先日も、見知らぬ人たちの発表会に行ってまいりました。今回行ったところは、参加人数も多くて、歌われる歌も多くて、発表会の時間も長くて…という、大規模な発表会でした。参加者のレベルも様々で、音程も取れない人からオペラの一場面を歌っている人まで、様々で色々と勉強になりました。
それだけ色々な人がいる発表会だと、珍しい人もいるものです。
私が「これはほんとうに珍しい発声だ!」と思った人がいました。その人の声は…信じられない事に、同時に二つの音を出して歌っているんですよ。信じられますか?
同時に二つの音を出している…と言っても、別にハモっているわけではありません。また倍音唱法とも違っていて、むしろ不協和音になっているのです。アレは一体なんなんだろ?
どんな声なのか…表現するのは難しいのですが、この声を聞いて、最初にイメージしたのは、モンゴルのホーミーでした。あんな感じの声だったのです。とは言え、ホーミーの発声方法で歌っているとは…思えないんですよね。
その人の発声をじっくり聞いてみたところ、思い当たったのが、ヴィブラート…?の一種なのかな…って事です。ヴィブラートと言っても、もちろん通常のヴィブラートではなく、通常のモノよりも、ずっと震える音程の幅が広く、震える振動数がめっちゃくっちゃ多くて、音量も大きな声…なのかなって感じです。つまり、高齢者に多く見られる、ちりめんヴィブラートのハイパーパワフルバージョンのヴィブラートなのかなって事です。つまり、ヴィブラート(それも音量ではなく音程にかかるヴィブラート)の一番高い音と一番低い音が強調されて、その両端の音が2つとも声として聞こえる…ような感じの歌声でした。
とにかく、すごい声でした。私的にはヒドイ発声(ごめんなさい)にしか聞こえなかったのだけれど、その人は、他の人よりも明らかに大きな拍手をいただいていたので、一般受けのする声だったのかもしれません。私にはジャイアンの歌声(ほんと、ごめんなさい)にしか聞こえない声でも、お客さんからは好評価をいただけるわけで、なんか、私、色々と分からなくなりました。
でも、世界でワン&オンリーな歌声であることは認めざるをえないのです。ふう。ちなみに、その方の声種はテナーのようでした。
その団体では、もうひとり、珍しい声を聞きました。その方もテナーなのですが、発声が、SP時代の昔のテノール歌手のような発声なのです。つまり、音源で聞く、カルーソーやジーリーのような声なのです。
…ですから、歌は上手いっちゃあ上手いです。でも、笑っちゃいました。ほんと、音源みたいな声なんだもの。おそらく、カルーソーやジーリーや、あの時代のテナーがお好きな方なのでしょうね。で、あの頃のテナーのモノマネをしていたら、偶然、あんな声になってしまったのかもしれません。だとしたら、愛情の勝利ですね。でも、生身の人間の声とは…ちょっと違うかも。
でもでも、今時、ああいう声色で歌う人、いませんから。面白いです。
本当に珍しい声を二人も聞いちゃいました。
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コメント
あらまあ。声は不思議ね。
しかし、そんな特異な声をもつなんて、ある意味、声は奇跡?才能?の集まり。歌でなくても声の生かしたお仕事、声優、アナウンサー、お坊さん、などなど、沢山あるね(笑)
アデーレさん
声と書きましたが、要は発声法。得意な発声法を駆使していたわけです。発声法が変われば、自ずと声は変わります。
声と発声法は密接な関係があると思います。声優さんの中には、全く別人にしか聞こえない声を何種類も持っていて、おまけにその声で歌っちゃう人もいますが、あれはそれだけたくさんの発声法を持っているんだろうと思います。
よく、クラシック声楽などでは、いわゆるベルカントが素晴らしい発声法と言われますが、要は、クラシック声楽にはクラシック声楽の理想と言うか、規範的な発声法があって、そこに近ければ美声、遠ければ悪声って事になるのかな…なんて思いました。
で、音楽ジャンルごとに、美声悪声の基準が違うという事もあるかなって思います。