さあ、みなさんはどちらだと思いますか?
実はこの質問は、以前レッスンの時に、キング先生が、私たち生徒さんたちにした、質問です。もっとも「ソ♯とラ♭」ではなく「Gis(ギス)とAs(アス)」という表現をしましたが…。それはともかく、固定ドなら「ソ♯とラ♭」です。
一緒に習っているお姉様は「ソ♯とラ♭は同じ音です」と答えて、ブッブーでした。「ピアノならそうでしょうが、今は声楽の話です」と言われてました。
私は平均律とか純正律とかいう言葉を知っていたので、この二つはおそらく、ちみっと違う音だろうなあとは察していました。しかし、実際に、どちらが高いかまでは分からなかったので、山勘で「ラ♭」と答えました。だってソとラは元々、ラの方が高いわけだから、低い方(ソ)を多少高くしても(ソ♯)、元々高い方(ラ)を少々低くしたもの(ラ♭)にはかなわないだろうと思って、そう答えました。
私もブッブーでした。
答えは「ソ♯」です。ソを半音あげたものの方が、ラを半音下げたものよりも高くなるそうです。
わざわざ♯で半音あげるわけだから、きちんと広めに半音あげて、ここは音程が半音上がりましたよ!って、観客にアピールしながら演奏しなければ、本当の♯の効果が得られないというわけです。同様に♭なら、きちんと広めに半音を下げて、観客にアピールしないといけません。
へえーと思いました。それが臨時記号の意味と効果なのね…、と改めて納得。
そして、この事は、弦楽器のように、自分で音程を作っていく楽器の世界では常識なんだそうです。そう言えば、キング先生、歌をやる前はチェロをやっていたんだよなあ…。そりゃあ、弦楽器の世界にも詳しいわな。
なんでこんな話になったのかと言うと、今やっている「オンブラ・マイ・フ」にも臨時記号が若干出てきます。その臨時記号の箇所を、私たちがピアノ的に歌ってしまうので、つまらないと、キング先生がおっしゃるわけなのです。きちんと声楽的に音程取って歌ってください、というわけです。
♯や♭のみならず、ナチュラル(ネットだと記号がうまく出ません)でも同様ですし、音程だけでなく、音量に関する、pやfについても、やはり同様なのだそうです。つまり、音楽の世界の記号には、絶対値があるわけではなく、常にすべからく、相対的な値があるから、その場にふさわしい相対的な値で処理しなければ、美しくないよ、ということなのです。
結局、美とは感覚に依存せざるをえないものだという点を忘れてはならないということなのでしょう。
コメント
初めて聴きました。(弦楽器はやりましたが・・・)
なるほど~と目から鱗です。
ところでピッチの合わない弦楽器演奏はどんなにうまくても下手に聞こえてしまいますね。
歌もそうですよね。
ですが自分の録音を聴くとがっくりすることがよくあります。
初めてお便りします。あなたのサイトは、ベーゼンドルファーの記事を探していて、お目にかかりました。
それ以来、何度となく、楽しませて頂いております。私は、小学生の時から合唱、器楽部、吹奏楽部と楽しんできましたが、本当に先生についたことはありません。すとんさんの話は、目にうろこのことも多く、へエーと感心しながら読ませてもらっています。ベーゼンドルファーの事からもおわかりでしょう。レ・フレールが大好きで、私もピアノを、ほんの少したしなみます。よろしくお願いします。
>Ceciliaさん
実は以前、同じような話を別の弦楽奏者から聴きましたので、キング先生のおっしゃることは、おそらく弦楽の世界ではごく常識的なことなんだろうと思います。…なぜ私がそれを忘れていたかは聞かないで!…
ピッチの合わない弦楽器演奏…というよりもオーケストラは、はっきり言って、ある意味凶器です。それほどうまくないアマオケの演奏は時々、聞いていて殺意を抱きたくなる時ありますもの。ま、それほど自分で音程を作ってゆく楽器は難しいということですね。
歌も実は同様なのですが、自分のことは、今回は棚に上げておくことしてます(笑)。
>chikoさん
いらっしゃいませ。私とて、常に先生についていたわけではなく、やはり独学の期間がかなり長いのでした。
費用とか、時間とか、ライフスタイルの問題から、先生に師事するって事は、社会人になると、本当に難しいことです。これなら学生時代にきちんとやっておけばよかったなあと、オジサンになってから思うことしきりです。
このブログは、そんな昔の自分に向けて書いている側面があります。音楽は先生について習うのがベストですが、それが叶わないなら、雰囲気だけでも…ってところでしょうか。
感想やお叱りも含めて、また気が向いたら、コメントください。
確かに、十二平均率で考えると、同じ音なのですが、私は感覚的にソ♯のほうが高いんじゃないかな~と思っていました。うーん、私の感覚もなかなかのもんですね(笑)
ピアノ弾きはこういうピッチを合わせる作業を自分でやらないので、感覚があんまりない人も結構いるんじゃないかな~という気がしないでもないんですが(というか、そういう話をピアノ弾き同士であまり、しないので)では、なぜピアノ弾きの私がそういう感覚を持っていたんだろう、とふと、振り返ってみると、合唱もやってたし、合奏もやってた(しかも打楽器でも、音程のあるティンパニーやマリンバもやってたし)ってのもあるのかもしれませんが、ひょっとして、歌のレッスンで言われたのかもしれません。
>それほどうまくないアマオケの演奏
ぎゃははは!!
私、ある程度絶対音感があるらしいので、拷問のような思いをしたことがありますよ…。義理券(どこからどう回ってきたのか不明だが、友達の友達というタモリのような世界から回ってきた、アマオケのチケットだった)だったので、非常に辛かった…。
>ことなりままっちさん
たとえ絶対音感がなくても、普通の審美心の持ち主なら「それほど上手くないアマオケの演奏」は地獄です。でもそれを逆に言うと、上手いオケの演奏は天国ものって事ですね。
合唱は、たとえ「それほど上手くない」場合でも、アマオケほどのすごいことにはなかなかなりません。これはおそらく人間の持つ、無意識の調整能力って奴で、下手な人ほど周りに釣られてしまい、結果、どうにかなってしまうからでしょう。
技術が進歩し、楽器にもAIが搭載されて、この
「無意識の調整能力」が備わったら、いくらダメなアマオケ(失礼!)でも、聞けるようになるかもしれませんな。
ソ♯のほうが高い!!
音(音取り)の基準として、ピアノの鍵盤が基準としてしまっている私にとって、初耳の貴重な情報でした。
弦楽器は、音叉をラの基準にしているとおもっていました?が、管楽器はB(べー、シ♭)で音合わせ(チューニング)するとか・・?
また、ピアノの調律もラをかつては、440ヘルツにしていたが、いまは、442ヘルツにしているとか・・。
私は、絶対音感をもってないので、すべて移動ドで感じてきこえてしまうので、よくわからないのですが、・・基準の音ってなんなんでしょうね。・・前に、人間の赤ちゃんの産声はラだってきいたことがあるんですけど・・・ふしぎですね。
>ひと休みさん
私も音律について、それほど詳しいわけではないのですが、弦楽器に限らず、アンサンブルをする楽器は、演奏する前に必ず、音合わせをします。どの音で音合わせをしてもいいのだけれど、そこは慣習って奴で、たいていはオーボエの出すラ(440Hz前後)で合わせます。
ラを440Hz前後と書いたのは、時代とか地域とか季節とか会場の都合とかで、少しずつ数字を違えてくるからです。なぜ違うかと言うと、高いほど聞き応えがあるので、効果を重要視すれば高くなりますが、その一方で高くすると(特に弦)楽器に負担がかかりますので、その辺りも考慮に入れて、適当なところに決めるのです。あと室温やライトのあたり具合で、演奏中に音が高くなってゆくので、それを考慮すると聴いたこともあります。
一般的には日本のオケは440Hz前後、ヨーロッパが442Hz前後、アメリカはもっと高めを好むと、これまた人伝てに聴いたことがあります。
それとドレミの間隔については、ピアノは平均律という基準で、それに対してオケや声楽は純正律という基準で音程を作ってゆくので、ドを同じ高さに揃えても、平均律と純正律では、レやミ…は違った高さになってしまいます。