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ラ・フォル・ジュルネに行く前に、アルタスフルートフェアに参加しました その2

 フルートは正しく組み立てれば、音合わせの必要がないほど、正しい音が出る。出ないのは、演奏者が正しい音で演奏をしないから。話はここまで進みました。

 ハーモニックスの整合性が取れるようにフルートを組み立て、頭部管をかなり内向きに組み立てれば、それでOKなはずですが、現実問題として、それでは音が高くなってしまう人が大勢いるのは事実、それはなぜでしょうか?

 それは「息が強すぎるから」なんだそうです。大きな音を求めるあまり、息を強く吹き込んでしまい、結果として、間違った音となって、ピッチがうわずるんだそうです。でも、フルートはそんな強い息で鳴らすようには作っていないという話です。

 では、どれくらいの息が必要なのか。私たちは一人一人、田中会長に確認してもらいましたが…実はかなり弱々しい息でないとダメでした。私的には「え、これでいいの?」って感じでした。おそらく、ろうそくに向けて息を吹きかけたら、炎はやさしく揺れるかな? だけど絶対に消せない…そんな程度の息の強さでした。意外でした。かなりと言うか、とっても弱めの息で十分みたいです。

 え、こんなので、フルートが鳴るの? やってみたら、ちゃんと鳴りました。それもかなりキレイな音で(汗)。第1オクターブはもちろんですが、第2オクターブも第3オクターブもです。ただし、ちょっとコツが必要です。高い音になるほどに、息の強さを変えずに、ただ口の中をドンドン縦開きにしていくのがコツです。これで楽にキレイな音が出るんですよ。…とは言え、むしろ、そんな弱々しい息をキープし続けるもの、かえってシンドイ話だと思いました。

 さらに田中会長が言われました「息がちょっとでも、ほら、感じるでしょう。フルートが鳴っている事を」…確かにそうなんですよ。息はちょっとしか使っていないのに、フルートそのものが、ブルブル震えているんですよ。まるでヴァイブレーターが仕込まれているかのように。優しく息を吹き込んであげることで、フルートが自由に鳴り出すんですね。だから、息は弱くても、管体が鳴るので、大きな音が出るんですよ。

 これを自分のモノにできたら、フルート演奏がすごく楽になるだろうなあ…。

 とにかく、息の強さをとても弱めにする事で、音のうわずりは防げるし、適切な音量が得られるのです。不思議です。でも、そういうふうに作ってあるなら、そんなもんなんでしょうね。

 さて、では、今度は逆に、音のぶら下がりを防ぐためには、息を強めればいいのか? それは違うのだそうです。息は絶対に強くしてはいけないのです。

 音のぶら下がりを防ぐには、音の吹き込み角度をより上向きにする事(つまり、アゴを前に出していきます)で、ピッチをあげて演奏する事ができるそうです。そのために歌口は内向きにして、音の吹き込み角度をあげるための遊びをたくさん用意しておくわけです。さらに、歌口と口の距離が近ければ、息の方向をほんのちょっと変えるだけで、音程がうんと動くので、演奏するのに有利になるからだそうです。

 多くの奏者は、Aの音の運指をすればAの音が出ると思い込んでいるけれど、それは大いなる勘違いであって、フルートの場合、Aの運指は単に「Aに近い音を得るための運指」であって、その近い音をそのものズバリの音にするためには、奏者側で調整する必要があるのです。その調整を楽にするためにも、フルート自体の組み立てをきちんと行い、倍音の整合性がきちんとしているべきなんだそうです。

 このようにフルートは、息の強さと吹き込み角度で正しい音を得るわけであって、決して、頭部管の抜き差しで音合わせをするものではないのだそうです。

 では、何のために頭部管の抜き差しを行うのか? それは、管体の温度でハーモニックの整合性が変わってくるので、それを合わせるために抜き差しをするのだそうです。つまり、演奏場所の室温変化に対応するため、もしくは、演奏をしているうちに管体の温度が上昇してくるのに対応するため、なんですね。なので、演奏しながら、管体が暖まるにつれ、頭部管を抜いていくものなんだそうです。知りませんでした。

 さて、フルートの組み立て方と息の入れ方を確認したら、今度はフルートの構え方です。

 まず、立ち上がる(笑)。そして右足のかかとに体重を載せ、左足は軽く前に投げ出す。つまり「休め!」のような体勢でフルートを演奏するわけです、ほぼ、一本足打法ですね(笑)。

 耳の穴と鼻の穴を結ぶ線が地面と並行になるように、頭の位置を調整します。これは演奏者自身の感覚では、やや上向きなんですが、端から見ると、真っ直ぐになっています。目線は常に上を向いて(口内を上に引っ張りあげるのが目的と思われます)、クチビルの端は、極々軽く横に引いて、しかし、クチビルの中心は脱力気味にして、少し外側にめくる感じにしておく。そこへフルートを当てたら、グイっと下に押し下げる。その時、フルートのキイカップの面と地面が並行になるように気をつけるのだそうです。分かりますか?

 気持ちは、フルーティストではなく、声楽家になった気分でいくそうです。声楽家が、ハッピーな歌を歌っている気分で、フルートを吹くと、ちょうど良いそうです。

 間違っても、下を向いてフルートを吹いてはいけないそうですよ。

 フルートの場合、演奏直前の“いわゆる”音出しというものは不要なんだそうです。だからと言って、何もせずに舞台にあがるのもダメ。最低限の楽器のチェックをしてから演奏するようにしましょうという話になりました。

 それで、その最低限の楽器のチェックのやり方。フルートを正しく組み立て、正しい演奏姿勢をする。そして、まずは、弱い息で第一オクターブのHを吹いてみる。良い音が出たら、半音ずつ下がってソノリテをやって、全部の音が出る事を確認する。これが第一段階なんだそうです。次は、第1オクターブのHから順に下がって、H -> G -> E と吹いてみる。その時、息や音色が変わっていないかをチェックする。次は、低音Eの運指のまま、低音E -> 中音E -> 高音E -> (運指をHにして、ハーモニックを使って)高音E を演奏してみて、息や音色や音を変えずに演奏できるかを確認する。これで、楽器のチェックは終わりです。ここまでやったら、あとはステージの温度変化に気をつけるくらいで、演奏前の準備としては、このくらいで、なんとかなるのだそうです。

 で、ここからが演奏編。倍音のコントロールの話になりましたが、それはまた明日です。うわー、一体、いつになったら、話は東京国際フォーラムでの演奏の話になるんだろ(汗)。

コメント

  1. ひょっとこ より:

    次のステップに乗ったようですね。

  2. すとん より:

    >ひょっとこさん

     ありがとうございます。この講演会で学んで、私の中で、意図的に変えた部分と無意識レベルで変化があった部分があります。よくよく考えてみれば、日頃のレッスンで笛先生に言われていることと同じ事だったりしますが(汗)、人と場所と言葉と切り口が違うだけで、すっと自分の中に入ってきたり、心の中に刻み込まれたりします。おもしろいものです。

     ああ、そうそう、レッスンは日常だけれど、この手のイベントは非日常だから、そういう違いもありますね。良いところをきちんと吸収して、それを日頃のレッスン成果に反映させたいものです。

     まずはとにかく、省エネ奏法を身に付ける事が先決だな。

  3. およね より:

    いつもROMってばかりですみません。およねと申しますm(__)m

    私も、…出ました!キレイな音が!!

    頭部管をグイッと内側に向けるだけで、フルート全体がビリビリ響いてる感じで、それでいてストレスの少ない吹奏感。もう、何時間でも吹いていられそうな気がしました。
    今までもチョイ内吹きではやってて、かなり自分でも(良いほうに)変わって来たな〜とは感じ始めてましたが、私もアルタスユーザーなので、何と言うか、願ったりかなったりの話題で嬉しく読ませていただきました。

    …と、昨日自宅練習で感動してましたが、今日のママさんブラス練習で、いざっと合奏してみた所…

    第3オクターブが音量に乏しくなってしまいます。鳴るポイントが狭いからでしょうね。でも変なクセを直して練習して行けば、低音部のあの響きがでる音域は確実に拡がるのではと思えてきました。

    うちの楽団は少人数吹奏楽団ですが、やっぱり金管楽器やらに混じると自分の音が迷子になってしまい、自然と高校野球の応援みたいに力んで演奏しちゃってるのかも知れません[E:sweat01]

    フルートって華奢な楽器なのに、力ずくで鳴らしてはダメですよね。

    早くこの楽器の組み方に慣れて、美しい高音を響かせたいなぁ〜。

    私は吹奏楽経験者ですが、いわば再開組。アルタスフルート(1107)に出会って以来、色々開眼させてもらってます。

    この音色に魅力されて、しっかり教室に通うことにしました。

    このブログにも大変お世話になっています。

    また、楽しみにしております!

  4. すとん より:

    >およねさん、いらっしゃいませ。

     今回の記事は田中会長の言葉を私が理解した範囲で書きおこしたもので、私の功績でも何でもないのですが、それでも喜んでくださる方がいらっしゃると、うれしいものです。縁があって自分の手元にやってきたフルートですから、きれいな音で鳴らしてやりたいものですものね。

     第三オクターブに関しては、私もちょっと苦労しています。どうしても、力づくで吹いてしまいたくなります。元々、第三オクターブは高次倍音での音列なので、第三オクターブの前に、第一オクターブの音たちがきちんと鳴らせるようにならないと、うまくいく道理もありません。そういう意味では、第三オクターブはちょっと難しいのでしょうね。でも、そこで力づくに戻ってしまっては、元も子もないので、今は我慢のしどころなんだと思います。

     それに、楽器って、自分の手元と、お客さんのいるところでは、違って聞こえて当たり前です。手元で頼りなげに鳴っているからと言って、お客さんのところでも頼りなげかというと、そうでもなかったりするのが不思議ですね。それと、音が届くというのは、単純に音量だけの影響ではなく、それこそ倍音構成でも届き方が違うようです。音量は多少小さめでも、美しくて印象に残る音で吹きたいと私は思ってます。

  5. きっし より:

    ごぶさたしてます。
    そうなんですよ・・・フルートってほんとは楽な息で吹けるんですよね!!
    でも実際吹いていると、だんだん力が入ってきてきっと必要以上の息を使っているんですよね・・・。
    ピッチについてはいつも悩みのたねですが、今晩の楽団練習は室内がとても暑くて、それこそコントロール不能な感じでした(泣)
    途中で空調を入れてもらっったのでどうにかなりましたが、あまりの暑さに私も楽器も湯気が出そうでした(笑)
    演奏する場所の温度によっても、ずいぶん吹いた感じ(吹きやすさ)が違う気がします。
    きっと演奏に適した温度・・・っていうのもあるのかもしれませんね!!
    ただ言えるのは、絶対に屋外には向かない楽器だ!!という事です・・・。
    先日、風の強い日に楽団で屋外での以来演奏をしたのですが、風のせいでまともに音は出ないは、髪の毛は口に入るはで大変でした(^^;
    フルート以外の楽器は、くわえてるかマウスピースで固定してるかなので、フルート程の影響はないと思われます・・・
    すとんさんは屋外で演奏した事はないと思いますが、やはりフルートは屋内で楽しむのが一番ですね。

  6. すとん より:

    >きっしさん

     そうですね、私もフルートは室内用の楽器で、屋外で演奏する楽器ではないと思います。逆に、金管楽器とか打楽器は狭い室内ではなく、開放的な屋外の方が向いている楽器だと思いますよ。問題は、室内向きの楽器と、屋外の方が適している楽器が同居している事なんだと思います。仕方のない事とは言え、つらいことだと思います。

     フルート以外にも、クラシックギターとかヴァイオリンやチェロ、グランドピアノやパイプオルガンなどは、室内向きの楽器だと思ってます。

     フルートの場合は、屋外では演奏も大変でしょうが、砂やホコリが、メカやタンポに付くと、故障の原因になりますよ。精密な楽器なんですから、屋外での演奏が終わったら、きちんとお手入れをしてやってください。

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