要だと思いますよ。
とにかく、映画館でクラシック音楽という、珍しい体験ができました…という話です。
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コメント
すとんさん、こんにちは
特に歌を歌う人にとって、会場の音響は気になるようですね。
残響音も多ければ良いというものでもないと思います。
宗教音楽は、音響のある教会で歌うものだから、元々声の細い人、小さい人が合っていると思います。
でも、教会で、スピント~ドラマティコの方がオペラや日本歌曲などを歌っても合わないと思います。
ドロシーさん
宗教曲って、楽譜、黒いんですよね。女声はともかく、男声だと、かなりのテクニシャンか、あるいは相当声が軽くないと歌うのが難しいんですよ。私もチャレンジしたいのですが、テクニック不足のために、メロディーの動きに対応できずに、未だに指をくわえて見ている状態です。
>でも、教会で、スピント~ドラマティコの方がオペラや日本歌曲などを歌っても合わないと思います
それは同感です。彼らの出番は、ヴェルディのレクイエムぐらいじゃないかな? 逆に言うと、ヴェルディのレクイエムって、宗教音楽的には珍しいタイプの曲なんだなって思います。