声楽のレッスンに行ってきました。今回のレッスンが今年最後のレッスンでしたが、先生と私の予定がうまく合わず、なんと、私史上初の“おはようレッスン”になりました。
“おはようレッスン”とは…お教室に入る時に「おはようございま~す」と挨拶しながら入るレッスンの事で、ザックリ言えば、出勤前の午前中の時間に行うレッスンの事です。いやあ、私も先生も、そこしか時間が取れなかったんだから仕方ないです(汗)。
と言うわけで、朝日を浴びながら、先生のお宅にレッスンに向かった私でした。
しかし、朝一発目ってのは、声出ませんね(笑)。先生も「朝は声が出づらいものですよ」となぐさめてくださいます。
「しかし、朝の声の出づらい時間にレッスンを行う事で、朝から歌わなければいけない時の対処方法が学べるのだから、これもまた良いレッスンなんですよ」との事で、さっそく朝一発目から声を出して歌う方法を学びました。…なんて書くと、いかにも秘伝を教わったような書き方になってしまいますが、実際は秘伝でもなんでもなくて「声が出づらいのだから、日頃よりも一層、息の支えを注意深く行いましょう」って事です。
特に声が起きていない状態では、どれだけの圧力で空気を声帯に当てるかを、しっかりと意識しながら歌わないといけませんと言われました。声帯に当てる息は、少なくても声にならないのでダメだけれど、多すぎると声がすぐに割れるし、声帯をキズつけてしまうので、本当にちょうどいいところに、やや強めに息を当てて歌っていく事を意識してがら歌うわけです。
これが午後とか夜とかなら、十分に声帯もこなれているので、そこまで気を使う必要はないけれど、午前中とか朝とかに歌う場合は、準備体操無しで走るようなものだから、本当に気をつけないといけないのだそうです。
声帯も筋肉ですからね、いきなり無理やり動かすと壊れてしまうのです。
とにかく、そうやって、声帯に適切な圧力の息を丁寧に当てていくことで、声を目覚めさせるわけです。
特に私の場合は、日頃から声帯に当てる息の圧力が強め(で、ノドを鳴らそうとか、声を押してしまうとか)をしがちなので、より一層の注意が必要なんです。
とにかく「ノドは鳴らさない事」「必要以上に大きな声で歌わない事」「しかし声はしっかり支えて歌う事」「声よりも響きを優先して発声する事」を注意しないといけないのです。ううむ、Y先生のご指摘って、キング式発声法の真逆なんだよな…。
一度身についた、前の先生の歌い方(キング式発声法)の癖を取り除き、Y先生の教えてくださる発声方法に色々とテクニックを置き換えている最中の私です。「真っ白な紙に絵を書くならともかく、すでに書かれている絵を消しながら、新しい絵を書くようなレッスンをさせて、ご面倒をおかけしています」と言えば「どんな人にも癖はあります。声楽レッスンなんて、その癖を取り除いて、素直な発声法を思い出させるのが、目的なんですよ。だから気にすること無いです」との事です。ああ、有り難いです。
ちなみに先生の考える理想的な発声は、生まれたての赤ちゃんの発声なんだそうです。
確かに、生まれたての赤ちゃんには、何の癖もなく、ただ本能のままに泣いている(発声している)わけで、あの小さなカラダの割には実に立派な声で泣くわけで、あれが理想と言われれば「ああ、そうなんだ」と納得せざるをえません。あそこから今日に至るまでの間に、色々と身についた悪癖を取り除くのが、声楽レッスンの目的なんです…って、なんかカッコいい物言いだなあって思いました。
赤ちゃんの発声が理想…そりゃあ近いようで遠いゴールだなあ。つまり、自分の原点に戻れって事でもあるわけで、発声ってのは、誰かのマネをするわけでもなければ、何かの理想形に当てはめるのでもなく、とにかく、自分にとって素直な声で歌うのが一番って事になるわけです。うむ、深い。
今回は、朝一発目の発声で注意する事以外にも、オでまとめた発声法の練習とか、上アゴを開けた発声法とかをやりました。特に上アゴを開けるには、げんこつを食べると良いというので、一生懸命にげんこつを食べてみました。
げんこつを食べる…と言うのは、もちろん比喩であって、手軽に上アゴを開けるための導入動作の事で、げんこつを食べて、上アゴを開ける感覚を覚えましょうって事です。やり方としては、下アゴを動かさずに(ゲンコツを食べるために)クチを縦に開けていく事です。ちなみに、ゲンコツは横ではなく縦にします(笑)。とにかく、下アゴを固定したまま、クチをドンドン大きく開いていくと、自然と上アゴが開いていくって事なんです。そして上アゴを最大限に開くと、吐き気がします(笑)。でも、吐き気がして正解なんだそうです。クチを大きく開くと、嘔吐反応が起こるのが正常な人間なんだそうです。だから、吐き気がするくらいクチを開ければOKなんですが…だからと言って、吐いてはいけないのは当然の話です。
そうそう。今回のレッスンの中で、私が発声していると、先生が「そういう発声方法は、すとんさんには無理だよ、そこまで声は軽くないからね…」と言われました。「あれ? 私の声は軽くないですか? 前の先生にはレッジェーロからリリコぐらいのテノールだって言われたんですよ」と答えたところ「レッジェーロからリリコとは、だいぶ広いですね」と苦笑されていました。
Y先生がおっしゃるには、今は声種については考えない方が良いとの事です。と言うのも、私はまだ本格的な声楽のレッスンを受け始めて、わずか1年程度で、まだまだ日が浅いので、これからどんどん声が変わっていくわけだから、今の段階で声にレッテルを貼っても、やがて変わってしまうだろうから、まだ「自分の声は○○である」と考えなくても良いでしょうとの事です。
ただ、そうは言っても、私がテノールである事は、間違いないわけだし、先生がおっしゃるにはHi-Cも出せるノドを持っているから、ドラマティコって事にはならないでしょう、との事です。と言うのも、将来ドラマティコになるテノールだったら、今の段階で、もっともっと高音に苦労しているはずだから…なんだそうです。
ちなみにドラマティコの場合、きちんと声が完成しても、Hi-Cには苦労する方が多いのだそうです(つまり、テノールだけれど高音に苦労するんですね。もちろんドラマティコなのにHi-Cを平気で出しちゃう人もいますが…)。私のような未完成な声でも、すでにHi-Cの片鱗(?)を見せるような声(私の場合、かなりの高音適性があるそうで、Hi-Cはもちろん、もっと上まで出せますよ、と先生から太鼓判をいただいてます。しかし、ほんとにそんな高音を出せるようになるのかな?)では、ドラマティコのような重い声で歌うのは無理なんだそうです。
もちろん、ドラマティコが無理なんだから、さらに重い声が要求されるバリトンなんて、無理も無理の絶対無理なんだそうです。ああ、バリトンに転向しなくてよかった(安心)。
今の段階では、素直に発声を学んでいけば、やがてリリコか、もしかするとスピントになるでしょう…との話でした。
「あれ? レッジェーロはどこに行きましたか」と尋ねたら、今の私なら、もちろん訓練次第ではレッジェーロにもなれるだろうけれど、レッジェーロになるなら、今のレッスンのやり方を根本から変えないといけないし、日本の(特にアマチュアの)テノールは、ほとんどレッジェーロなので、あえて競争の激しいところに行く必要もないだろうから、今は、テノールとしての王道であるリリコあたりになれるように、レッスンをしているのだそうです。と言うのも、リリコとレッジェーロではレッスンの組み立て方が全然違うそうですし、特に私の場合、レッジェーロ向けの発声を試みると、どうしても息の支えが不足しがちでヘロヘロな声になってしまうそうで、しっかりと息で声を支えさせるとリリコっぽい声、つまりテノールとして軽くもなければ、重くもない声になるんだそうです。
と言うわけで、先生としても色々と悩みながら、とりあえず今の私にはリリコ向けのレッスンをしているのだそうです。
ほお、するってえと、私はリリック・テノール向けのレッスンを受けているわけで、レッジェーロとはレッスン方法が違うので、私にはレッジェーロへの道は今は無い…って事になるわけです。
自分では自分の事をレッジェーロだと思っていたので、ちょっとビックリです。しかしまあ、レッジェーロよりもリリコの方が歌える歌も多いし、オペラアリアやミュージカルソングを歌うなら、レッジェーロよりもリリコの方が何かと便利だよね。レッジェーロだと歌える曲が、宗教曲とか歌曲がメインになってしまうから、オペラ大好きな私にとっては、願ったり叶ったりって感じかな。
とは言え、今はそのリリコですら考えずに、ただひたすらに自分に素直な声で歌う事だけを考えていけばいいのだそうです。とにかく前進するんです。前に進む事で自然と道は切り開かれるわけですからね。
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コメント
こんばんは。
テノールという声楽業界は詳しくないので、手ごろなwikiに基づいて書いています。wikiの記載がどの程度アタリか、ハズレか判断できませんが記載そのものはおもしろかったので、これに基づいて書きます。プロの方が読むと、笑って読めないかもしれません。
http://en.wikipedia.org/wiki/Tenor
> 日本の(特にアマチュアの)テノールは、ほとんどレッジェーロなので、
レッジェーロはロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニあたりで、アリア自体の記憶があまりありません。それほど多いのか、と不思議なくらいです。
リリックでは、アルフレッド、ピンカートン、ロドルフォあたりのアリアは好きです。
ドン・ホセ、カラフ、カヴァラドッシは大好きですがスピントの分類です。自分で書いていて違いがほとんどわからい程度で、声質より時代の違い、とか思ってしまいました。
相変わらずの変な話題で失礼しました。
tetsuさん
日本のテノール、とりわけアマチュアを念頭に置いた場合、そのほとんどは合唱団にいるテノールの事を指しているんだろうと思うし、私も先生との会話の中では、それを思い浮かべました。
確かに、市民合唱団にいるテノールさんたち、特に、お上手な方々は、リリコと言うよりも、レッジェーロっぽいと思います。ただ、リリコは純粋に声質の事を言いますが、レッジェーロの場合、声質だけでなくテクニックまで含んで言う事がある(女性の場合に、コロラトゥーラに似た感じかも)ので、彼らを指して“レッジェーロです”と断言は出来ないのですが…。
>レッジェーロはロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニあたりで、アリア自体の記憶があまりありません。
おっしゃる通り、レッジェーロだとオペラアリアにしても、そのあたりの作曲家のモノにどうしてもなってしまいますし、そのあたりの作曲家の作品は、とても面白いものもたくさんあるのですが、どうもポピュラリティーというか、人気に欠けるキライがあります。人気のあるヴェルディとかプッチーニなどは、リリコ~スピント系が多いですね。
>声質より時代の違い、とか思ってしまいました。
実はあながち間違ってませんよ。時代がこちらに近づくほどに、必要とされるテノールの声は重くなっていくのです。
私が最近取り組んでいるプッチーニなどのテノールは、リリコ・スピントという声種のための曲がほとんどです。だから、ここによくコメントをくださるおぷーさんが「トスカを歌っちゃダメ」とおっしゃるのも、実は筋が通っている話で、これらの曲は、本来、私には重すぎる曲なんですよ。ま、だからなるべく軽く歌おうとしているわけなんですよ。