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今年はやり切った私です…発表会 その4

 またまた、声楽の発表会の記事の続きです。

 モーツァルトのアリアを歌い終え“やっちまった”という後悔と“撃沈しなかった”という喜びの、2つの気持ちに揺れていた私でした。複雑なお年頃なんです(笑)。

 とにかく、そんな気持ちに浸っている余裕は私にありません。すぐに次の準備をしないと…。

 次は妻の出番だったので、それだけはしっかり見せてもらって、終わるや否や、急いで楽屋に戻って、二重唱の準備にかかりました。

 衣装チェンジです。『愛の妙薬』のネモリーノは農夫ですから、タキシードから“ネルシャツ+オーバーオール+長靴”の農夫姿に着替えました。小道具として、ワイン瓶を持ちました。だって、これ(愛の妙薬)を忘れては話になりませんからね。

 私が着替えているうちに、第1部は終了し、休憩になりました。休憩中に客席に降りて、第2部の最初の歌だけ聞いたら、すぐに舞台裏に移動して、次のステージに備えました。

 アリアで失敗してしまったので、もう怖いものなんて、何もありません。気持ちは却って楽になったくらいです。今度はしっかりメガネを外して、舞台に出て、ゆっくりと音楽の神様が降りてくるのを待ってから、落ち着いた気持ちで歌い出すだけです。後は、私ではなく、私の中のネモリーノ君が、歌うのです。彼に任せれば良いのです。私的には“野となれ山となれ”の気分です。

 大きな失敗を2つばかりしました。一つは、途中で歌がズレてしまった事です。いやあ、参りました。音楽稽古の段階までは完璧に出来ていたのですが、演技をつけた途端に、ある箇所で、私が1小節出遅れてしまうようになりました。これすべて、歌と演技との関連が、うまく行ってなかった事が原因なんです。もう少し、歌に合わせた演技プランを練らなきゃいけませんね。とにかく、歌の区切りと演技の区切りがズレてしまっているので、歌が演技に引きづられて遅れてしまうんですね。これはリハの段階で気づいた事だし、修正しようと心に決めていた事なんだけれど、結局、本番でもやっちまいました(涙)。

 もう一つの失敗は、最後のカデンツァの部分で最後の最後の上行フレーズが登りきれなかったために、その後のフレーズで正しい音程に入れなくて、やむなく、かなり低い音にして歌ってしまった事…ぐらいです。

 あと、小さな失敗なら、数えきれないくらい、やっちゃいました。

 で、そんなわけで、色々とありましたが、私と妻で歌った、ドニゼッティ作曲の歌劇「愛の妙薬」の二重唱「Caro Elisir! Sei Mio!/素晴らしい妙薬」は、こんな感じになりました。例によって、これを聞いて、ガッカリしたり、気分を害しても、自己責任って事でお願いします。

 この二重唱は、本来はビデオでアップすべきなんです。だって、歌よりも演技の方がメインのパフォーマンスでしたから(笑)。でもビデオはアップしない(爆)。演技は、直接会場に来てくださった方々だけの“お楽しみ”って事で…。

 自画自賛ではなく、こちらはアリアと違って、結構評判良かったです。皆さん「面白かった」と言ってくれました。色々な方に握手を求められました。

 K先生は「やるねえ~」と言ってくれました。F先生は「やっぱり動きがあると、歌も変わってくるねえ」と言ってくれました。

 Y先生はヒヤヒヤだったそうです。何しろ、私、歌いながら、舞台を飛んだり跳ねたりしていて、挙句の果てに、ワイン瓶を持った腕をグルグル回しながら舞台を走り回って歌っていたもんだから「ピアノ1200万! ピアノ1200万!」と唱えながら、グルグル回すワイン瓶がピアノに当たらない事ばかり心配していたそうです。「本当に、あの時は心臓が止まるかと思ったよ」との事でした。ちなみに「ピアノ1200万!」とは、ワイン瓶をぶつけてピアノを壊したら、弁償金は1200万円だ~」という意味だそうです。コンサートグランドって、お高いのね。

 あと、Y先生からは「あれだけ派手でベタな芝居をやるなら、いっそ、舞台から降りて、客席で歌っちゃうのもアリですね」とも言われました。確かに、舞台に降りて歌っても良かったよね。

 まあ、この二重唱に関しては、この発表会で終わりではありません。実は今回、二重唱の前半分しか歌っていないので、後半部も加えた形にして、秋のクラシックコンサートで、もう一回歌うつもりです。もっとも、その時は、演技を控えめにした演奏会形式で歌うんで、当然芝居も変わるし、雰囲気も変わると思います。なので、ちょっと休んで、また夏になったら、二重唱は勉強しなおしです。

 ちなみに、秋は、伝統的なカットを加えた普及版の形で歌うつもりです。で、冬の、非公開の勉強会では、全くのカット無しの、ドニゼッティーが作曲した本来の形で、この曲を歌うつもりです。なにしろ、この二重唱は、オペラのメインタイトルになっている曲ですからね。きっちり学んで、たっぷり楽しむつもりです。そして、いつでもどこでも歌える、私と妻のレパートリーにするんだ!

 とにかく、発表会、やれる事はやりおえました。歌い切りました。あー、楽しかった。

 自分たちの歌を終えたら、すぐに客席に降りて、観客に戻って、他の生徒さんの歌に聴き惚れました。いやあ、自分の出番が終わって聞く、他人の歌唱って、蜜の味ですね(笑)。

 すべての歌唱が終わり、集合写真をネモリーノの衣装のままで写って、楽屋に急いで戻って着替えて…打ち上げです。いやあ、打ち上げも楽しかった。先生方と、あれこれ興味深い話もたくさん出ましたが…酒の席での話をネットにアップするのは、野暮という奴ですから、止めておきます。

 それにしても、この門下の発表会も変わったなあ…と思いました。

 私が最初に、この門下の発表会を見た時は…当時は、ここに入門した直後だったので、発表会には参加せず、見学だけしていたのです。その当時は、三人の先生方の合同発表会で、Y先生の師匠筋にあたるK先生(今回のテノール歌手さんとは別人で、バリトン歌手さんでした)の門下生さんが一番多かったですね。そのK先生も亡くなり、門下は解散し、一部の方はY門下に移動しましたが、多くの方々は別の先生のところに移動してしまいました。つまり、発表会に出演していた顔ぶれがガラっと変わってしまったわけです。

 あの頃の発表会に出演していた方は、ほとんど皆さん、譜面台を舞台に持ち込んで、譜面をガッツリ見ながら歌っていました。つまり、暗譜は必須ではなく、むしろ楽譜を見ながら歌うのが標準スタイルだったんです。服装も、正装の方はほとんどいなくて、皆さん訪問着や外出着に毛の生えた程度の控えめな服装でした。もちろん、歌は皆さん、あの頃からお上手だったわけですが、F先生やY先生とデュエットをする人は…いないわけではなかったのですが…ほとんどの方がソロ曲を歌っていました。まあ、当時の男性の門下生さんと先生方は、皆バリトンでしたから、二重唱もソプラノとバリトンの二重唱になるわけで…そりゃあまあ、地味の曲ばかりだし、あまり歌われないよなあ…。

 それが今や、ほとんどの方が暗譜をして歌うし、ドレスも着て、いわゆる声楽発表会っぽい華やかなノリになってきたし、今回なんかは、門下生の方から「テノールとデュエットしたい」という声が上がって、プログラムの半分近くが、テノールとソプラノのデュエット曲(これがまた、名曲が多いんだ!)になってきたし…。なんか、色々と“…ぽくなってきた”と思います。

 色々な事が影響しあって、こうなってきたと思いますが、私は、これはこれで良い傾向だなあって思ってます。で、来年どうするか…なんて話がすでに出てますが、それが実現されたら、すごく楽しいなあって思ってます(まだ書かないよ:笑)。

 と言うわけで、また来年をお楽しみに(笑)。

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コメント

  1. おぷー より:

    お顔も姿も見えないけれど、楽しんで歌っておられるのがよく分かりましたよ。
    奥様の方が少し緊張されていた様な感じで、すとんさんは、その辺を
    少年の様に飛び跳ねておられたのでしょう。それも聞こえてきました。
    デュエット、うまく行って良かったですね。
    おめでとうございます!

  2. すとん より:

    おぷーさん

     うん、楽しかったですよ。やはり衣装を着けて、演技をしながら歌うのは、大好きです。『歌に感情を込める』のだって、棒立ちだとなかなか難しいですが、演技しながらだと、いとも簡単にできますからね。

     ただ、問題なのは、演技をしながら歌うと、小さな脳みその幾分かを演技に持って行かれてしまうので、歌詞が飛んだり、メロディーが道に迷ったりしますので、その点のリスクヘッジをしておかないと…今回の私のようになってしまうんだと思います。

     今回の二重唱は、今まで比べても、立ち稽古の量が圧倒的に不足していたので、それが響いたなあ…と反省しています。でも、楽しかったから、それで良い事にします。

    >おめでとうございます!

     ありがとうございます。

  3. アデーレ より:

    二重唱もいいですね!ご夫婦だけに息もピッタリかと。やはり、すとんさんの声は若々しいですね!なかなかトップテナーになれる可能性を秘めた美声かと。音程やフレージングがうまくいけば相当、いい感じ。世に上手く歌える方は沢山、いますが美声だけは別。神様からのおくりものですぞ、、羨ましいな。

  4. すとん より:

    アデーレさん

     技術は努力で身につけられますし、楽器も良い楽器に買い換えれば良いのですが、声楽の場合、楽器である声は神様からのプレゼントであって、気に入らないからと言って、交換できません。

     まあ、私の声が美声がどうかは議論の余地があると思いますが、私自身は、この声、結構気に入ってます。もうすこし、声の抜けが良くて、もうすこし、ねちっこくて密度が高くって、もうすこし、ギラギラしていると、より良いかなとも思いますが、贅沢は言わないことにします。

     大抵の人は、自分の声が気に入らないそうですが、私はそんな事はありません。

     このように「自分の声が好き」なんて、ナルシストのような発言を平気でしちゃう私は、やっぱりテノールなんだなって思います。これくらい自分大好きじゃないと、テノールなんて出来ませんからね(大笑)。

     ああ、それにしても、もっと歌がうまくなりたいです(切実な願い)。

  5. milky より:

    (笑)あの瓶、私は一切ピアノの心配はしておらず、手がすべって客席の方に飛んでくるのではないかとヒヤヒヤ思いましたよ~(汗)秋のコンサートも是非伺います♪

  6. すとん より:

    milkyさん

     ピアノにしろ、観客にしろ、ワインの瓶が飛んでいって、ぶつかったら、そりゃあ危ない。今回、どうやら私はやりすぎてしまったようですね、反省。

     あの、瓶を振り回すという動作は、当初の演技プランにはなくって、アドリブと言うか、私の中のネモリーノ君が勝手にやっちゃった動作なんですね。ちなみに、ワイン瓶を振り回す以外にも、ワイン瓶をギターに見立てて歌っちゃうとか、酔っ払ってクルクル回っちゃうなんかも、アドリブです。リハーサルでは…と言うか、予定では、全然違う動きをする事にしていたんですけれどね…いやあ、本番の舞台には何がいるか、分かりません。

    >秋のコンサートも是非伺います♪

     はい、よろしく。秋のコンサートは、アウェーのコンサートになるので、無名で確実な曲を歌う事にしていますので、今回とはまた趣きが変わってくると思います。あと、今回歌った二重唱をもう一回歌いますが、今度は、通常のオペラ劇場で歌われるバージョンで歌いたいと思ってます(長いよ)。

  7. wasabin より:

    発表会おめでとうございます。

    若々しい良いお声をお持ちですね。
    選曲も難しくなってこなされているのは、成長されてる証ではありませんか (*^^*)v

    私のお教室にすとんさんとそっくりなお声のテノールが居ます。
    同じく若々しい!
    私はふた月音楽から全く離れていて、、
    数日前に動画・音源入手; 一曲(マシな方)が上手くトリミング出来ません~~;

    秋の音源も期待してますね~。

  8. すとん より:

    wasabinさん

     まあ、テノールという種族は、声だけは若いんですよね(笑)。だから私も音源しかアップしないんです。だって、声だけなら若者っぽい私(それもイケメンっぽいでしょ?)ですが、ビデオでアップしたら、デブデブの河童ハゲのジジイだもん。リアルな姿は、とても他人様には見せられません。

    >秋の音源も期待してますね~。

     はい、ぜひアップできるように仕上げて歌いたいと思ってます。実は今からこっそりと選曲作業に取り掛かっていたりするんですけれどね(ふふふ)。

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