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頭声を出してみた(らしい)

 声楽のレッスンに行きました。

 『練習禁止令』で自宅で歌わなくなって、三週間ほど経ちました。いやあ、だいぶ悪い癖が抜けたようです。

 先生の導きのままに発声をしていたら、よく分からないまま、なんかカーンときて、ピーンとした声が出た…らしいです(?)。“らしい”とは、私自身は全くそんな自覚がないから“らしい”としか書けません。

 先生からは「カーンと来たでしょ」と言われましたが、全然分かんない。「ピーンとした声が出てましたよ」とも言われたけれど、全然分かんない。本人的には、低い音域をフニャフニャした声で歌っていたつもりで、全く自覚もなければ、手応えもなし。どちらかと言うと、物足りない感じで歌ってました。

 実際には五線の上のAs(ラのフラット)まで歌っていたそうなんだけれど…。

 隣にいた妻は「キング先生みたいな、すごい声が出てた」と言ってました。それはおおげさな…。

 先生がおっしゃるには、この声が“頭声(とうせい)”なんだそうです。え? ウソ? そうなの?

 困った困った。どうやって出したのか、全く分かんないよ。体をどう使っていたのか、自分で全然分かんないよ。

 自覚している事は
  1)とにかく、楽に、適当に、フニャフニャに歌っていた。
  2)声は奥から出す(感覚的には頭ではなく、盆の窪の当たりかな?)。
  3)声の出し方は低音を出す時のまま、何も加えない、何も変えない。

 これでは自宅での練習はできないよ。だって再現できるほどの、ちゃんとした確信も手応えも無いもの。あ、ちなみに『練習禁止令』は解かれましたので、自宅練習OKになりました。その代わりに『発声練習禁止令』が出ました(笑)。つまり「発声練習はダメだけど、歌は歌っていいよ。だから音取りしてね」ということです。

 自分でよく分からずに出したら出ちゃっただけなので、もう一度出せるかどうか不安だと言ったら「一度出たのだから、もう大丈夫でしょう」と先生。「それよりも、以前のような歌い方はしないように気をつけてください」と言われました。

 そうか…! 三週間に渡る『練習禁止令』は、頭声発声のための準備だったわけだ! 年が明ける少し前くらいから、キング先生が「そろそろ、すとんさんもテノールの声が出るはずなんですよねえ…」と言っていたのは、この事だったのか!

 ここで頭声の説明をしましょう。頭声とは…何でしょ? ザクっと言っちゃうと“高い声”のことなんですが、かと言って、甲高い声ではありません。大雑把に言っちゃうと、柔らかい感じの木管楽器ぽい高い声です。とは言え、声の太さは人によって違う(か細い声の人もいれば、力強い声の人もいる)ので、聞いた感じの印象が、人それぞれでだいぶ違うのも、定義付けが難しい理由ですね。

 男声の場合は、頭声と裏声(ファルセット)は(印象的には)明らかに違うものですが、女声の場合はかなり似た感じなので、区別が難しいという話も聞きます。

 正しいイメージとしては、オペラ歌手が高い声を「アーーーー」って伸ばすでしょ、アレです。ポピュラーヴォーカルの世界で言う、ハイトーンボイスとかヘッドボイスとかは、厳密に言うと違うものかもしれませんが、大雑把に言っちゃうと同じようなものです。さらに大雑把な話をしちゃうと、男声の場合は、ミックスボイスという奴ともほぼ同じだと思います。

 すごい、大雑把な話をしていると、自覚してますよ。とにかく“聞きやすい高音”の事を“頭声”というと思って結構です。

 対して“聞きづらい高音”というか“味のある高音”てのは、喉声なんですね。喉とその周辺に力をウンと込めて、それで高音を発声するやり方。邦楽の発声方法は基本的にこっち。洋の東西を問わず、ロック系の歌手は案外こっち。ジャズのハスキーな声もたいていこっちです。喉にポリープができたとか、昔は高い声が出たんだけれど…とか、声がしわがれてしまったとか、そう言っているのは、たいてい喉声発声の人です。喉声は喉声で魅力的ですが、クラシック系では絶対に使わない発声方法です。

 頭声って、クラシック系だと、テノールの必須条件ですね。頭声の出せないテノールはいないと言うか、頭声が使えないとテノールになれないと言うべきか、そういう感じ。だからテノール予備軍の方々は頭声の獲得にやっきになる。もちろん、合唱テノールさんだと、頭声が使えなくて、代わりに裏声を使う人も多いだけれどネ。

 とにかく、私、頭声を出していたんだってサ。

 へー、へー、へーだね。喉声野郎の私が頭声? 自分の事ながら、にわかには信じられないね。

 だから私はこう言ったのさ「頭声というほどには、手応えがありません」とね。そうしたら「今は物足りなく思うだろうけれど、それでも一曲丸々歌うとヘトヘトになると思わない?」……思うかも。ああ、だからこのくらいのパワー配分でいいのか! 

 とにかく私、生まれて始めて“頭声”と言うものを出したみたいです。今回は出しただけなので、今後はその定着と音域拡大を目指すらしいのですが…実感がない。

 そこで、レッスンが終わって家に帰ってから、録音を聴いてみました。録音……レッスンの録音です。今までは録音機材を持っていなかった事と、録音しても聞き直している時間もないという理由で録音していなかったのですが、今回からは、録音機械も買ったし、妻が自分のレッスンの復習をしたいというので、録音してみたんです。それで、レッスン中の自分の声を聞いてみたんですが…、

 いやいや、驚き。「キング先生みたいな~」は、やはり言い過ぎだけれど、なんかいっぱしのオペラ歌手のような声で歌っている自分がいたよ。いやあ、なんか感慨無量。キング先生の元で勉強始めて三年目だけれど、三年やって、ここまで来れたか…。いやいや、三年で頭声なんて、むしろ少し早いくらいだね。普通はもう少し時間がかかるという噂を聞くけどね。

 聞いた感じ、自画自賛だけど、結構な美声じゃん、私。……でも、音程はかなり甘いな(苦)。特に限界近くになると、こりゃあ使い物にならないじゃん。

 おまけに機械に納まりきれないくらいに大音量。楽に出して、この音量なのだとしたら、自宅で歌の練習なんてできないじゃんか!

 と言うわけで、発表会に向けての「ああ、私の愛する人の」に関する話は、また明日アップします。

おまけ。個人声楽レッスンを受ける場所については、レッスン場所を求めて二転三転したものの、結局、以前グループレッスンを受けていたカルチャーセンター内で開講していただける事になりました。それも私たちにとって一番都合のよい時間帯です。色々な意味でラッキーです。キング先生並びにカルチャーセンターの方々に感謝です。

 で、そのカルチャーセンターで我々がレッスンしている教室の隣では、前回は二胡のレッスンが行われていたのですが、今回は空き部屋になっていました。アレ?と思って調べてみたら、二胡はかなり離れた教室でやってました。

 妻が言うには「迷惑をかけたんじゃないの? 二人(私とキング先生)とも半端なく声が大きいもの。防音設備なんて何の役にもたっていないし…。隣からあの声が聞こえたら、二胡のレッスンどころじゃないでしょうね」だと。おそらく正解です。ごめんなさい>二胡のお教室の方々。

コメント

  1. Cecilia より:

    おめでとうございます!
    どんな声だったのか聴いてみたいです。
    レッスン場所を求めていらっしゃったのですね。
    確かに大変かも!

  2. すとん より:

    >Ceciliaさん

     そうなんですよ。レッスン場所を探していたのです。

     キング先生は出張専門の先生なので、レッスン場所は原則的に生徒側が用意するのです(その代わり、どこにでもいらしてくださいます)。私が2年間グループレッスンをしていた理由の一つに、個人レッスンに切り換えるためのレッスン場所の確保が難しかったというのが、実はあります。

     しかし、グループレッスンも2年に及び、そこでの学びも限界に達し、もはや一刻の猶予もならない状態で、レッスン場所を探すことになったのです。

     自宅でのレッスン…は、まず無理。我が家の周辺は、小さなマッチ箱のような戸建ての家が密集しているような地域なんです。そんな住宅地の平日の夜に、オペラ歌手を連れてきて、ピアノをガンガン弾いて、フルヴォイスでレッスンをつけてもらうなんて、Ceciliaさんなら、その無謀さ、お分かりになりますよね。それも、生きのいい、若手のテノール歌手ですよ。考えるまでもありません。

     なので、レッスン場所を探してました。学校とか、公民館とか、音楽スタジオとか、民間の貸部屋業者とか色々当たりましたし、よさそうな所では実際にレッスンもしてもらいました。

     が、結局はタイミングなんですよ。私がいよいよグループレッスンから個人レッスンに切り換えるという、その時機に、色々のところの歯車が動き出して、上手い具合に、今のスタイルに納まりました。すべては、天の配剤だと思います。

     今はレギュラーのレッスンがカルチャーセンターで、オプションのレッスンは駅前の貸部屋屋さんで、という割り振りになってます。

    >どんな声だったのか聴いてみたいです。

     だからと言って、発声練習の記録をアップするわけにはいきませんよ。今、「自宅で練習」というカテゴリーはフルートの演奏ばかりアップしていますが、いずれは歌もアップしたいと考えています。時機が来たら、何かアップしますので、それまで首を長くしてお待ちください。たまに歌も録音するのですが、なかなかアップできるほどの歌唱ができなくてね(笑)。

  3. 橘深雪 より:

    おめでとうございます!!!!
    我慢したかいがありましたね
    すとんさんが実際に歌いながらの自覚はもう少し後になるのかもしれませんが
    これからドンドン良い方向へまっしぐら♪
    発表会も楽しみになりそうですね

  4. すとん より:

    >橘さん

     そうなんですが、なんか、まだ、怖いですよ。たまたま出てしまった感なので、自分の声であっても、不安なんですね。なので、なかなか思い切って練習できません。

     でもね、この声で、発表会で歌えたらいいなあと思ってます。だから、発表会まで、あと約三カ月ありますが、この期間は、歌の練習よりも、声の定着の方がメインになるかなあ…と思ってます。

  5. お散歩さんぽ より:

    おめでとうございます!
    声の事なのでわからないですが、すごいことを成し遂げられたのですね。なにはともあれ、おめでとうございます。

    >だからと言って、発声練習の記録をアップするわけにはいきませんよ。
    別に構わないとは思うのですが. . .私がアップしたのは限りなくそんなものです。ま、あれを聞いてこりゃひどいとお考えになったのなら、同意する自分がおります(笑)

  6. すとん より:

    >お散歩さんぽさん

     はい、当社比で、すごいことをしたのです。確信はまだないのですが、大人への階段を一段登ったところです(笑)。いや、冗談抜きで、マジで、そんな感じ。

    >あれを聞いてこりゃひどいとお考えになったのなら、同意する自分がおります(笑)

     いやあ、だってアレは曲じゃないですか、まがりなりにも。十分美しいです。

     声楽の発声練習は、本当に発声練習で、単なる“やかましいスケール練習”ですからね。おそらく“やかましい”の部分は、歌の人以外には理解できないと思います。実際に“やかましい”のですよ。

     管楽器の人が想像できる、一番近いイメージは『音痴なトランペットを使って下手くそな奏者が思いっきりffでスケール練習をしている』状態です。そんなの聞きたくないでしょ(笑)。私も遠慮します。あんな感じです。

     「トランペットとはまたおおげさな~」と思われるでしょうが、これは案外そんなにオーバーな例えではなく、テノールの声は、昔からしばしばトランペットに例えられるものなのですよ。もっとも、私の声は、まだまだですし、輝きがないので、金管っぽくないのですけれどね。

     歌に関しては、少なくともフルート程度に曲ができるようになれば、「自宅で録音」のカテゴリーに加えたいと思ってますが、なかなかどーして、楽器に頼れない分、フルートよりも難しいです。

  7. ochie より:

    おめでとうございます!!
    体が楽器というのはこんなにむずかしいことなんですね。新しいお声を獲得なさったとはすごいことなんでしょうね。

    フルートの基礎固めは「石のうえにも三年だあ」という思いでやっておりますけれども、お声ひとつに三年とは・・声楽、おそるべし。

    新しい光が見えるとますます楽しくなりますね。歌の録音アップもぜひ!待ってます♪

  8. Cecilia より:

    すとんさんのお宅は声楽とフルートの練習をたくさんしても大丈夫なんだなあ・・・と思っていましたが(以前この話題がありましたよね。)、確かに若手の生きの良いテノールとちょっと若手で巨漢の人のテノール・・・しかもピアノ伴奏と音楽歴の長い女声(奥様はソプラノでしたっけ?)・・・これはうるさくなるに決まっていますね!
    これも以前話したかもしれませんが私のテノールの先生(某音大教授)のお宅でさえも、どうしても音が漏れてしまう・・・とのことでした。
    もちろん新築する際には相当こだわられたようなのですが。
    そちらのほうならまだ練習室もたくさんあるのでしょうけれど、うちのほうはその練習室がなかったりしますのでね~。
    ある練習室は30分500円(5000円分の綴りを買わされる。)ですが、×人数分なので、3人で入ったら30分で1500円取られてしまいます!
    ・・・で最近時々使っている某市(自分のところの市ではないです。)の文化会館練習室は一時間500円で安いですが、ピアノ代が500円、空調費が400円です。
    レッスンで使用するとなると空調も大事ですよね。
    万が一乾燥するので使わないことになっても先生に寒い(暑い)思いをさせたくないでしょうし。
    これが自分だけならたぶん我慢です。(笑)

    カルチャーセンターなるものも近くにないのです。
    音楽教室のレッスン室はあまり部屋数がないし自分が行けそうな時は空いてないです。

  9. すとん より:

    >おちえさん

     歌に限った事ではないのですが、すべての楽器には素質と才能というものが必要で、これらに恵まれている人にはたいしたことがなくても、そうでない人間にはやっかいな事ってたくさんあります。歌もそうです。

     頭声を出してみただけ(本当は“獲得”したと書きたいけれど、とてもそんな感じではない…)にすぎない私ですが、これだけで3年ですね。

     私は3年かかりましたが、結局ここまで辿り着かないレスナーも大勢いるわけですし、その一方で、わずか数カ月でこの段階をクリアしている歌手もいるわけで、相対的な評価は難しいですね。ましてや、他の楽器と比べて、客観的にどうこう言えるとは思ってません。

     なので、主観的な物言いをしますと……声楽って見た目よりも、ずっと難しいよ。だってね、『楽器に頼れない分、器楽より大変』『奏者としての部分と、楽器としての部分の両方について、常に努力研鑽が必要』『楽器が生身なので練習をやりすぎると簡単に壊れるので、常に練習量を自分でセーブしないといけない』『壊れても気に入らなくても、楽器を交換することはできない』のよ。分かる?

     とは言え、逆に考えると『いっぱい練習しなくて良い』とか『指が動かなくても全然OK』とか『譜面が読めなくても耳コピーでOK』とか『メンテが無料』とか、良い面もたくさんあります。

     えー、つまり、どういう事を言いたいのかというと“いい年したオッサンが趣味で歌をやっているだけなのに、結構がんばっているのよ”とまあ、声を少しだけ大きめに、言ってみただけ…そんなところです。

  10. すとん より:

    >Ceciliaさん

     音楽系の練習室を探すのは、こっちでもやはり大変は大変です。数はそれなりにありますが、ほとんどが満杯で不足しているので、新規開拓というのが難しいのです。気の利いたところは、すでにレギュラーさんがいますからね。

     お手軽なのはカラオケ屋ですが、器楽はともかく、声楽でカラオケ屋を使うと確実にノドを壊しちゃいますし、音楽教室のレッスン室も時間帯によっては良いのですが、たいてい狭いので声楽に向きません。器楽の人は平気で狭い部屋で練習しますが、声楽でそれをやると…やっぱりノド壊しますね(笑)。

     ノドの事を考えると、またまた場所を選ばないといけないわけで…そういうわけで、場所探しは、本当に苦労したのです。でも、真剣に求めていくと、必ずどこからか助けがやってきます。世の中って不思議ですよね。

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