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本当に日本男子にはバリトンしかいないのか?

 「日本の男性はほとんどがバリトンで、女性のほとんどはソプラノである」とはよく聞く事です。でも、本当なのかなあ?と思う事があります。皆さんは、どう思われます?

 市民混声四部合唱団で見てみると、確かに女性はほとんどがソプラノです。そして、男性はテノールよりも圧倒的にバスが多くなります。ならば「日本の男性のほとんどはバスである」と言えるかもしれません。

 もっとも、合唱団には、普通、バリトンパートと言うのはありません。バリトンの人はバスパートを歌います。ですから、合唱をやっているバリトンの人は、普通はバスパートを歌い、バスと呼ばれます。つまり、合唱では、バスとバリトンは同一視されるわけです。

 合唱団おけるパート分けと言うのは、どのくらいの音域で歌えるかで決まります。合唱のパスパートは、音域的にはバスと言うよりも、バリトンの音域で書かれている事が多いですし、バスパートにいる人でも、音域を調べてみると、バスではなくて、バリトン寄りの人が多いので「日本の男性はほとんどがバリトンで、女性はソプラノである」は、やっぱり成り立つと言えます。

 まあ、もっと言っちゃえば、すべてではないけれど、多くの合唱曲は、テノールパートであっても、音域的には、バリトンでも歌えますので「日本の男性はほとんどバリトン」であっても、合唱団的には、何の問題もないわけです。上手くできているんですね。

 でもね、こういう事実を突きつけられても、私はなんか腑に落ちないんですよ。

 と言うのも「声種と言うのは、音域ではなく音色で決まるモノじゃないの?」って、私は考えるからです。

 同じ中央ドを発声しても、テノールとバリトンとバスでは、音色が違うでしょ? 女性なら、中央ドの一オクターブ上の音を発声した時に、ソプラノとメゾとアルトの音色が違うのはもちろん、同じソプラノでも、高いソプラノ(レッジェーロ系)と低いソプラノ(スピント系)では音色が違うでしょ? そういう音色の違いを大事にして、声種について考えるべきだと思うんです。だって、音域なんて、訓練次第でどうにでもなるでしょ?

 さて、そう考えた時、私は日本男子には、結構、テノールがいるんじゃないかって思うわけです。あくまで私の感覚なんですが、半分か、あるいは6:4ぐらいの割合でテノールがいるんじゃないかって思うのです、もちろん、テノールは“6”の方ね(笑)。

 「ええ? じゃあなんで、合唱団にはテノールよりもバス(バリトン)の方が人数が多いんだい?」

 それは簡単。合唱団では、音色ではなく音域で声種を決めているからです。

 バリトンの音域って、成人男性にとっては、無理なく楽な音域なんですよ。その点、テノールとかバスは、そうではありません。ちょっとばかり、無理をしないと出せない音があります。その無理な音を出すためには、訓練をしてテクニックを身につける必要があります。

 人は誰でも水に浮きますし、手足をバタバタさせれば、前に進むし、簡単な泳ぎも出来るでしょう。でも、スポーツとしての水泳をするために、訓練が必要だし、それぞれの泳ぎに必要なテクニックだって身につけなきゃいけません。歌も本来は同じ事なんです。誰でも声は出せるし、歌も歌えるだろうけれど、より美しく、より響く、より高い/低い声で、より大きな声で歌うためには、訓練が必要だし、テクニックが必要なんです。

 人間って、自分を磨かなければ、本来の自分の能力を十分に引き出す事のできない、不自由な生き物なんです。

 つまり、本来はテノールとかバスの声を持っている人でも、訓練が十分でなく、テクニック不足なら、音域的にはバリトンとほぼ同じなんです。

 だから、本物のバリトンも、上が出ないテノールも、下の出ないバスも、みかけ上はバリトンと同じなので、バリトン扱いされている…だけなんじゃないでしょうか?

 だから「日本の男性のほとんどはバリトン」って事になるんだと思います。

 だってね、合唱団に行って、バリトンの方と何気ないおしゃべりをしてみてください。案外、話し声は高めの人が多いよ。話し声は高いのに、歌いだすと、声を胸に押しつけたような響きで低い声で歌っている人って多いでしょ? きっと、楽に歌えば、高くて軽い声になってしまうから、わざわざ声を胸に押しつけているんだと思います。高くて軽い声なのに、本当に高い声は出ない…だからバリトンをやっている…なんて人、たくさんいると思いますよ。

 かく言う、私だって、音域だけ見れば、立派なバリトンだもの。でもね、どう考えても、音色はテノールだし、私の声を聞いた人は、皆、私の事をテノールだと言うわけだから、テノールなんだろうけれど、それにしては、高い声が苦手なので、苦労しているわけです。

 日本には、私のような“高音の苦手なテノール”なんて、履いて捨てるほどいるだろうし、そういう人が合唱団に行くと“バリトン”に分けられていくんだと思います。

 特に「あなたはハイ・バリトンですね」と言われた人は、本当に自分はバリトンなのか、それとも高い音の苦手なテノールなのか、真剣に悩んだ方がいいと思います。

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コメント

  1. EK より:

    また出てきてしまいました!EKです。

    女声側も事情は同じですよ~
    合唱でアルトに分類されている人のほとんどは、本当はソプラノだと思います。
    私自身がそうですし・・

    日本語は周波数の低い、いわゆるのど声で話せてしまう言葉なので、成人女性、特に声楽の訓練をしてこなかった成人女性にとって、出しやすい音域は、混声四部のアルトの音域なんだと思います。
    ソプラノの音域だと、ト音記号の一番上の線あたりにあるボイスチェンジをまたいで歌わないといけないので、訓練していない人だと上に行かれないことが多く、合唱団ではアルトに分類されてしまうのですね。

    男声でも、本当はテノールなのにバリトンに分類されてしまうと、響きを上に持っていくことが難しくなってしまったりすると思うのですが、女声でこういう目にあってしまうと、いつまでたってもボイスチェンジを克服できなかったり、酷い人だと地声でしか歌えなかったり、してしまうのですよ。
    女声で地声でしか歌えないと、全然声が飛ばないので、合唱団としては戦力にならないんですがね。。

    かくいう私は、音域自体がなぜか昔から広くて、低い音が出たせいでアルトに分類されていたのですが、個人的に訓練をし始めたらソプラノになってしまいました。
    私個人は、独唱では歌えるものが増えたし、何を歌っても歌いやすくなってうれしいのですが、合唱ではアルトパートの響きの低さが最近許せない、というか、一緒に歌っていても一人で歌っているような気がしてしまい、もう合唱は引退しようかと思う今日この頃です。
    合唱団としては、聞こえる低音が出るんならアルトに居て欲しいらしく、ソプラノに移らせてもらえそうにもないし・・

    うっかり向上心を持ってしまったせいで、合唱と付き合うのはかえって難しくなってしまいました。合唱の内声も好きなんですがね・・・

  2. すとん より:

    EKさん

     女声側も、色々と事情は複雑ですね。私が見ている範囲だと『歌の得意な人はアルトに、メロディしか歌えない人はソプラノに』って感じなので、歌の訓練をしている人がアルトに行き、素人さんはソプラノへ行くとばかり思ってました。

     まあ、ヴォイスチェンジは男女ともに大きな問題ですね。「男は上へ乗り越えられず、女は下へ乗り越えられず」と聞いていました。だからこそ、裏声でしか歌えない人がソプラノに溜まってしまうって思っていましたので、意外でした。

    >合唱ではアルトパートの響きの低さが最近許せない

     本来、低音歌手でない人たちがむりやり押さえつけて低音を出していれば、そりゃあ響きも低くなりますね。それは男声のバスパートも似たようなものです。

     合唱って、大勢で歌うから、素人でも参加できるような気がしますが、本当は決して、そんなモンじゃないんだなって思います。たぶん、マジメに合唱を始めると、ソロと同様に難しいんだろうなあって思いますが、そこまで難しさを要求する合唱団には呼ばれる事はないので、私には関係ありませんが(涙)。

  3. EK より:

    おお、私が所属している団だと『上のヴォイスチェンジが越えられる人はソプラノに、越えられない人はアルトに』って感じですよ!
    合唱団、というか指導者によって、どういう人をどのパートに配置するかって結構違うのかもしれませんね~

    そして、女声の下のヴォイスチェンジというのも、合唱になってしまうと埋もれてしまう音域だからか、うちの団ではあんまりうるさく言われないんですよね。
    もう女声の低音は聞こえてればいいって感じで。。
    すみません、半分愚痴ですね。

    素人ならではの?溶ける声ってのが合唱では良いんでしょうけど、なかなか使い分けられないですね。
    マジメな団(難しい団?)には私も縁がありませんので、そういう団ではどうなのかな~

  4. すとん より:

    EKさん

    >上のヴォイスチェンジが越えられる人はソプラノに、越えられない人はアルトに

     なるほど、それは言葉を替えていれば言えば「高音の出る人はソプラノに、出ない人はアルトに」って事でしょうね。私の認識では、女声は比較的『高音が得意なかわり、低音が苦手』な人が多いという感じなので、ソプラノばかりになってしまう…と思ってましたが、どうやらそうでもないのでしょうか?

     まあ、確かにソプラノと言えども、五線を越える音が苦手な人ってたくさんいますよね。その代わり、合唱曲の方でも、五線を越える音を使用しない曲ってたくさんありますから、上のヴォイスチェンジが越えられない人ばかりでも、市民合唱団を楽しむ事はできる…と思いますってか、そういう団もたくさんありますね。

     そういう点では、EKさんのおっしゃっているような団は、比較的難しい(マジメな)団体さんなんだろうと思います。

  5. EK より:

    確かに邦人作曲家の合唱曲だと、そんなにソプラノといっても高くない(精々G?)ですよね・・・男声にとっても、バスが低くなかったりするんでしょうかね?

    うちの団では後期ロマン派をやっているのですが、どのパートもヴォイスチェンジを超えられないと、ちょっと聞き苦しい仕上がりになってしまいますね。
    全員がちゃんと歌えなくてもいいんでしょうけど、3分の1くらいはちゃんと歌えないとちょっとね・・・

    うーん、団の実力に比較して選曲が難しいんですね、きっと。もう少しその辺考えた選曲にすればみんな歌いやすいんでしょうけど、それじゃ個人的にはつまらないかもですね・・・

  6. すとん より:

    EKさん

     後期ロマン派? いけませんよ、舶来モノは(笑)。半端無く難しいって。特にそのあたりの時代の曲は、たとえ合唱曲であっても、ソリスト並の声と歌唱力を要求してきますよ。合唱しかやっていない人の手に余る…でしょ?

     邦人作曲家の作品なら、女声は全員がメゾでも、男声は全員がバリトンでも、きちんと対応できるように作られているし、声量もいらないし、声も訓練されていない事を前提に書かれていますので、取り組みやすいですよ。それに決してつまらない曲ばかり…ってわけでもないです。テクニカルな曲も多くて、歌っていてつまらないという事もないみたいです。ただし、好みってのはありますがね。

     私は総じて邦人合唱曲というか、日本語の歌が苦手です(涙)。

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