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メトのライブビューイングで「カルメン」を見てきた

 今年、たぶん初めてのオペラを映画で見てきました。ほんと、久しぶりです。今、妻が病気で、白血球の値が低くて人混みの中に出かけられないので、生の音楽会は避けていました。ほんと、残念。でも、人混みでなければ全然オーケーなので、スカスカの映画館等にはよく出かけます。映画館までは徒歩で行ったり、スカスカのバスに乗って行ったり…と、徹底的に人混みを避けた行動をしているわけなのですが(笑)。

 メトのライブビューイング等は映画館オペラなので、上映さえしてくれれば、足繁く通いたいのですが、今シーズンのラインナップは正直…あまり興味を惹くものではないのですよね…残念。なので、ようやく今年始めてのオペラ鑑賞となったわけです。

 今回のキャスト&スタッフを書きます。

 指揮:ダニエレ・ルスティオーニ
 演出:キャリー・クラックネル

 カルメン:アイグル・アクトメチナ(メゾソプラノ)
 ドン・ホセ:ピョートル・ペチャワ(テノール)
 ミカエラ:エンジェル・ブルー(ソプラノ)
 エスカミーリョ:カイル・ケテルセン(バスバリトン)
 スニガ:ウェイ・ウー(バス)
 フランスキータ:シドニー・マンカソーラ(ソプラノ)
 メルセデス:プリアナ・ハンター(メゾソプラノ)

 演出は、最近のメトでしばしば見られる“現代アメリカのどこかの地方都市”という設定で行われる、読み替え演出です。出演者たちは、スマホを持って、刺青入れて、タバコ吸いまくって、ビールを飲みまくって…という感じで、確かに“現代アメリカのどこかの地方都市”ですね。ほんと、そんな感じ。下品で野蛮な感じです。いかにも治安が悪そうです。

 演劇として見た場合は、なかなか面白いです。うん、なかなか良い感じです。音楽として聞いた場合も水準以上の出来で文句はありません。ただ、オペラとして見た場合は“なんか違う感”しかないので、今回の上演はオペラ通以外の方にはお薦めしません。この上演はカルメンだけれどカルメンではないので、いわゆるオペラ「カルメン」とは別物として見た方が良いです。まあ、マンガ原作とドラマ以上に違っています(笑)。

 特筆するべきは主役のアクトメチナでしょうね。まだ27歳だそうだけれど、実に達者で有能なオペラ歌手です。この名前は覚えておくべきでしょうね。素晴らしいですよ。後のキャストも、テノールのペチャワ以外は若手が揃っていて、良い感じです。ただし、私はミカエラをやったブルーだけはミスキャストだと思いました。彼女の存在が、この音楽劇を壊していると思いました。

 彼女、デブな黒人女なんですよ。最初「ミカエラがデブな黒人女?」って感じで、他のキャストがなんだかんだと言いながら役にハマっているのに、この歌手だけが役にハマっていなくて、見ていて苦しかったです。ほんと、ミスキャストって感じです。

 おそらくポリコレ的配慮から黒人をミカエラにキャスティングしたのでしょうが、ほんと、台無しです。ほんと、ボリコレって、今のアメリカのエンタメをつまらなくしていますね。

 とポリコレ批判をしがちですが、スニガは中国人キャストに振られていましたが、これは全然問題ないです。しっかりウーはスニガを違和感無くやっていました。そう考えると…おそらくミカエラを黒人ソプラノが歌っても、問題無かったかもしれません。じゃあ、ポリコレが悪いわけではない?

 例えば…と色々な黒人ソプラノで考えてみたところ、あれあれ、ミカエラを黒人ソプラノがやっても実際、問題ないかも…って思いました。だって設定が現代アメリカだもの…ミカエラ…つまり“田舎の小娘”がデブな黒人女でも問題ないよね。いやむしろ、デブな黒人女の方が、今のアメリカっぽいかもしれません。

 なら、なぜ私はブルーのミカエラに違和感を感じたのか? はっきり書いちゃうと、彼女は全然ミカエラではないと感じてしまったのです。直感的に「この人はミカエラではない」と感じたわけで、つまり…ブルーの演技力に問題がある?って事なのかもしれません。

 そうなると、ポリコレで黒人キャストを採用した事が問題…ではなく、ポリコレで黒人キャストを採用しようとしたために適切な歌手をキャスティングできなかった事が問題なのだと思います。あれ? やっぱりポリコレがダメなんじゃん。

 そんなわけで、この上演はミカエラのミスキャストだけが不満で、それ以外は音楽劇としては、なかなか面白かったです。ですから…あまりお薦めはできないかな? うん、オペラとしては、残念な出来でした。

 それにしても現代に設定を置き換えると分かるのは、カルメンってヤペー女なんだなあと言う事と、ホセってクズな野郎なんだなって事です。やべー女とクズ男が痴話喧嘩した挙げ句に殺人事件になっちゃうという、なんともしょーもない話だと言うことです。いやあ、あんまりリアルにしちゃうと、あれこれイヤになっちゃうねえ。

 あと、これはネタバレになるかもしれませんが、今回のカルメンの殺害方法にびっくりしました。今までカルメンって、大抵、ナイフで刺殺される事が多く、現代演出だと、それが銃殺に変わる事もありましたが、今回は“バットで殴打”です。何とも、感情の高まりで偶然殺しちゃったみたいな感じで、クズ野郎がやりそうな手口だったので、見ていて、何とも胸糞悪かったです。

 なんか、もう「いいや、カルメンは…」って感じになりました。ほんと、全くお薦めしません。オペラは…もっと夢々しい方が私の趣味だなあ。

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