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ラ・フォル・ジュルネに行く前に、アルタスフルートフェアに参加しました その3

 さて、フルートの準備ができたら、今度は倍音のコントロールの話です。

 今の状態のままでフルートを鳴らすと、これは倍音の少ない音です。みんなで、同時に吹くと、音が微妙に違っていて、かなり気持ち悪いです。うわー、こんなんじゃ、アンサンブルなんてできやしません。

 「ちょっと聞いてください」と言って、田中会長がフルートを吹き始めました。最初は、倍音の少ない音です。ところが、あるところで、いきなり、音が深く太くなり倍音が豊かになりました。「何をしたと思います?」と尋ねられましたが、外見では何も変化もないので、よく分かりません。

 田中会長が口の中を開けて見せてくれました。「これが最初の状態、これが後の状態…」口の中の舌の位置が変わっていました。最初は普通の位置に舌がありましたが、次は舌がかなり奥まった位置まで下がっていました。「これは人によって違うかもしれないけれど、私はここ(と言って喉仏を指さしました)をうんと下に下げることで、倍音を増やします」

 これって、実は、声楽家が深い声を出すテクニックと一緒です。声楽家は喉仏を下げて、息を後ろにまわして、深い声(つまり、倍音がたっぷり載った声)を作るのですが、それとテクニック的には、ほぼ一緒です。いわゆる“あくびのクチ”って奴ですね。

 「さあ、今度は倍音をたっぷり載せて、一緒に吹いてみましょう」 さっきは微妙に違って汚かった音が今度はきれいに響きました。「どうですか、アンサンブルに必要なのは、倍音豊かな音なんです。フルートアンサンブルがしばしば汚い音になってしまうのは、メンバーの中に、倍音の少ない音で演奏する人がいるからです。メンバー全員が倍音豊かな音で演奏すれば、こうやってきれいにハモるんです」 納得です。

 ちなみに、もっともっと、豊かな倍音を得るためには、その状態で、さらに息を上向きにすると良いそうです(これはかなり難しいです)。

 最後にみんなで(録音だけど)モイーズの演奏を聞きました。これだけ習った後で聞くモイーズは素敵でした。倍音の変化とかピッチの調整の加減とか、そういうものを駆使して、モイーズが音楽的な演奏をしている事が分かるようになりました。

 だいたい、ここまでで2時間の講演会でした。感謝です。ありがとうございました。

 最後に質疑応答の時間になりました。出てきた質問は二つで、最初の質問はEメカについて、もう一つの質問はC管とH管の話でした。

 まず、Eメカについてですが、フルート製作者としては、フルートにEメカを付ける事をどう考えますか、という質問に対して、Eメカを付ける事を薦める、のだそうです。なぜなら、Eメカを付けた方が楽だし、安心だろうし、楽器は演奏者にとって有利なものを使うべきだから、なるべくEメカを付けましょうということです。

 フレンチスクールの人で、Eメカをいらないという人がいるけれど、あれには理由があって、フランス人と言うのは、実に器用な人たちなんだそうで、そんな器用な彼らにはEメカの必要性は感じられないので、いらないのだそうです。でも、フランス人でない人は、それほど器用ではないので、そんな事で余計な気を使うよりも、Eメカを付けた方が楽でしょうから、積極的に楽をしましょう、ということでした。

 かのベネットはオープンGシステムのフルートを吹いているので、実際はEメカ付きのフルートを吹いているのと同じようなものなんだそうです。プロでもEメカを付けるんだから、アマチュアの人は無用なこだわりを捨てて、Eメカを付けた方がいいでしょう、という答えでした。

 もちろん、Eメカをつけることで、多少、音色が変わったり、ピッチに変動があったりはするけれど、それは好き好きの問題であって、大きな問題ではないそうです(つまり、ほんのちょっとであっても、ここが気になる人には、Eメカは薦められないということです)。

 そこで私が「私のフルートにはEメカは付いてません」といったところ「今日、調整会の予定入っている?[私:入ってます]じゃあ、後でコルクを貼ってあげるよ」と言ってくださいました。

 次は、C管とH管のどちらのフルートがお薦めかという話です。結論は単純な話で、Hの音が吹きたければ、H管を使うべきで、Hの音を吹かないなら、C管の方が良いでしょうという事です。理由は「フルートはC管の方が、H管よりも響きが良いから」です。ちなみに、C管よりもD管(昔はD管のフルートも普通にあったそうです)の方が、もっと響きが良いそうですが「私はCの音が吹きたいから、D管は使わない」ので、C管がベストだと考えているそうです。

 というわけで、講演会が終わりました。私は、その後、引き続いて、調整会に行きました。

 今回は二人の職人さんが来ていました。いつもの(アゲハの製作者である)Sさんも来ていましたが、私の順番の時に、Sさんは別の方のフルートを調整していたので、今回は、もうお一人の職人さんがアゲハの面倒を見てくれることになりました。

 今回、アゲハの調整を担当してくださる職人さんは、フルートケースのフタを開けてみるなり「これはあっち(Sさん)で調整した方がいいよね」と言いましたが、Sさんがそちらでお願いしますという、軽いやりとり(半分、ジョークですね)がありました。…が、つまり、職人である彼は、フルートをひとめ見るだけで、誰が作ったフルートなのか、即座に分かるというわけなんですね。ううむ、奥深いです。

 調整が始まると、田中会長がやってきて「そのフルートにコルクを貼ってあげてください」と命令(?)をしました。もちろん、どれくらいのものを、どういう向きで貼るべきかという指示も付けて…。そんなわけで、職人さん、なんか大車輪で調整を始めました。無料調整会なので、時間は30分しかないのですが、いつもなら、フルートを分解して調整していただけるのですが、今回はその過程はすっ飛ばして、ネジでの調整のみ。それでも15分はかかりました。で、一通りの調整を終わってから、新しいコルクを取り出して部品作りです。

 コルクを貼る…とは、裏Gisホールの1/3ほどをコルクで塞いで、管内の息の抵抗を増やす事なんだそうです。裏Gisホールの抵抗を増やすと、高音Eが多少スムーズに出るようになるので、そういう改造手術なんだそうです。これはコルクを貼るだけなので、もしも気に入らなかったら、次の調整会の時にコルクを剥がせばいいだけの可逆性に富んだ簡便な手法なんだそうです。

 ちなみに「お手間をおかけして申し訳ありません」と言ったところ、「こんな事は、滅多にやりませんから、時間がかかって申し訳ありません」と逆に謝られてしまいました。実際に30分のところ、作業終了まで45分もかかってしまいました。当然、次の人がプリプリして待っていました(ごめんなさい)。さらに、コルク貼りの作業が終わったところで、職人さんは海外アーチストさんに呼び出されてしまった(ラ・フォル・ジュルネ開催中なので、店内には海外アーチストさんがウジャウジャいるわけです)ので、アゲハの最後の確認と磨きは、田中会長自らがなさってくださいました。

 なんか、今回のフルートフェアでは、田中会長にお世話になりっぱなしで、感謝です。言葉をたくさん交わしてもらいました。なんか、私、会長のファンになりそうです(笑)。

 コルクを貼ってもらった結果…左手のみの運指の時の音のうわずりが多少マシになったような気がします。それに、ちょっと音色が変わったような気もします。華やかさがちょっと減って、落ちつきが出てきたような気がします。まあ、次の無料調整会まで半年あるわけだから、しばらくこの状態で様子をみたいと思います。

 せっかくフルートフェアに来たのだから、お約束のゴールドフルートもたっぷり試奏してきました。アルタスのゴールドフルートは、私好みのいい音色です。これは好きだなあ…。

 そう言えば、ヤマノ楽器のあっちこっちで、ラ・フォル・ジュルネのアーチスト札をぶらさげたままで、やったらと上手な方々が楽器を試奏しまくっていましたよ。それにしても、あのヴァイオリンの人は、まるでピアノのように正確な音程でヴァイオリンを演奏していたよ、すごかったなあ…。

 さあ、いよいよ、私は東京国際フォーラムに向かいますよ(爆)。続きはまた明日。

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