さて、二重唱のレッスンです。
ひとまず、最初のレッスンなので、最期まで合わせてみましょうという事になりました。「止めずに最後までいきますよ」と言って始めたものの、やっぱり途中で何度も止められては、やり直しをしました。ま、仕方ないですね。
例えば、私のネモリーノが堂々と立派な態度すぎるとか、歌いまわしがストーリーにふさわしてくないとか、歌詞の譜割りが違っているとか、イタリア語の発音があっちこっち違っているとか、噛んでいるとか、発音が曖昧すぎるとか…。
注意を受けた分量は、私よりもNさんの方が多少多い感じになりました。それについてNさんは少し凹んだようにも見えましたが、これは仕方ないです。だって彼女にとって、この曲は新曲であるのに対して、私は一度仕上げた曲であって、今回は再演なんですから、その私がNさんよりもたくさん注意されたら、最初に仕上げた奴は一体なんだったのって事になるわけです。
それを考えれば、Nさんへの注意は、むしろ少ないくらいです。もしも私が新曲だったなら、この倍以上の注意を受けていたに違いないのですから。さすがにY先生に「Nさんは譜読みが速いから」と言わせただけの事はあります。
その点、私は、譜読みも遅ければ、暗譜も遅いからなあ…。
この二重唱では、ネモリーノの歌うパートには、伝統的にバリエーションがある部分が3箇所あります。最初のバリエーションはパスします(私には難しすぎるんですね)。そこで2番目のバリエーションをどう歌うかを相談してみました(3箇所目のパートはカットする部分に含まれていますので、今回はやりません)。
この部分を、楽譜どおりにバリエーション無しで歌うのも一つの方法だし、キング先生に習ったバリエーションで歌うのも一つの方法だし、リッツに載っている伝統的なバリエーションで歌うのも一つの方法です。あるいはいっそ、私オリジナルのバリエーションを作って歌ってもいいのですが…今回は、歌い慣れたキング式のバリエーションで歌いたいですね。でもY先生は、キング式のバリエーションよりも、伝統的なリッツのフレーズの方がいいとおっしゃいます。なので、この部分は一度ペンディングにして、ピアノニストさんを加えて、どのバリエーションで行くか決めることにしました。
それにしてもNさんはいいね~。実に良い声を持っていらっしゃいます。私と一緒に歌うと、実にキレイにハモります。つまり、私の声に負けていないわけです。
自慢をするわけではないのですが、妻も含めて、私と二重唱をすると、大抵のソプラノさんは負けてしまいます。私の声とハモるのではなく、私の声にかき消されてしまうのです。これは音量的な問題もあるけれど、音質的な問題もあります。音程的にはソプラノの方がテノールよりも高いのだから、かき消されるはずはないのですが、それでもきちんと聞こえる事は少なく、ましてやハモる事はまずないのですが、Nさんの声は私の声にかき消されてしまう事はなく、きちんとハモって聞こえるんですよ。つまり、Nさんは、私と同等かそれ以上の声を持っている方って事になります。
アマチュアでも、歌の上手いソプラノさんならたくさんいますが、声を持っているソプラノさんって、そんなに多くはないです。少なくとも、妻は違うし、キング門下にもそういう方はいらっしゃいませんでした。
その点、Nさんは声のあるソプラノさんで、とても貴重な存在です。もちろん、声はあるに越したことはないにせよ、声があるだけで歌は歌えないわけで、そういう点では私に通じる部分はあります。とは言え、あるのは“通じる部分”だけであって、基本的に、私よりも数段、歌はお上手なわけです(そりゃあ、そうだ)。
それにしても思った事は、このオペラにおけるネモリーノ(テノール)は、割とやさしく書かれているけれど、アディーナ(ソプラノ)の方は、そんなに簡単じゃないって事です。でもNさんは頑張っていますから、きっと本番では見事に歌っちゃうんだろうなあって思います。
そうそう、二重唱の最後の部分。ソプラノは、FからBに上がってEbに落ち着いて解決しますが、テノールはAからDに一度下がってからEbに上がって解決します。楽譜どおりならこの通りなんだけれど、Nさんの希望で、この最後の部分は、テノールとソプラノで同じ音で歌って終わりにしたいという申し出がありました。つまり、テノールをAからDに下がらずに、AからBに上げてフェルマーターをかけてから、Ebに下がて解決しましょうって事です。つまり、Aで一度伸ばしてから、さらに上がってBでも伸ばして終わるという、二段階ジャンプアップの終わり方をしましょうってわけです。すげえぞ、これ。
へへへ、実は私はまだ、歌でBをきちんと出した事ないよ(汗)。
とりあえず、試しに一回Bで歌ってみたけれど、ちょっとばかり届いてませんでした。実は私、Bには全然届かないだろうと思ってましたので、一回試しに歌ってみて「ほら、全然無理だよ。Bは高くて無理だから、私は楽譜どおりに歌います」と言うつもりだったけれど、案外、その近くまでは出せるモンだなあと思いました。これなら、もう少し練習を重ねていけば、行けちゃうかもしれないと思いました。ので、ひとまずソプラノと同じBで歌えるように練習を重ねていく事にしました。
本番近くになっても、相変わらず、届かないままなら、楽譜どおりに歌えば済むだけの話なので、とりあえず努力をしてみようかなって思ったわけです。
それにして、ソロの二曲は、最高音をAbに押えて安全策を取っているのに、二重唱の方でBを歌うなんて…ね。今回、一番の安パイのはずだった二重唱が、一番デンジャラスな曲になっちゃいました。
今回、始めて、発表会で撃沈抜きで歌えるかなあ…と期待していただけに、ここに至って撃沈の可能性が浮上してまいりました。ふふふ。
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