2006年に発売された「ラブ」は、ビートルズ初のマッシュアップアルバムですが、これを主として製作したのが、ジョージ・マーティンの息子であり、現在のビートルズ音源をプロデュースしている、ジャイルズ・マーティンです。この「ラブ」は当時、会社から「ジョージ・マーティンの息子とは言え、本当にビートルズの音源を任せていいのだろうか？」と思われ、オーディション代わりに制作を依頼されたそうです。で、見事、期待に答えて、素晴らしい作品を仕上げたわけです。実際、このアルバムはなかなか良いですよ。まあ、実際のところは、親父のジョージ・マーティンも製作に加わり、だいぶしごかれながら製作したそうなのですが…。ちなみに「ラブ」に収録されている「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」のストリングス・パートはジョージ・マーティンの最後の仕事になるそうです。
次にジャイルズが取り掛かったのは、2000年に発売された「ザ・ビートルズ1」の改訂盤 「ザ・ビートルズ1+」です。これは2015年に発売されましたが、CDのみならずDVDと一緒に販売されていました。なので、私はもっぱらDVDばかりを再生して、CDは再生していませんでした。いやあ、当時の私は、ミックス違いというものに、あまり興味を持っていなかったのです。
その後、ジャイルズは「サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を始め、後期のアルバムを中心にリミック盤を出していましたが、「ザ・ビートルズ1+」同様、リミックスに関心がなかった私は、それらをロクに聴くすらしていませんでした。
そんな私がジャイルズのリミックスに注目したのは、通称ホワイトアルバムと呼ばれる「ザ・ビートルズ」のリミックス盤です。このアルバムには、オリジナルアルバムの新しいミックスだけでなく、おまけとして「アッシャーデモ」と呼ばれる、デモ録音集が付いていたのです。私は「アッシャーデモ」をまとまった形で持っていなかったので、こいつには飛びついたわけです。
「アッシャーデモ」目当てで購入した「ザ・ビートルズ」でしたが、おまけだけでなく、本編の方も聞いてみたところ…いやいやいや、なんか違うんですよ。単純にリミックスしたわけではなく、きちんと今の時代のサウンドになっているわけで、旧来のファンの立ち位置からすると「これは違うんじゃない？」と思わないでもないけれど、私は私なりに「これはこれでアリだな…ってか、これからはこれでいいんじゃね？」と思ったほどです。そんなわけで、おまけだけでなく、本編のアルバムの方もヘビーローテーションしているうちに、ジャイルズ・マーティンに骨抜きにされてしまったわけです。
いやあ、ジャイルズのリミックス盤、なかなか良いのですよ。イヤホーンで聴くと、特に素晴らしいのです。おそらく、旧来のミックスがスピーカーで聴くことを前提にしていたとしたら、ジャイルズのリミックスはイヤホーンで聴くことを前提にしているのではないか、そんなふうに感じたほどです。
ここから、旧来のファン向けには2009年発売のアルバムを、新しい世代に向けては、ジャイルズ・マーティンが作るリミックスアルバムを…という流れになったと思いますし、私自身は旧来のファンですが、だいぶ前から音楽はイヤホーンで聴くのが普通になってきたので、ジャイルズの新しいリミックスが楽しみになりました。
「ザ・ビートルズ」でビックリした私は、すぐに、それ以外のリミックス済みアルバムを購入して、ウフウフしていたのです。
そして、昨年の2023年に、最新デミックス技術を用いて「リヴォルバー」のリミックスが行われ、またまたビックリした私です。デミックス、すごいよ。
で、今年2024年は、赤盤が最新デミックス技術で登場しました。いやあ、これはすごいね。新曲「Now and Then」の感動なんて、どっかに飛んでいってしまうくらいのすごさです。いやあ、ほんとすごいのよ。音色は1960年代の音なのに、音質は今の時代の標準程度に磨かれているし、何と言ってもリアルステレオサウンドになっていて、まるで1960年代のビートルズが、すぐ目の前で演奏しているような錯覚に陥るほどの素晴らしいです。これは、万人にお薦めしちゃうほど素晴らしいアルバムです。
ちなみに、青盤の方は、デミックス以前のリミックが大半で、まあ、すごいと言えばすごいのだけれど、赤盤を聞いた時ほどの感動は、正直、無かったかな？ 音質もだいぶ良くなっているけれど、やはり青盤は「Now and Then」のためのアルバムだと言ってもいいかもしれません。
こうなると「次はどう来る？」と思うわけです。おそらくは「ラバーソウル」のデミックス＆リミックスになるのだろうけれど、個人的には、それよりも先に、初期４枚のアルバムを優先して欲しい気がしますし、何と言っても、「ザ・ビートルズ・ライブ！ アット・ザ・BBC」のデミックス＆リミックス盤が出てきたら、もう感涙モノですよ。
そんなわけで、まだまだビートルズファンは辞められないのです。
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