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低い音域で歌うのは簡単な事である?

 低声の人たちから誤解されそうなので注釈しておくと、低い声で歌う事が簡単なのではなく、高い音を回避する事で、歌唱の難易度はだいぶ下がるという意味です。つまり“その人の音域の中では”高い音域で歌うよりも低い音域で歌う方が簡単である…というふうに理解してください。なので、低声の人たちが、人の限界近い超低音域で歌う事が簡単であるなんて、そんな事は少しも考えていません。低声の人が歌う低音域は、やっぱり難しいのです。

 さて本題です。

 器楽用の楽譜には簡易譜というのがあります。同じ曲でも、その楽器が得意な人向けの楽譜(普通の)楽譜と、苦手だったり初心者だったり技量が足りない人向けに、音符の数を減らして、少ない手数でもそれなりに聞こえるように編曲した簡易譜というのがあります。私がピアノを演奏する時などは、普通の譜面では絶対に無理なので、簡易譜で演奏します…ってか、簡易譜じゃないと弾けません(笑)。

 器楽の世界には有る簡易譜ですが、声楽の世界には簡易譜というのはありません。その代わり、音域別の楽譜がありますので、自分の本来の声よりも低めに編曲された楽譜を使う事で、高音域を回避し、比較的容易に歌うことができます。つまり、低めのキイの楽譜を選択する事で簡易譜の代わりにするわけです。私が「水車小屋の娘」を勉強する時に、テノールなのにバリトン向けの中声譜を使って学んだのが、その良い例だと思います。

 ではなぜ、低めの編曲の譜で歌うと簡単なのか? それは…高音を回避できるからです。たいていの人にとって、高音域で歌う事は、低音域で歌うよりも難しいからです。だから、高音域を回避すれば、その分だけで歌唱の難易度が下がるわけです。

 実際、日本のJ-POPやアイドルソングって、一部を除いて、かなり低いキイで書かれています。それはオリジナルを歌っている歌手たちの歌唱力に合わせると、どうしてもキイが低めにならざるをえないからで、当然、それらの曲は低い音域で歌えるので、カラオケ等では容易に歌えます。あるいは、それでもまだ難しかったら、カラオケの場合は、さらにキイを下げれば、さらに容易に歌えます。

 かように歌というものは、高音域を回避する事で、歌唱をより容易にできるわけです。逆に高音を駆使しなければ歌えない歌は、一般的に「難しい歌」として認識されるわけです。

 実際、高音発声って難しいからね。市民合唱団あたりだと、本来の声ならテノールを歌うべき人でも、高音が出せないためにバスを歌っている人って、ゴロゴロいるのは、そういうわけなのです。テノールの声の人がバスなんて歌えるはずはないのだけれど、高音って出せないのが自覚できるけれど、低音って、ちゃんと歌えていなくても歌えた気になるらしいのですね。音程が低くなるほど音程感ってあやふやになりがちだからね。

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