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遠鳴りと側鳴り

 遠鳴り(とおなり)と側鳴り(そばなり)…声楽ではあまり使わない言葉かもしれませんが、合唱とかフルートとかの業界では、よく聞く言葉ですよね。『遠鳴りする楽器』とか『あの人の声は側鳴りだ』とか言って使うわけです。

 具体的には、音量の割にはホールの隅々までよく聞こえる音が“遠鳴り”で、音量の割にはホールではよく聞こえない音を“側鳴り”と言います。さらに具体的に言うなら、舞台の上では「小さめの音かな? この程度だと

 音とは波であり、我々が音として認知している波は、一般的には、複数の波(正弦波)が合成された複雑な波形をしたモノなんです。その複数の波が複雑に合成しあって、いわゆる音色を作るわけです。このあたりは、パイプオルガンとかシンセサイザーとかで音色を作る過程を想像してもらえると、分かりやすいかもしれません。

 基音に対して、様々な倍音を載せたものが、音声なんですよ。

 複数の波が合成される過程で、それぞれの波はお互いに強め合ったり、打ち消し合ったりするわけです。そ客席で聞こえるのかな?」という印象なのに、客席では十分な音量で聞こえる音が遠鳴りで、舞台の上だとうるさいくらいなのに、客席ではあんまり良く聞こえない音が側鳴りです。

 音楽って、聞こえないとダメなんですよね。それも客席でちゃんと聞こえないとダメなんです。これは当たり前の前提ですね。

 一方、音って、波なんです。舞台上の声なり楽器なりが、その場の空気を振動させて、その振動が波となって、客席にいる観客の耳に届いて、始めて音楽が成立するわけです。

 音は波なので、当然、減衰します。減衰すれば聞こえなくなります。要は、減衰しづらい音が遠鳴りであり、減衰しやすい音が側鳴りと言って良いと思います。

 もちろん、音量は関係すると思います。大きな音ほど、減衰しても遠くまで聞こえます。でも、遠鳴り側鳴りと言った場合は、音量は関係しません。むしろ、同じ程度の音量なのに、客席までよく聞こえる音を遠鳴りと良い、聞こえづらいのが側鳴りなんです。

 同じ音量なのに、客席までよく聞こえる音と、聞きづらい音があるわけです。その原因は、一体どこにあるのでしょうか?

れは波における位相の関係で、そうなるわけです。まあ、難しい話は抜きにすると、一般的に整数倍、あるいは分数倍の関係にある波は、お互いに強め合い、そうでない波は互いに干渉しあって打ち消してしまうのです。

 “整数倍、あるいは分数倍の関係にある波”が多く合成された音と言うのが、いわゆる楽音であり、美しい音と呼ばれるものです。よく“倍音を多く含んだ音”とか“倍音がよく聞こえる音”と言う奴です。一方、そうでなく、無関係な音が何の脈絡もなく合成されると、それはノイズ(騒音)と呼ばれるわけです。

 なので、同じ音量であっても、遠鳴りをする音と言うのは、その音を形作る個々の音波が整数倍あるいは分数倍の関係にあって、互いに強め合うので、遠くまで響くわけです。側鳴りの音とは…一応楽音だから、整数倍や分数倍の関係にある音もあるけれど、それ以外の音波もたくさん含み、それらが互いに干渉しあって打ち消してしまうので、遠くまで届かないのだろうと思います。

 一言で言えば、ノイズの要素の少なくて、倍音を豊かに含む美しい音が遠鳴りする音であり、ノイズの要素を多く含み、倍音関係が歪んだ美しくない音が側鳴りと言えます。

 だから美的な必要のみならず、実用の意味も込めて、楽器も声も、美しさを求めていくわけです。

 もしも「あなたの声/楽器は、側鳴りですね」と言われたら、それは音が美しくないと言われているわけだし、それを遠鳴りにしたいのなら、発声/発音方法の練習をして、美しい音で奏でないといけないって事ですね。

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コメント

  1. アデーレ より:

    私、ちょい側なりです!レッスンで先生に言われました~。
    客席に届く声ってどうしたら!?私も知りたいです!

  2. のんきなとうさん より:

    こんにちは。

    いろいろな声楽の本を読んでいると、「響く」ための条件のひとつは、「豊富な倍音成分があること」だそうです。

    リチャード・ミラーの本には、よく「歌手のフォルマント」という言葉が出てきます。
    声の周波数スペクトルをみると、いろんなピークがあります。このピークが、いわゆる「倍音」であり、フォルマントだそうです。

    「歌手のフォルマント」とは、高いほうの倍音成分(3000Hz付近)のピークの事らしいですが、ホールに響き渡り、オーケストラの音にかき消されない声は、この「歌手のフォルマント」がしっかりとあるそうです。

    もうちょっと説明すると、たとえばA4のラは440Hzですが、この音を出しているときの周波数スペクトルをみると、この440Hzがピークとなって、低いほうも高いほうもなだらかに落ちていくのが普通の人です。
    ところが、声楽家の周波数スペクトルを見ると、人によって違ういろんなピークがありますが、「歌手のフォルマント」である3000Hz付近のピークは声楽家なら絶対にあるそうです。素人ではこれが無いのです。

    今はいい時代で、この周波数スペクトルを見るソフト(アプリ)が無料で手に入ります。
    先日ダウンロードして、お気に入りのオペラ歌手の周波数スペクトルを片っ端から見てますが、ホントにそのとおりでした!
    フローレスも、パヴァロッティも、ドミンゴもカレーラスもグリゴーロも(みんなテナーだな)
    みな、3000Hz付近にビンビンにピークがありました。

    さて自分は、ということで、8ヶ月前の習い始めから、ずっと自主トレを録音してきましたが、最初のころの周波数スペクトルをみたら素人丸出しのピークなしでした。
    最近の録音は、ちょ~っと、ほんのちょっと3000Hzにピークが出てきていて、「おお、歌手のタマゴくらいにはなったか?」とうれしいです。
    先生からも「だいぶ響くようになってきた」とこないだ言われたので、やっぱりココなんですね。

  3. すとん より:

    アデーレさん

    >客席に届く声ってどうしたら!?私も知りたいです!

     まず楽器として声を完成させる事…じゃないかな? そしてこれは独学だと結構厳しいらしいですよ。きちんと先生とか先輩とかに声を聞いてもらって、少しずつ修正をかけて身につけていくものらしいです。もちろん、平行してカラダを“歌えるカラダ”に変えていく事も大切でしょうね。

     まあ、焦ることはないと思います。私もまだまだだし(笑)。たとえ少しずつでも休みなく前進していれば、やがて発声も完成していくものと信じています。

  4. すとん より:

    のんきなとうさん

     歌手のフォルマントと言うのは、よく聞きますね。私は、音声分析ソフトを使って、このフォルマントを確認しながら練習している人を、一人知ってます(笑)。もちろん、そんな事をやる人は、テノールに決まってますが(大笑)。

     ネットをググれば、確かに無料ソフトがいくつかありますね。私も一つダウンロードしようかしら?

     おそらく、この手のソフトを使って、時折自分の発音を確認するのは、案外大切な事かもしれませんね。ほんと、ダウンロードしてみようかしら?

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