声楽のレッスンの続きです。次は、ガスタルトン作曲の「Musica proibita/禁じられた音楽」を歌いました。
しかし、この曲、譜読みもまだまだの状態なんですよ。音程もあちこち怪しいし…なので、通して歌うにしても、あっちこっちボロボロで、結局、最後までたどり着けませんでした(涙)。
で、早速、曲のレッスンとなりましたが、まずは歌詞の内容から入りました。
まだまだ音取りですら不完全な状態なので、歌詞の訳なんて、もちろん全然手に付いてませんが、そんな事は先生には関係ありません。いやあ、イタリア語は、読みはなんとかなりつつありますが(だってローマ字だもん)、意味は全くダメな私です。きちんと辞書をひいて、頭をウンとひねらないと訳せませんよ(涙)。
なぜ、いきなり歌詞の意味から入ったのかと言うと、この曲には、登場人物とストーリーがあるからです。そこを踏まえて歌わないといけないからなのです。
まず、登場人物は二人います。娘と青年です。最初は娘が登場します。
彼女は、彼女の部屋のバルコニーの下で毎晩歌われるセレナータを思い出しながら、胸をときめかせています。なんて素敵なメロディ…。そして、歌っている人もなんて素敵なの。ああ、胸が苦しい…。
昼間、その人の事を思い出しながら、セレナータをくちづさんでいると、お母さんが怒って、歌をやめさせます。娘はしぶしぶ母親に従います。でも娘は、なぜ母親がその歌を止めさせるのかが分かりません。だから、母親がいなくなれば、またセレナータをくちづさんでしまうのです。そして、彼女はセレナータを歌いながら、あの青年を思い浮かべます。
ここで、歌詞の主役は、セレナータを歌う青年に変わります。
ああ、君の黒髪にキスしたい。君のクチビルに、その瞳にキスしたい。君のためなら死んでもいい。ああ、ボクの天使よ、宝物よ!
ここでまた歌詞は娘の視点に戻ります。
娘は昨日の事を思い出します。昨日、彼女が街を散歩している時に、道で青年の姿を見かけたのです。青年は娘の姿を見ると、いつものセレナータを歌いかけます。
ああ、君の黒髪にキスしたい。君のクチビルに、その瞳にキスしたい。君の胸に抱かれて、愛に酔ってみたいんだ!
うへー、この歌。こんな意味だったんだ。だって、この歌って、たいていテノールが歌っているよ。それも力強く歌いあげているよ。だから、もっと勇ましい感じの歌かと思ってました。それが実は、歌の主役は、恋にとまどう乙女だったとは…。いやあ、驚き。ガチガチの少女漫画のような歌じゃん。先生が、最初に歌詞の意味を確認した理由がよく分かりました。
とにかく、歌の中に、男が歌っている部分と、女が歌っている部分があるわけですよ。もちろん、女性の部分では女性らしく、男性の部分では男性らしく歌うわけです。結構、演劇的な歌ではありませんか!(そんなふうに聞こえたことはないけれど:笑)。いや、演劇的って言うよりも、演歌? 歌の中で別の歌が引用されて歌われるなんて、八代亜紀の「舟唄」みたい(笑)。
歌詞だけ見ていると、テノールが歌うよりも、女性が歌う方がよさそうだけれど、女性が歌っているのがあまりないのは、メロディがいかにもテノール向けの『しっとりと軽い』曲風だからでしょうね。音楽だけなら、典型的なテノールソングだもん。
イタリアの歌が、歌詞よりも音楽を中心に回っているという事がよく分かる例だと思います。それにしても、なんて乙女チックな歌詞なんだ。まるで少女漫画みたい(笑)。
とにかく、この歌、メロディーはテノールソングですから、曲の終盤に高音Aを歌う箇所があります。そのAに行くために、E-F#-G-Aと上行音形を登っていって、最後のAをロングトーンにして歌うのですが、ここの歌い方の練習しました。
この曲で一番盛り上がるのは、当然、最後のAですから、そこに向かって歌っていくわけだけれど、そのために、クライマックスをAに持っていくと、歌としては、あまりよろしくないのだそうです。この曲のクライマックスは、最高音Aの一つ手前のGに置いて、そこまでギリギリと緊張を高めて歌い、Gの次のA(最高音)では、すでに興奮から少し冷めて、ほどほどの力で歌うのがよいのだそうです。
理由は…Gをフルパワーで出せば、Aはその勢いでポンと出るから。またAはロングトーンなんだけれど、フルパワーのロングトーンは疲れてしまうのて、80%パワーぐらいで最高音のロングトーンに挑んだほうが何かと都合が良いのです。
まあ、確かに、高音って、力めば力むほど失敗するよね。
私はGとかAbぐらいまでなら、何をどうしても出せますが、Aはなかなか難しいです。その難しいAに照準を合わせてパワーを入れて歌うと、ノドがしまってしまうので、その手前に照準を合わせ直して、肝心のAは手前のGの余力で歌った方が全然いいって事なんですね。
とにかく、軽く軽く歌うのです。高音だから言って、気合を入れずに歌うのが良いのです。ああ、難しい。
最後に、この曲を女性が歌うとどうなるのかと、YouTubeで探してみたら、こんな感じでした。
あれ、いいじゃん。いや、歌詞の内容を踏まえて聞けば、むしろ男性テノールが声を張り上げて歌うよりも、こういう感じに乙女チックに歌った方が良いんじゃないの? だいたい、歌の中に青年が登場すると言っても、娘を通して登場するんだから、全編女性が歌った方が良いかも…。まあ、歌曲だから、男が歌っても女が歌っても良いのだろうけれど、なんか女性の方が、曲の良さがより発揮されるっぽいなあ。
少なくとも、娘が歌っている部分は、こんなふうに乙女チックに歌った方がよさそうだという事だけは分かりました。私が歌うと、ついついヒロイックに歌い上げてしまうけれど、それはだいぶ違うという事だけは確信しました。
↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村
コメント
すとんさんの訳詞を読んでからなので、余計情景が浮ぶ様な歌い手ですね。
女声物と言われても違和感ありません。
ふと気づくとマイクがセットされてるので、何故?と思っていたら、
レコーディング会社のロゴが浮かび上がり、なる程と思った次第です。
それにしても、頻繁な更新に頭が下がります。
wasabinさん
でしょ? 歌詞を読むと、女声モノにしか聞こえないでしょ? 特にこのソプラノさんのように歌われちゃうと「なんで、この曲を男性歌手が歌うの?」って思っちゃうわけ。でも、実際、この曲はほぼ男性歌手(それもテノール)によって歌うのが一般的なわけだし、有名なテノールさんは、皆この曲をリサイタルで歌ったり、レコーディングしているしね。やはりメロディの作り方がテノールを選ばせているんだと思います。
曲の最後で一発高音を出すところが、テノール的なんでしょう。もしもこれが、高音は曲の途中で使って、なおかつメロディをコロコロ動かせば、ソプラノさんが食いつくんだよね(笑)。
>それにしても、頻繁な更新に頭が下がります。
あ、どうも。一応、“1日1記事”をマイ・ルールにしているもので…。