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アゲハはツンデレなフルートです

 アゲハはツンデレです。どこがツンデレかと言うと、その鳴り方。

 音はさすがに、どんな状況であれ、吹けば出ます。問題は簡単に鳴ってくれないこと。そういう意味では、鳴らすこと自体が結構難しいです。アゲハを使い始めて一カ月が過ぎました。ようやく何とかなるかもしれないという目処が立ちつつあります。それくらい、この娘には苦労しています。

 アゲハの、きちんと音が出た時の音色はとても気に入ってます。それはとてもとても美しいものです。(少なくとも私では)他のフルートからは出ないような美しい音が出ます。ま、言い換えれば、それだけ個性の強い笛なんだと思います。

 このきれいな音色は、遊び吹きなんかで、こちらに余裕がある時は、割と簡単に出してくれるのですが、アルテなどで真剣に練習を始めると、途端に出なくなります。

 出なくなるというか、アゲハが手を抜き始めるというか…。まるで「あたし、練習なんかしたくないの。もっと遊んでいたいよお」ってワガママ言っているような、グズっているような、そんな感じになります。

 この美しい音色が気に入っているから、無理してウチに連れてきたのに、その音が味わえなくなると、途端にイヤンな気分になります。

 では、練習の時はどんな音色で歌ってくれるのかと言うと…これがもう色々。からかわれているんじゃないかと思うくらい、実に色々な音色で歌ってくれます。

 チャイナ娘は“当たりの音”“ハズレの音”の二種類くらいしか音色がありませんでしたが、アゲハは変幻自在な音色を持っています。“典型的なフルートの音”“渾身の美音”“力強い音色”“フワッと宙に漂うような音”“真っ直ぐに突き抜けるような音”“尺八じゃねえのかってテイストの音色”“篠笛?みたいな和風な音”“踏みつけられたガマガマルの鳴くような音”“チリチリチリ…っ感じの音”“金属的で耳に痛い音”“ふにゃふにゃした音”“くぐもった音”“明らかに割れている音”“風邪でもひいているような詰まった感じの音”…他にもあったかな? とにかく多種多様な音が出ます。クラシック的には使えない醜音もあります。また明らかに私のミスブローの音もあるでしょうが…それでもいいのです。音色が豊富なことは、この娘の大きな特徴だと思います。

 とにかく吹けば音程的に正しい音は出るんです。そういう意味ではお利口な笛です。でも、今のところ、どんな音色の音が出てくるかは、吹き始めるまで保障できない。気合を入れて吹き始めたら、フニューーーッなんて事もしょっちゅう。そういう意味ではアゲハで演奏することは、博打みたいなものです。ま、単純に私の手に余っているってだけの話なんですけれど…。

 そう、つまりアゲハは、まるでたくさんの色の絵の具の載ったパレットみたいな楽器です。問題は、私がそのパレットをうまく使えないということ。はっきり言っちゃえば、笛に振り舞わされています。

 これだけたくさんの音色を持っているのだから、それを巧みに使いこなせれば最強なんだろうけれど…ああ、力量不足な私だ!

 私、お店で試奏したときは、アゲハは美音だけのフルートだと思っていました。実際に、試奏をした時は、渾身の美音で鳴っていましたから。それがどうです、我が家に着いた途端に、この態度。あんたはお姫様か! どうしてどうして、私はアゲハのことを、少しばかり見くびっていたようです。

 クラシックでは美音。基本的に美音しか使わないだろうけれど、ジャズは表現を考えて色々な音を使うので、音色が豊富だということは、アゲハはジャズにも対応できるというわけです。いづれはジャズフルートもやりたい私には、思わぬ誤算です。

 チャイナ娘の時は、狂ったピッチの修正をしながら吹くのに忙しかったですが、アゲハの場合は、ピッチには問題がないので、そっちには割と無神経でいられます(割と…ネ、マジで無神経になる先生に叱られます)が、今度は音色の選択に忙しいです。音を出してみて「あちゃ、その音色はイヤ」とか思うと、フレーズ吹きながら、気持ちいい音色を探しちゃいます。ちょっと構えを変えたりするだけで音色が激変しますからね、この娘。で、そっちに集中しちゃって演奏がおろそかになって間違えたりして…、ダメじゃん。

 そうそう、練習で困るのは、アゲハって、たくさん吹けません。アゲハ吹いていると疲れちゃいます。どこがどうというわけではないのですが、ズーンと疲れます。チャイナ娘では感じなかった疲労感です。で、集中力があっという間に切れます。そうなるとケアレスミスが連発します。元々下手ッピなのに、下手のランクが下の方に二段階くらい落ちたみたいな感じです。

 まるで「練習なんか、やめやめ! さあ、遊ぼお」って言ってるみたいです。

 最初から、アゲハの調教は大変だろうなあ、とは分かっていました。何しろ、吹き心地ではなく、その抜群な音色で選択した娘ですから。吹き心地を考えるなら、アゲハよりも、一度は購入候補に上がった、その妹分のA1207の方が全然、私の身の丈に合っている感じです。いやいや、吹き心地で言うなら、購入の時に散々迷ったパールさんの娘さんたちの方が気持ちいいです。もうちょっと言うなら、ムラマツの9Kが最高だったなあ…。

 今を楽しむなら、そっちの笛を選択すべきだったんです。でも私は、今ではなく、近い将来に照準を置くことに決めてアゲハを選択しました。

 笛先生は「買うなら、吹くのが大変なくらいのフルートの方が良いです」とか「フルートなんて、買い換えて、きちんと音が出るようになるまで、最低一年くらいかかるもの」とかおっしゃっているのが、今の私の慰めです。

 とにかく、愚痴は言いつつも、毎日アゲハを吹いて、この子を使えるようにならないと。とにかくアゲハは私にとって『道具として使いこなすのが難しい』笛です、はあ。この娘を私の意のままに操るには、相当の時間と努力が必要だろうなあと覚悟しています。笛先生がおっしゃるように、一年程度でなんとかなるかなあ…。それでも約一カ月でここまできました。覚悟はしています。先行きはかなり不安ですし、やっぱり大変は大変。でも、楽しい大変です。

 たぶん…アゲハを意のままに吹けるようになったら、他のフルート(少なくとも総銀クラスまで)はとてもラクに吹けるような気がします。

 とにかく、この娘。はっきり言っちゃえば、跳ねっ返りで気まぐれで、なかなか人の言うことなんか聞かないけれど、たまに気が向くと、とろけるような美しい音で歌ってくれるのよ。(自分基準だけど)CDの一流プロの演奏と比べたって、音の美しさだけなら負けねえぜ!なんて思います(客観的には妄想レベルの誤解でしょうが…)。そんな時は、言葉に表せないほどの快感が走るのね。ああ、フルート吹いていて良かったって、心底思うんだ。それに騙されるというか、なんというか…。そういうところが、まさに“ツンデレ”だと思う。

 アゲハはツンデレな笛です、そういう事です。

 P.S. アゲハはだいぶ白くなりました。リッププレートだけは、たまにシルバークロスで磨いてます(だって2~3日ですぐにサビザビになるし、サビると舌触りっていうか、クチビル触りが悪くなるので、やむなく磨いてます)ので、とりあえずピカピカ!って感じですが、その他の部分はシルバークロスを使わないので、外見はすでにピカピカ? って感じです。うっすら白っぽく濁ってます。いやあ、銀ってサビるの早くね? 

コメント

  1. くろねこ より:

    アゲハちゃん、すごい笛なんですね~。
    その力量に困惑しつつも、アゲハちゃんが手元にあることが嬉しくて仕方がないんだろうなぁ~すとんさん(^^)
    「ウチの子はね~、まったく腕白で困っちゃうんですよぉ」なんて言いながら顔はどことなく嬉しそうなママの様です。

    アゲハちゃんの多彩な音色をいつか自在に操れるようになったら良いですね。
    応援してます♪
    あ。そうだ。すとんさんの変色は硫化(黒くなる)とは違うようなので、身体の塩分とかに楽器が反応しているのでは?
    楽器の表面の曇りには水拭きも有効らしいですよ。
    除菌系?のアルコールが入っているウェットティッシュで拭くと、
    アルコール分ですぐに水気も飛ぶし、良いらしいです。
    あくまでもウワサですので、効果の程はわかりませんけど(^^;

  2. すとん より:

    >くろねこさん

    >その力量に困惑しつつも、アゲハちゃんが手元にあることが嬉しくて仕方がないんだろうなぁ~すとんさん(^^)

     ずばり、その通りです。今日の記事は「私はこんなにハッピーだ!」って趣旨です。うれしくて、うれしく…。何しろ、それもこれも、2000万円の中から選んで選んだ笛ですからネ。いわば“恋女房”を見つけたって感じなんです。

     だから、毎日、笛を吹くのが楽しくてたまりません。

     そうそう、笛の曇りは塩分ということですが…ならば、あきらめます。だって、ここ湘南は、普通に空気中の塩分濃度が、余所より高い地域ですからね。一歩外へ出れば、潮の香りがする場所なんです。なんでもサビる町なんですよ、私の住んでいるところは。

     ちなみに、井戸水は、デフォルトでほんのり塩味がします。温泉も出る地域ですが、ナトリウム泉(つまり塩水温泉)です。洗濯物を干すと、絶対にパリっとは乾きません。しんなり、しっとり、潮の香りのフレーバー付きで仕上がります。つまり、塩まみれの地域なんです。

     あと、リッププレートだけは黒ずんでます。シルバークロスで吹くと、あっと言う間に真っ黒になってしまいます。きっと私の息の中に硫黄がたくさん入っているのでしょうね。

     蛇足ですが、アゲハを選ぶ過程で分かったことは、良い笛は値段ではなく、奏者との相性なんだということ。相性とは、吹いた瞬間にピンとくること。だから、ピンとくる笛とめぐり合えた私は、しあわせモノなんだと思ってます。

  3. ことなりままっち より:

    ツンデレって・・・まさにその状態は「ツンデレ」ですよ。間違いない。
    それにしてもすんごいフルートですね、アゲハちゃんは。音を聴いてみたいです。でもその暴れっぷりは管楽器ならではかもしれないな~とも思います。なにしろ、楽器との距離が近いじゃありませんか。その点鍵盤はどっか遠い・・・
    という私は今日もまた、「であぱ・そん氏(師匠のピアノ)」に、「オヌシ、まだ修行がたらんのではあるまいか」といわれてる気分になってしまいました・・・。

  4. すとん より:

    >ことなりままっちさん

     ディアパソンですか? さすが、ままっちさんの師匠。すごいピアノですね。私、ディアパソンって、噂でしか聞いたことありません。もちろん見たことも聴いた事もない、幻のピアノです。

     思わずググってしまいました。なんかすごそう…。

     それはともかく、アゲハは本当にツンデレちゃんです。演奏者は下手くそなので、とても曲は聞かせられませんが、ほんと、リアルにご近所にいらっしゃったら、お招きして、アゲハの渾身の美音をお聞かせ申し上げたい気分です。それくらい、決まったときは、驚くほど美しい音を出しますよ(いや、決してオーバーでなく)。

     音色だけなら、プロにも負けない。そう言い切れますが…演奏は誰にでも負けます(涙)。だって、まだまだ初心者な私だもん。楽器の音色と演奏者の技術のアンバランスさは、なかなか珍しいものがあると思います。はい、あると思います。

  5. かをり より:

    少し思い出したことがあるので書かせていただきます。
    よい教材があります。
    茂木大輔著「うまくなろうオーボエ」…気でもふれたか とお思いでしょうが 正気です♪ これはシリーズで 管楽器全部ありますが 練習方法が 一番解り易く書かれています。勿論オーボエの楽器個有の内容もたくさんありますが エッセィとしても楽しい教材です。私も持っています。ホントに楽しい「本」です。

  6. すとん より:

    >かをりさん

     オーボエ? オーボエですか? 「うまくなろう」はフルートを持ってますが、オーボエですか?

     もっとも、フルートの方でも、掲載されている五線を見て「へえー」と思うばかりで、全然実行してません。ソノリテ(の一部でしょうが)が載ってますが「まだまだ私には早い早い」とスルー状態です(笑)。

     ちょいと楽譜屋で中身を確認してきます。

  7. かな より:

    こんにちは。「くまくまぱらだいす」さんのHP経由であらわれました。
     私も趣味でやっています。アルタスは吹いたことも触れたこともないのですが、 エミリー・バイノンさんのアルバムを聴いて素晴らしいんだろうなあと思って気になり始めました。腕が違いすぎるのにさ(笑。
     私はムラマツのDSを使っています。アゲハ嬢とだいたい同じランクだと思いますが、私のDSはスムーズに無難に出ます。ムラマツというメーカーはよくも悪くも万人向けなのでしょう。
     でも、天気や私自身の体調などで、出づらいなあっていう日もあります。絶好調の日もあるし、不調の日もあって、その理由はわからないから不思議です。
     ただ、私は今の楽器が自分にベストかどうかは自分でもわかりません。ベストな楽器とはどういう感じなんで翔ねえ。

  8. すとん より:

    >かなさん、いらっしゃいませ。

     エミリー・バイノンさんは良いですよねえ。生意気なことに、バイノンさんの音とアゲハさんの音は、まさに同系統の音がします。奏者の腕の違いはもちろんありますが、それでも、やはり実家(メーカー)が同じだけあって、いい感じに似てます。楽器のお値段は倍ぐらい違いますけれど。

     ムラマツのDSは(お世辞抜きで)いいフルートだと思います。特に楽器自体の造りが、とても良かった印象を持ってます。あと、鳴りやすさとか音色とかが安心できるフルートだと思いました。その安心な点が、言葉悪く言うと「万人向け」と称されてしまう点だろうと思いますが、いつでもコンスタントに一定以上の水準で鳴ってくれるというのは、道具としては安心して使えると思います。その安心がムラマツフルートの最大の特徴だと私は思います。

     道具として安心できるから、ユーザーは音楽に集中できるのですね。よく、ムラマツフルートは奏者を育てると言いますが、まさにそれはそういう理由だからだと思います。

     実際、もう一本フルートを買っていいですよ、ってことになったら、そのリストには必ず、ムラマツDSが入ります。やはり安心安全は、何にも変えがたいものです。

     いやあ、だって実際、アゲハはかなりリスキーなフルートなんです(笑)。鳴る日と鳴らない日の差と来たら、もう涙目になってしまうくらいです。それどころか、今までいい感じで鳴っていたのに、次の瞬間にはダメになってるとか、その逆とか…。一刻の油断もならない感じで、楽しいですよ。日々、こちらの腕が試されています。その代わり、一度鳴り出したら、すごいんですよ、この娘。そういう点では、ムラマツフルートとは別の意味で奏者を育ててくれる楽器だと思います。

     あと、アゲハは、こちらの体調が万全でないと、まともに鳴ってくれません。疲れていても鳴りません。スタミナも要求します。体調管理の大切さを教えてくれるフルートです。

    >ベストな楽器とはどういう感じなんでしょうねえ。

     楽器と考えるから分からないのだと思います。伴侶と考えるなら、赤い糸であったり、ビビと来る感覚だったり…。その時が来れば、理屈抜きでこれだ!って、分かるものだと思います。

     あと、楽器と奏者は一緒に育ってゆくものでもあります。出会った時はそうでなくても、重ねた年月が二人の結びつきを、絆を、強めていくと思います。そして、限りなくベストな関係になってゆくと思います。そしてある日「私のフルートはあなただけ」と言える状態になった時が、ベストなフルートとの出会いなんだと思います。

  9. かな より:

     ありがとうございます。すとんさんもとってもフルートが大好きなんですね。コメントの感じでよくわかります。 
     なるほど、アゲハ嬢は絶好調のときのうれしさは何者にも買えがたいんでしょうねえ!いつまでもこの調子で、時よとまれ、という感じなんでしょうか。すてきですね。
     う~~ん、いいですね。ソルダードの銀はまだないので、すごくPSモデルや1607モデルあたりが気になっています。いずれ、試します!!

     ちなみに、さっきからフルートふいていますが、最初の30分くらいはいつもイマイチです。また、こちら東北地方は天気もどんよりで、フルートの調子もなんとなくイマイチです。一時間くらいたってくると、逆によくなったりもするんです。

     「私のフルートはあなただけ」かあ・・・う~~ん、この方(フルート)は気位が高くて、こちらが支配されているようです。向こうに選ばれているようで全然フレンドリーではありません(涙)「かなちゃん、もう少しお勉強なさい」みたいな感じ。 ほかの楽器に浮気すると、怒られそうなそんな感じで(苦笑)。
     私が追いつかないと、パートナーにはなってくれないのかもしれない。何となくムラマツ先生という感じで、もちろん私より年上女性のイメージです。
     ほかの楽器に触れていい気分になって、「さあ、ついにムラマツ先生を中古にだそうかな」と思っても、やっぱり申し訳なくなってしまうのです。たとえがヘンですが・・・
     調子のよい日は「あら、かなちゃん今日はいいじゃない」なんて語られているように、やってます(笑)
     

  10. すとん より:

    >かなさん

     ムラマツ先生…なんか、目に浮かぶようなキャラクターだなあ…。ムラマツのフルートは値段に関わらず、どれも“気位が高い”感じがしますね。基本的に“お姫様”なフルートなんだと思います。

     どことは申しませんが、その一方で気さくな雰囲気のフルートを作ってるメーカーもありますね。

     たかがフルートですが、メーカーによって、モデルによって、それぞれ性格がうんと違うのが、おもしろいと私は思います。他の楽器のことはよく分かりませんが、楽器選びとか、楽器そのもの音色を楽しむといった、フルート音楽周辺の楽しみも、これまた楽しい部分ですね。

     仮に、かなさんに次のフルートが見つかったとしても、金銭的に許されるなら、ムラマツ先生は手元に残しておいた方がいいと思いますよ。世の中、何が起こるか分からないわけで、サブというか、予備というか、控えというか、そういう役割の信頼できるフルートが手元にあった方がいいと思うので。

     とは言え、ムラマツDSなら、中古に出しても、そこそこのお値段になるから、資金的には下取りに出したいという気持ちは、よ~く分かります

  11. 杏子 より:

    こんにちは。…というか初めましてですね(^^*)
    私は約20万円くらいの三響のフルートを
    持っています。

    アルコールの成分の入った
    ウェットティッシュで磨くと
    くもりが落ちるそうなのですが、
    どの楽器でも大丈夫なのですか?
    また、メッキが剥がれたりしないのですか?(;´▽`A“

  12. すとん より:

    >杏子さん、はじめまして。

     私はブログで偉そうな事をいっぱい書いてますけれど、フルート界では新参者ですよ。そんな新参者に質問しちゃってもいいの? 後悔するよ。

     と、ひとまず予防線を張っておいて(笑)、オジサンとしての人生経験から回答します。

     どうしてもアルコールを使ってフルートを拭きたいなら、ウェットティッシュではなく、消毒用エタノールを使った方がいいと思います。あ、エタノールってエチルアルコールのことです。薬局にいけば500mlで1000円前後の値段で売ってます。というのも、ウェットティッシュはアルコール以外にも色々と(防腐剤などの)化学薬品が混ざってますので、それらの薬品がフルートの表面に残るのは、ちょっとイヤだなあって気がします。

     私も以前、ハーモニカを吹いていた時は、演奏が終わると、エタノールで消毒してました。ただし、これは「くもり取り」ではなく、あくまで「殺菌消毒」のためです。杏さんのフルートは銀メッキのようですから、あまり殺菌消毒に神経質にならなくても平気だと思いますよ。銀には抗菌作用がありますから。

     通常の使用であれば問題ないと思いますが、アルコールは微弱ですが、金属を腐食させる性質を持っていますので、そこんとこ、お忘れなく。

     ま、できればフルートは、から拭きの方がよろしいかと。

     では、何を使ってフルートを拭いたらよいかと言うと、私はセーム皮をお薦めします。貴金属やカメラのなどのお手入れに使うものです。たいていの汚れや曇りなら、セーム皮で落ちます。これで落ちないくもりは、あきらめるか、シルバークロスで落とすしかないと思います。

     シルバークロスは布に研磨剤を染み込ませたものですから、確かによごれもくもりも、よく落としますが、銀無垢ならともかく、銀メッキの楽器には、過度の使用を避けてくださいね。汚れと一緒にメッキを削ります。結果、メッキが薄くなりますよ。

     セーム皮は、鹿の皮を丁寧になめして作った、天然のクロスです。楽器を全く傷つけません。驚くほど汚れを落とします。フルートなら軽く拭くだけでピカピカになります。フルート以外の楽器を拭くのに使う人も多いので、もしかすると楽器屋さんで売っているかもしれません。カメラ屋さんなら大抵置いてます。私は家電量販店のデジカメのコーナーで買いました。近くにお店がなければ、アマゾンでも売ってます(ブログの右の「お薦めします」にリンク張ってあります)。

     三響は日本のトップメーカーですから、メッキもしっかりしていると思いますよ。乱雑に扱わない限り、メッキの剥がれは心配しなくてもいいと思いますよ。乱雑に扱えば、メッキ以前に楽器が壊れますね(笑)。

     と、こんな感じかな。あと補足訂正する事があったら、ベテランの皆さん、よろしくお願いします。

  13. 杏子 より:

    先日はどうもありがとうございました!
    それでもう一つ質問なのですが、
    銀メッキに共通した楽器の
    くもりとりってのはどうしたら
    よいのでしょうか?何度もスミマセン;(p_q;)

  14. すとん より:

    >杏子さん

     くもりの正体が分からないのですが、おそらくは「汚れ」か「サビ」でしょうね。

     汚れはメッキの上に載っているだけですから、簡単に取れます。サビはメッキの中に浸食していますから、基本的には取れません。

     汚れならば、おそらく手指の脂分ないしは、唾液に含まれていた成分の残りカスでしょう。その手のものなら、セーム皮で軽く何度か拭き取れば、十分にきれいになるはずです。

     セーム皮で取れないくもりは、おそらくサビでしょう。サビは取れません。サビはその土台となっているメッキと一緒に削らない限りきれいになりません。つまりメッキを削れば、サビによるくもりも取れます。当然、メッキを削れば、メッキは薄くなりますし、何度もやっていれば、メッキは削り取られて剥がれてしまいます。

     メッキを削る決心ができたなら、楽器屋さんで、シルバークロスないしはシルバーポリッシュを購入してください。くもり落とし程度なら、ポリッシュよりもクロスの方がいいかなあと思います。これらを使えば、みるみるきれいになります。よく落ちるからと言って、一般的な錆び落とし洗剤は使わない方がいいと思います。

     あと、薄めた漂白剤に漬け込んでもサビは落ちますが、これも薦めません。

     メッキが削られて、はがられてしまうと、地金(サンキョウのエチュードですよね、ならば洋銀です)が顔を出します。もちろん、シルバークロスを数回使った程度では、メッキがきれいに剥がれてしまうということはありません。ですから、その程度のクロス使用でメッキの心配をする必要はありませんが、それでもやはり多少のメッキが削られてしまうのは事実です。過度の使用では、いづれ地金が顔を出すのは避けられません。

     ですからメッキを削るのがイヤならば、サビはあきらめるべきでしょう。さもなければ、メーカーにメッキのやり直しを依頼して、きれいにしてもらうのでしょうが、メッキはやり直しても、またすぐにサビますし、価格的にも、かなり割高になりますので、お薦めしません。そんなお金があったら、メッキのやり直しを考えるよりも、新しいフルートを買うために貯めた方がよいと思いますよ。

     はっきり言ってしまえば、メッキも銀である以上、サビます。銀って、比較的簡単にサビる金属なんです。「いぶし銀」って言葉を知ってますか? 古来、日本では、銀はピカピカなものではなく、サビて白や黒になった、くもった銀を愛していました。銀って、そういう金属なんです。

     だいたい、フルートのメッキは一般工業製品のような、サビ止め目的ではなく、別の目的のため(多少でも銀の響きに近づけるため)に行なわれていますので、サビに関しては「銀無垢よりサビるのが遅い」程度の効果しかありません。結局、メッキのフルートもサビてしまうのです。

     フルートがサビてしまうのは悲しいのでしょうが、サビがイヤなら、ゴールドフルートかプラチナフルートを使うしかありません。これらのフルートの素材は化学的に安定してますので、まずサビません。しかし、銀のフルートを使っている以上、銀のサビは受け入れないとネ。

     私のフルートもいい感じでサビ始めましたよ。私はそれを悲しいこととは思ってません。私の先生のフルートはサビサビで真っ白になってますが、それはそれで、カッコいいと思ってます。以前、体験レッスンで世話になった先生のフルートはやはりサビサビで真っ黒でした。それもなかなかカッコいいと思います。なんか自分のフルートがピカピカで、恥ずかしい気がするくらいです。私にとって、ああいう、いぶし銀のフルートはあこがれなんです。

     それに、銀のフルートは、サビていないフルートよりも、サビているフルートの方が良い音がするそうですよ。良い音かどうかは趣味の問題になるかもしれませんが、サビの正体は、硫化銀で、これは銀よりも化学的に重い物質なのです。フルート本体が化学的に重くなれば、波動である音は、より遠くまで飛びます。つまり“遠鳴り”をするようになるでしょう。

     銀のサビって、悪い事ばかりではありません。杏子さんのフルートのくもりが、サビならば、私はそれを無理に落とすことは薦めません。ピカピカではなくなりますが、銀ってそういうものなんです。フルートは装飾品ではありません、楽器なんです。銀のサビも受け入れて、ありのままの、あなたのフルートを愛してあげてください。

  15. 杏子 より:

    すとんさんの返信で気がつきました。
    自分は楽器に付く指紋やキズを
    気にしてばかりいて、フルートの本来の姿を
    受け入れてなかったのかもしれません…
    これからはすとんさんの言うとおり、
    ありのままの自分の楽器を
    受け入れ、愛していきたいです☆
    ありがとうございました!(*^-^)/

  16. すとん より:

    >杏子さん

     とは言え、やはり愛用のフルートがピカピカでなくなるのは、悲しいでしょう。きれい好きな方なら、なおさらでしょうね。

     先日のコメントで書き忘れたのですが、効果のほどは分かりませんが「Cガード」という製品があります。楽器屋さんに売ってますが、1000円前後のペラペラの青いシートです。銀製品のサビの進行を遅らせるとか? お守りのようなものかもしれませんが、無いよりはマシかもしれません。

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