不定期連載でしたが、一応、今回で終了です。
音色の問題について
よく、材質と音色の話がブログではされます。「洋銀の音」とか「銀の音」とか「金の音」とかの表現が使われるし、私も使いますが、使いながらも、時折やましい気持ちを感じます。
フルートの音色って、実に様々な要因で変わっていきます。もちろん、材質も音色をかえる要因の一つですが、材質だけでフルートの音色が変わるわけじゃない。フルートの作り方、とりわけ頭部管の作り方で音は大きくかわっていくと思うし、奏者の性別とか身体の大きさとか使い方とかでもだいぶ変わる。
その辺の問題の切り分けをきちんとしないと、間違いを犯す事になります。
私は、ブログで「ゴールドの音が嫌い」と公言してきました。今となっては、この発言は撤回したいです。問題の切り分けがうまくできていませんでした。私はゴールドの音が嫌いなのではなく、その他の色々の条件もあって、嫌いなフルートの音もあれば、好きなフルートの音もあるというだけで、たまたま、最初の頃に聞いた嫌いなフルートの音がゴールドフルートの演奏によるものが多かったから「ゴールドフルートの音が嫌い」と思い込んでいました。ただ、それだけです。
同じ奏者が同じ作りで材質だけが異なるフルートを吹き分ける時だけ、音色と材質の関係に着目すべきで、そうでない時は、材質をあまり重要視するべきではないと、今の私はそう思います。
具体的に言えば、ヤマハのビジューやメルヴェイユは同じモデルで、金や銀やその組み合わせ方で様々なタイプのフルートを用意しているし、アルタスも1207以上は同じ作りであるから、その材質や作り方でそれぞれの違いを感じていけばいいと思う。この手のモノなら「これはゴールドの音だから…」「これは総銀の音だから…」という言い方ではできるけれど、違うメーカーのフルートを比べるとか、同じメーカーでもタイプの違うフルート同士を比較するならば、材質よりももっと別の要素に着目して、音色の比較検討を行いたいものであります。
ゴールドフルートの換金性について
ゴールドフルート、とりわけ18Kや24Kは、ひとまず“金”でできていると言えます。“金”と聞けば、私のような貧乏人はすぐに「これは一財産だね」なんて、知ったような口を聴きたくなりますが、実際にゴールドフルートって、財産になるでしょうか?
2010年1月のある日の貴金属の買い取り価格(地金)は大雑把にならして、1g当たり、金が3500円、プラチナが4700円、銀が55円でした。フルートの重量を500gとすると、フルート一本あたりの貴金属としてのお値段は、ゴールドフルート(24K)が175万円、ゴールドフルート(18K)が131万円、ゴールドフルート(9K)が65万円、プラチナフルートが235万円、総銀フルートが2万8千円となります。計算あってるかな? もちろん現実的には、ここからさらに中間手数料の類や加工賃のようなものも加わるので、実際の査定金額は大幅減額でしょう。
確かに、財産というほど立派ではないけれど、ゴールドフルートとプラチナフルートはそれなりの金額になりますが、総銀フルートはまるっきり財産になりません。さらに言うと、ゴールドもプラチナも、それなりの金額になるけれど、この額なら、貴金属として売り払うよりも、中古楽器として売った方が、より換金性が高くなるんじゃないかな?
もちろん、中古フルートで売却って事になると、なかなか売れないでしょうから、すぐにお金が欲しいという時には向きません。そうなると、貴金属として売却するか、楽器として売却するかって、ケースバイケースって事かな?
どちらにしても、財産として所有するなら、ゴールドかプラチナってところですね。
本当に私にゴールドフルートは必要なのか?
楽器は道具であって、良い道具を使用することは大切な事です。そのためにお金を惜しむべきではないし、高級な楽器を使用することは大切な事だけれど、フルートの場合、日本メーカーに限って話をすると、程度の差はあれ“ハンドメイド”と呼ばれるクラスになってくると、実はどこも水準以上の出来の良さで、このクラスになってくると、どれも道具としては必要十分に良い出来となり、ここから上は、材質の違いを楽しむか、設計の違いや味付けの違いを楽しむくらいになってしまう。
だから、現実的な事を言っちゃうと、道具としてのフルートは、おそらく総銀クラスで十分なんだろうと思う。実際、プロ奏者でも総銀フルートをメインで使っている人はたくさんいるし、とりわけ外国のプロ奏者は総銀の方が多いですね。
ヴァイオリンを始めとした弦楽器のように、素人でも分かるほどに、楽器の値段によって、音が明らかに変わってしまうのなら話は別だけれど、フルートの音の違いは、素人には全く判別できない程度にしか違わない。実際、モイーズのように、洋銀フルートで立派にプロ活動をしていた方だっているわけで、本当は、道具はソコソコで、あとは自分の腕を磨く方がフルートでは大切な事かもしれない。
だから本当にお前にはゴールドフルートが必要なのかと突き詰められると、答えは「たぶん不要」です。だって、私の場合、ゴールドフルートが欲しい理由の一番目が「見栄を張りたい」だもん。「オッサンはオッサンらしく、高額な品物を所有したい」だけなんだもん。音楽的にはゴールドにこだわる理由は…おそらくない。
音楽的には、菅厚の総銀フルートがあれば、ゴールドは要らない様な気がする。音の立ち上がりを考えれば、リップ&ライザーくらいは14Kにしてもいいかもしれないけれど、菅厚総銀で十分だと思う。いや、音量にこだわらないなら、鳴りを重視して、逆に菅薄総銀にした方が美音かもしれない。だって私はそんなにパワフルなフルーティストってわけじゃないもん。
キンピカの外見が欲しいにしても、メッキは趣味ではないので避けるとしても、オーラマイト合金はおもしろいかもしれないし、これくらいで良いのかもしれない。
でも、日本の景気は今悪いのだよ。このまま鳩山さんに任せていたら、日本が滅んじゃうかもしれない。ならば、日本の景気を少しでもよくするお手伝いとして、高額フルートを購入するって、アリだと思うんだよね。そうだ、私の物欲を満たすためではなく、日本の経済活動を活発にするために、ゴールドフルートを買おう。ぜひゴールドフルートを買おう。
あとは、天からお金さえ振ってくれば、バッチグーだぜ!
コメント
あんまり落ち着くとこにはまってしまうとおもしろくないのですが・・・
プロは自分が表現したい音楽にあった楽器を選び、
アマチュアは自分の願望を満たす楽器で良いのでは
すとんさんのように「ゴールド欲しい・銀の音色が一番」も楽しいし、私のように両者のいいとこ取りしたいなんて欲張りもいるし。
私は迫力のあるギンギラギンの音色は好きではありません。
私の嫌いな演歌調(低音で裏声混ざりの小節がきいている)に聞こえるのです。
澄んだそよ風のようで深みのある音色・・・が私の好みです。
>河童さん
プロ奏者とか、アマチュアでも真剣に音楽をやっている人は別として、私のような道楽者(笑)は、おっしゃるとおり「自分の願望を満たす」ための楽器でいいんだろうと思ってますし、そうあるべきだとも思ってます。
だから、理性では「不要」と思われるゴールドフルートが欲しいのですね。
おそらく、私のような人間がゴールドフルートを入手したら、世間の人たちから「道楽者!」と罵られるかもしれませんが、実際、私は道楽者なんだから、罵られても仕方がないです(笑)。
それにつけても、ゴールドフルートの欲しさよ(笑)。
私の先生も金の楽器と銀の楽器を使い分けています。
レッスンの時に、間近で聞いていると、あまり金だから、銀だからといった良さが感じにくいのですが、ホールの様な所で聞くと、それぞれの良さが際立ちますね。
景気回復、してほしいです。
貴金属としての換金性を検証してくださってありがとうございます。
総銀フルートのふがいなさに愕然といたしました。
輪切りにしたらいっぱいシルバーリングができるかなと
購入当初は浮かれた気持ちでいたのですがとんでもない。
デパートではシルバーリングが1万円弱で販売されていますが
いかにデザイン料や加工料が乗ってるかってことですね。
やはり楽器としての天寿を全うさせてあげたいと思います。
私の先生がオーラマイト使用なのですが
総銀フルートをすごくうらやましがってくださいます。
先生の楽器の方が3倍くらいお高そうなのに。
やっぱ純なものって魅力なのでしょうかね。
>プロは自分が表現したい音楽にあった楽器を選び、
>アマチュアは自分の願望を満たす楽器で良いのでは
うまい表現だな、思います 自分自身の求める音(かな?)が鳴らない・鳴らせないがため、イロイロと探し回る(音を心に置き換えても、物に置き換えても、あてはまる) まだ、音だしで足踏みしているのですが、ついつい高価なフルートのカタログをながめてうっとりしてます(笑) 音だし励まなくっては(・・;
>ムラマツEXⅢさん
そうそう、複数のフルートを持っていると、使い分けというか、登場回数にも気を配らないと。楽器って演奏していないとダメになっちゃいますからね。そこがアマチュアには難しい(笑)。
>景気回復、してほしいです
全くです。
>うぉぉんさん
そうそう、銀の地金の価格ってたいしたことないんです。フルートは地金によらず、楽器として売却と言うのがポイントでしょうね。
>いかにデザイン料や加工料が乗ってるかってことですね。
その件について言えば、フルートも同様ですね。職人さんの腕前が価格に反映しています。
>やっぱ純なものって魅力なのでしょうかね。
私はむしろオーラマイトの方がうらやましいです。
>ととさん
河童さんの書き込み、いいでしょう。私も激しく同意しました。
音に関して言えば、どこまで追求してもキリがないだろうなあと思います。だからと言って、追求をやめるわけにも行かず、日々努力です。
でも、いくら人間が頑張っても、その楽器が持つ最高音よりも良い音は出せないのだから、腕が上がったら、楽器も選んでいかないダメって思います。
あと、楽器に教わる部分というのもあります。良い楽器は良いコートでもあります。そんな意味でも、可能なら、高価なフルートに買い換えるべきだと思ってます。
でも、そんな事よりも何よりも、単純に「自分の願望を見たしたい」ですね、マジで。
皆さん様々な考え(思い)があって面白いですよね(^^)
高価なフルートを買う時(必要な時・人)は一財産・・・と思いますけど、売る時はたいした値段にならないから悲しいですよね(泣)
確かに私の周りにも金と銀を使い分けている方は沢山いらっしゃいます。
オケやソロは金、吹奏楽やフルートアンサンブルは周りとのバランスを考えて銀で・・・って感じです。
もちろん音色や吹奏感は金が断然いいですけど、私は金色っていう色が好きじゃないんですよね・・・
どうしても成金??って感じがして・・・って言いながらやはり金のフルート欲しいんですけどね(笑)
我ながら矛盾してるなぁ~(><)
>きっしさん
私は基本的に楽器を手放さない人なので、売却について考えることはないのですが、それでも万が一の時は…と思ってましたが、案外フルートって、オカネにならないものなんですね。
やっぱり金銀は使い分けるものなんですね。ま、金を持っていくと、気まずくなるような時って…あるんだろうなあ。
私は金色は嫌いじゃないですが、音色があまり好みではないんですよ。あと、お値段的に手が出しづらいというのかな。ただ、見栄張りですから、カッコ付けるためにゴールドが欲しいです。ただ、メッキはパスです。9Kでもいいので、無垢が欲しいです。
こんにちは!
ゴールドフルート、頑張って購入してくださいね。っていうかもう予定が決まってたりして・・・
私は去年まったく買うつもりなかったのに、なぜか縁あってムラマツ9Kを買ってしまいました。
車の買い替えを予定していたのですが、もうしばらく新車は買えません(泣)
>kazmamaさん
>っていうかもう予定が決まってたりして…
全然ないです(笑)。だいたい、フルートのための貯金などしてませんから。あくまでも“宝くじ”頼みです。楽器としては、今の総銀フルート(アゲハ)で十分すぎる私ですから、現実的にはゴールドフルートは不要な私ですが、まあ、半分見栄で、半分コレクター気分で、ゴールドフルートが欲しいだけなんです。
とは言え、ゴールドフルートでも9Kクラスだと、実際に買えちゃうので、いつかどこかで魔が差したら、ゴールドを買っちゃうかもしれませんがね(爆)。
ついにやってしましました。我がフルートが混血になってしまいました。
山野楽器でパールのフェアをやっている所へ行き、自分のフルートにパールのタイプの違う頭部管をつけてみたけれど違いがわからない??
そこでお店の美人のお姉さんに頼んでフォ○○の頭部管を借りたら、なんて楽に響くんでしょう。軽く吹くだけでいつもの音が出るんです。さらに3オクターブの音が「ピー」ではなく「ピューン」という感じで柔らかく鳴るんです。
ビゼーのメヌエットはこの音色!!って感じです。
ついでにフェアで展示してあるゴールドのマエスタも好き勝手に吹きました。やっぱ良い音色・・ン?フォ○○の頭部管をつけるとこの音色じゃん!!!鳴らしやすさも同じ!!!
その場にいたパールの職人さんに「すみません」と言ってフォ○○を買ってしまいました。
私が吹くと、フォ○○+パールはもともとの音色と同じ傾向ですが優雅さが加わった感じです。バリバリのフランス製なのになぜか大きく内吹きに取り付けない方が私には合っていて、今までと同じ吹き方(たぶんわずかに内吹き)でばっちりです。
練習が楽しくなりましたよ。これでゴールドにはそう憧れなくてもよさそうです。
すとんさんもゴールドに惹かれるなら試してはどうですか?
>河童さん
フ○ルテ(伏せ字にする必要はないと思いますが…)を買われましたか。良いお買い物をされましたね。この頭部管は元々、パワー志向の頭部管で、ある意味、現代的な音作りの頭部管だと思います。ゴールドフルートのパワフルな音がお好みなら、この頭部管も十分アリだと思います。
私がゴールドフルートに憧れる理由は、音色や音量ではないんです。単純にオジサンなので「高価な持ち物が欲しい」というだけです、いやらしいでしょ。だから、私はゴールドフルートの楽器としての性能を求めているわけじゃないんです。
私の好みで言えば、音色的にはシルバーだったり、木管だったりの方が好きですし、音量は…全然求めていません(笑)。むしろ小さな音量の方が繊細でかわいいかな~って思っているくらいです。
なので、たぶん、本当は、ルイロのヴィンテージの方が私の好みなんでしょうが、ルイロの見かけは、ちょっと見じゃ洋銀フルートと同じでしょ。そこがオジサン的には困ってます(笑)。そこで誰にでも分かる高価な楽器って事で、ゴールドが欲しいんですよ。
もっとも、高価な楽器は欲しいけれど、先立つモノがお財布に入っていないのが残念至極な私だったりします。
つまり、結論を言えば「アゲハには十分満足しているけれど、他人に自慢できるほど高価な楽器ではないのが残念」って事なんです(笑)。結局、自慢したいだけなんですよ、私。
すみません
フォルテではなくフォリジなんです。(だからパールの職人さんにスミマセンなのです)
それでフランスと日本の混血となってしまいました。
私もキンキラキンの音色は好みではありません。
この頭部管は吹き方で音量・音色が大きく変化し、銀の音色の良さもしっかり出ます。
ハンドリングがスポーツカータイプってかんじです(音量ではありません)。
私も音量は求めません。フェアで吹いている方の音量にはビックリしました。
でも自分の音量は抑えていても(出せない?)澄んだ音色には自信がつきました。
>河童さん
フォリジでしたか、こりゃ、失礼。ごめんなさい。
さすがにフォリジは試奏した事はありません。でも、噂はかねがね聞いてます。こいつに手を出すと、もう元の頭部管には戻れない…という噂も聞きます。
>フェアで吹いている方の音量にはビックリしました。
時折、びっくりするほどの音量の方っていますよね。でもあれって、力任せに吹いているわけではないので、やはり長い間の修練のたまものなんだと思います。最大音量が大きいほど表現に幅が出るので、音量は大きい方がいいのです。ただ、普段の音が大きい必要は…ラッパと戦うわけでもなければ…全くないと思います(つまり、吹奏楽なら、大音量フルートも必要でしょう、という意味です)。
頭部管交換か…たしかにこれは魅力ですね。ある意味“悪魔のささやき”かもしれない。