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正しい発声とは?

 発声に関する議論の中で、よく“正しい発声”とか“間違った発声”とかが言われます。実際、私もよく使います。
 で、つらつらと考えてみると“正しい発声”と、一言で言っても、その中身には3つのレベルの正しさがあると思います。
 1つは、歌のジャンル別にある正しさであり、もう1つは特定の1つのジャンルの中にある派閥的な正しさの違いであり、最後にテクニカル的な正しさの違いがあります。。
 最初の歌のジャンル別の話は簡単で、あるジャンルでは正しいと言われている事が、他のジャンルでは間違っていると言われてしまうわけで、ノドに力を入れて歌っていくのは、クラシック声楽では間違いですが、一部の邦楽(詩吟とか義太夫とか)では、実に正しいやり方なわけで、異なるジャンル間で、正しい正しくないとか言っても、全く仕方ないし、自分のよく知らないジャンルの事にあれこれ言うのはお門違いになりかねないって話です。
 もう1つの方の派閥的な正しさの違いとは、同じ音楽ジャンルであっても、派閥とか学閥とかグループとか師匠筋と…まあ、そういう違いで正しさが異なるって話です。
 例えばクラシック声楽というジャンルの中に置いて、横隔膜をどう動かして息を吐いていくかという問題があります。私は、Y先生から「お腹は固めちゃダメ。腹筋を常に動かしていなさい」と言われております。私的には、お腹(つまり横隔膜)は固めた方が楽だし、フルートの笛先生からは「おへその下にグっと力を入れて固めて吹きます」と習ったけれど、今は歌でもフルートでも、なるべく腹筋を動かし続けて(それに連動させて横隔膜を動かし続けて)息を吐くようにしています。
 動かし続けるよりも、固めちゃった方が自分的には楽だけれど、なるべく固めずに動かし続けるように努力しているし、それを癖づけようとしています。
 なぜなら、それが正しいとされるグループに身を置いているからです。
 でも、笛先生に習った事は間違っているわけじゃないし、H先生も同じような事を教えてくれたけれど、ひとまず息の吐き方としては、フルートの両先生のやり方ではなく、声楽のY先生のやり方を身につけようとしているし、そっちのグループの人になろうとしています。
 と言うもの、この2つのやり方の違いは、単に声楽とフルートの違いではなく、イタリア式とドイツ式の違いだと、私は理解しているからです。イタリア式とドイツ式の違い…声楽的に言えば、ベルカント唱法とドイツ唱法の違いです。つまり、属する派閥と言うか、グループのやり方の違いなんですね。私は今、一般的にベルカントと呼ばれるグループのやり方を身につけようとしているので、ドイツ唱法的なテクニックには走らないようにしているだけで、別にドイツ唱法は間違っているって思っているわけじゃないのです。思ってはいないけれど、ドイツ唱法的なやり方をすれば「間違っている」と指摘されるし、自分でも「ああ、間違えちゃった」と思って、やり方を正すだけの話です。これは属する派閥の違いです。
 最後のテクニカル的な正しさと言うのは、これが本来の意味での“正しい発声”につながる観点なんだろうと思いますが、例えば“イ”を発声する時に、クチビルを思いっきり横に引いて「イー」と発声する(日本語的にはこれが正解です)のではなく、むしろクチビルの両端は思いっきり近づけてクチを縦開きにした上で、舌と口蓋を使って「イー」と発声するのが、クラシック声楽的には正しい発声になる…とかいう話です。
 このように“正しい発声”と言っても、3つのレベルの違いがあるので、今、自分はどのレベルの“正しさ”について話をしているのかという自覚が常に必要だろうと思ってます。

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コメント

  1. 如月青 より:

    一昨日はタイプミスを直さずに送って失礼しました。
    さて、腹筋その他の話ですが、必ずしもイタリアとドイツの差ではないようです。自分の経験だと、現在は
    ソロの先生ーバリバリのイタリア。ソプラノレジェッロ
    腹筋固める、上半身動かしちゃいけない、ビブラートNG
    合唱の先生ーバリバリドイツ。バス
    腹筋固めちゃダメ。上半身の形は言及なし、というか楽譜持ってると前屈みになりがちなので視線を斜め上で上向きに声をとばすようにと。ビブラートは音程に影響がなければむしろあったほうが響きがよい、と。
    若い頃習っていた教室もイタリア系でしたが、指導方針は合唱の先生に近く、上半身は派手でなければ動かして脱力を図れ、と。
    いずれも目的は喉の負担軽減だと思いますが、細かい差は国籍より出身大学や指導者の違いかもしれません。

  2. すとん より:

    如月青さん
    >細かい差は国籍より出身大学や指導者の違いかもしれません。
     ですね。たぶん、そうです。
     私が思うに、歌手という人種は、上半身に関しては、演技をする必要上、あまり固めちゃダメじゃないかと思いますが、パヴァロッティのように、演技は大根で、歌に全身全霊を注ぐタイプの人もいますので、そう考えると固めようが固めなかろうが、己の道を突き進むのもアリなんでしょうね。
     でもやっぱり私は、上半身に関しては、演技をする余力が欲しいかなって思います。
     ビブラートは…付けるものではなく、付いてしまうものだと思ってますし、ベルカントな歌い方なら自然と付くよねえ…と思ってますが、古楽を歌うなら、ビブラートはNGです。なので、ビブラートと仲良しな私は、本来、古楽は歌うべきではないタイプの人なんだろうと思ってます。でも、ヘンデルは歌いたいし、いずれはバッハやヴィヴァルディなんかも歌いたいと思ってます。

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