標題の通り、見てきました。スタッフは以下の通りです。
指揮:ワレリー・ゲルギエフ
演出:フランソワ・ジラール
オランダ人:エフゲニー・ニキティン(バス・バリトン)
ゼンタ:アニヤ・カンペ(ソプラノ)
マリー:藤村実穂子(メゾソプラノ)
ダーラント:フランツ・ヨーゼフ=ゼーリヒ(バス)
エリック:セルゲイ・スコロホドフ(テノール)
操舵手:デイヴィッド・ポルティッヨ(テノール)
いつも私はメトのライブビューイングに関しては、基本的にお薦めをしていますが、今回のヤツはお薦めしません。ぜひぜひ見たい、と思う人だけで良いと思います。オペラ未経験者とかオペラ初心者には薦めないのはもちろん、かなりの手練で無いでないと厳しいでしょうね。歌やオーケストラは素晴らしいので、歌の勉強のために見る人以外にはお薦めできません。あと、ヨーロッパの歌劇場にたまにある“こじらせ演出”が好きな人向けにも良いかもしれませんが…。
そもそも「さまよえるオランダ人」というオペラそのものが、有名な割には、実は大して面白いオペラだと思ってます。ワーグナーの作品だけど、まだそんなにワーグナーっぽくなくて、まだまだ普通にドイツオペラなんですよ。普通にオケ付きレチタティーヴォとかアリアが交代してオペラが進行していきます。物語もほとんど歌詞で説明しちゃっていて、オケはあくまでも歌の伴奏だったりします。あえてワーグナーぽいところを探すと…ストーリーが中二病全開なところ?かな(汗)。
まあ、これは最初っから分かっている事だし、そんな面白くないオペラであっても、今は演出の時代ですから、演出次第では、むっちゃくっちゃ面白くなる可能性もあるのですが、この演出に関してはハズレです。説明不足にも程があるわけで、むしろオペラを分かりづらくしていますし、つまらなくもしています。これなら、目をつぶって歌だけ聞いていた方がマシかもしれません。実際、私は何度も目をつぶってしまいました(笑)。
とにかく、演出は見事にハズレです。ここまで観客を置いてけぼりにした演出は却って清々しいくらいです。
とにかく画面が暗いです。最初っから最後まで、ほぼ真っ暗。ハイビジョン収録とは言え、ここまで暗いとほんと厳しいですよ。きちんと撮影できてません。何度も何度も光量不足のために画面がブレたり、ピンぼけ起こしたりしています。こんなに見苦しい画面の連続は、メトのライブビューイングで初めて見ました。これ、商業レベルの撮影じゃないよね(苦笑)。
画面が暗く、ライトも暗いのに、登場人物の衣装は皆、黒か灰色。もう笑っちゃうくらいに闇に溶け込む保護色! ヒロインのゼンタだけが赤い衣装。意図があるのは分かるけれど、見えなきゃ意味が無いです。
ちなみに、あまりに画面が暗すぎて、字幕(白色です)が、まぶしくて目に刺さります。目が痛くなります。演出がヒドすぎるだけでなく、この字幕がまぶして、まるで光源を見つめているような錯覚すら起こしてしまいます。あまりにまぶしすぎて、私は何度も目をつぶってしまいました。こんなに画面が暗いなら、字幕も灰色にして、明るさを抑えてくれないと、健康に良くないです。
それに音も良くないです。音質そのものはいつも通りなのですが、不要なノイズ音があっちこっちからしますし、不快な重低音も終始鳴っていました。なんか、収録現場にスキがあるというか、いつものスタッフではない人が関わっているのでしょうか? とにかく、いつものメトとはかなり違います。一体、何があったのでしょうか?
あと、メトのライブビューイングと言えば、幕間のインタビューが見どころの一つですが、この上演にはインタビューが一つもありません。オペラの開始時に、オペラのタイトルと、スポンサーの紹介があっただけです。これなら、市販のオペラDVDと何も変わりません。さらに言うと、このオペラは、本来3幕なのですが、これを一挙に幕間無しに上映しています。一説にはこれが作曲家ワーグナーの望んだ上演方法なのだそうだけれど、2時間半近くもトイレに行けないのは、結構キビシイです。せめて、二分割にして欲しかったです。
せっかく、日本人歌手(藤村実穂子)がメトのライブビューイングに初お目見えなので、もっとあれこれ褒めそやしたいのが本音なのですが、これほど褒めるポイントの無いオペラも珍しいくらいです。とにかく、良かったのは、歌とオケだけです。別に映画館で見る必要はないです。それこそCDやネットラジオで充分な上演なのでした。
前回の「アグリッピーナ」が素晴らしかっただけに、その落差に目がくらんでしまいましたよ。
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