さて、今回の記事は、妻のレッスンを見て、色々と考えた事などを書きます。なにしろ、妻のレッスンをしっかり見るのも、私のレッスンの一部なんです。
妻の発声練習では、彼女にとって、長年の問題である『ガリッとする』を直してもらっていました。
『ガリッとする』と言うのは、何度も彼女から話を聞いているのですが、私には今一つピンと来ない症状なんです。高い声で頑張って歌った後に、下降音形を歌うと、しばしばノドが“ガリっとする”のだそうです。チェンジがうまく越えられないんじゃないの?と私は思ってましたが、どうもそれとも違うようなんです。
キング先生に習っていた時も、妻は散々、どうしたら良いのかと先生に相談してましたし、先生もまた「今、ガリっとしたでしょ?」と、歌っている時にガリッと来ると、それを指摘していましたので、問題を把握していたようですが、取り立てて、どうすれば良いかというアドヴァイスもなく「ガリっとしないように歌ってください」とよく妻に言ってました。「ガリッとしないように歌いたいけれど、それをどうしたら良いのか分からないのに、ガリっとしないように歌えってくれって、どうすればいいの?」と、妻はよくレッスンの後にグチってましたね。
今回のレッスンでも、発声練習の時にガリッと来たようで、妻はその事を先生に訴えました。先生は一瞬『ガリッ?』って顔をされましたが、すぐに合点がいった様で、妻の姿勢を直し始めました。そうすると、ガリッと言わなくなったそうです。
どうも、ガリッと言うのは、呼吸と支えに問題があったようで、その大元は、気のユルみが原因のようです。高くて大変なところを歌った後(無意識でしょうが)気がユルみ、それで腹式呼吸が崩れ、支えがおかしくなって、ガリッとなってしまうようなんです。
ですから、まずは『歌っている時は気をユルめない事』が大切で、常に腹式呼吸で歌うように気をつける事が処方箋です。腹式呼吸がしっかり出来ていれば、声の支えもできて、ガリッとする事はなくなる…というわけらしいのです。
とりあえず、妻は、腹式呼吸がちょっとばかり苦手なようなので、そこのところが目下の弱点のようなんです。今回も、腹式呼吸の確認をやってましたよ。
さて、妻もクラシックコンサートで2曲歌います。1曲目は“O mio babbino caro/私のお父さん”です。「Superiore 難しい曲ですね」と今回も言われておりました(笑)。
妻も歌い終わると「大変そうですね。お疲れになったでしょう」と私と同じような事を言われていました。妻も、歌うときは、気合の入れすぎだそうです。それで疲れて、気が抜けると、すぐに胸式呼吸になって、ノド声になってしまうのだそうです。妻は妻で、大変です。
そうそう、歌う時、いちいち眉を上げない様にと、注意されていました。
アクロバット・ブレスも注意されていました。夫婦揃って、ブレスが下手って言われましたよ(笑)。でも、そんなブレスがあるなんて、知らなかったんだから、仕方ないじゃない(って開き直っちゃダメだね)。
妻が歌うと、あまりプッチーニに聞こえないのだそうです。どうも、楽譜どおりにクリアに歌っているのがダメなんだそうです。プッチーニの曲を歌う時は、プッチーニの歌い方と言うのがあって、それは楽譜に書かれていないけれど、要所要所に軽くポルタメントを入れる事がプッチーニらしさなんだそうです。そして、そのポルタメントは、お客さんに「あ、ポルタメントだ!」と分かるようでは掛け過ぎなんだそうです。歌い手だけが心がけておくポルタメントを所々に掛けていくと、プッチーニらしく歌えるのだそうで、どの部分にポルタメントを掛けるべきか教わってました。
歌には、様式とかスタイルって奴があるので、単に五線譜どおり歌えばいいってもんじゃないようです。
「L’alba separa dalla luce l’ombra/暁は光りから」は「この曲、ピアノが難しいんだよねえ。声楽家で完璧にピアノが弾ける人っているのかしら…」とグチりながらレッスンしてました。先生、グチっている割には、結構、しっかりとピアノ弾いてましたが…。
この曲は「気合とか覚悟とかはいらないから、楽に歌って」と歌い始める前に注意されていましたよ(笑)。長い音符は最後までしっかり歌うのではなく、音符の終わりは息を混ぜて、息を吐きながら歌うように注意されていました。うん、それって、トスティらしく歌うコツかしら?
「歌って、一生懸命になって歌うほど、ダメになるんです」だそうです。そうか、それなんだね。先生は私にも妻にも「楽に、楽に」と言います。もちろん、楽にするのは上半身だけで、下半身は楽しちゃいけないのですが、とにかく楽に歌うことをよく注意されます。それほど、我々夫婦は、全力で歌ってしまうので、ダメなんです。
高い音を出す時、妻はややクチを横開きにしてしまいますので、それを注意されていました。高い音を出す時は、クチは必ず縦開きにする必要があるそうです。もちろん、ノドを下げる必要もありますが、ソプラノはテノールほどは、ノドを下げる事に気をつけなくていいそうです。その代わり、クチを縦に開くと、息が減ってしまうので、その分、きちんと息を流しながら歌うようにしなさいと言われていました。
とにかく、私も妻も、ノドを使い過ぎるのだそうです。
ちなみに、ポップスとクラシックの違いは、発声の際に、ノドを使うか使わないかなんだそうです。で、クラシック発声の場合は、ノドをほとんど使わずに発声をするのだそうです。つまり、我々は、かなりポップス寄りの発声スタイルって事ですね。
「ノドを使って歌うと、疲れるし、声量も不足します。でも、マイクを使って歌うなら、最初から小さな声で歌えばいいのだから、それほど疲れないのですよ」とおっしゃってました。クラシック発声では、ノドを使わない分、しっかりと息をお腹で支えてないといけないのです。マイクを使わない分、響きを豊かに歌わないといけないのだそうです。
ノド声は、お腹の支えのない声なんだそうです。息をお腹で支えられないから、ノドで支えて、声にしてしまいます。これがノド声なんです。
つまり、我々がノド声で歌ってしまうのは、呼吸が下手って事の証明なんです。呼吸が下手だから、お腹で声を支えられずに、ノドで声を支えてしまうのです。
ブレスはきちんと計画的に準備良くする事。息は雪ダルマを作るように、回しながら大きくして、高音にチャレンジする事。
私と同じような事を注意されていたり、私にはない注意をされていたり、妻のレッスンも充実しているようです。
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