スポンサーリンク

曲は声に合わせて考えよう

 先週から書いていた、声楽レッスンの続きです。今回は、曲の練習のあたりから報告します。

 まず、何を歌うかですが…実は私、10月に地元の市民文化祭で行われる“クラシックコンサート”って奴にエントリーをしましたので、そこで歌います。で、(入門早々ですが)今回から、そのための準備を始めましょうってわけで、まずは“クラシックコンサート”で歌う曲の選曲を、先生と一緒にするところから始めました。

 “クラシックコンサート”での一人の持ち時間は約7分なので、5~6分前後の長い曲を1曲歌うか、3分程度の中規模な声楽曲を2曲歌うか…を考えるわけですが、1曲しか歌わないと、それが撃沈した時に恥ずかしいし、長い曲は暗譜も大変なので、今回は3分前後の曲を2曲歌うというパターンでチャレンジする事にしました。で、先生と「どれを歌いましょうか?」と相談したわけです。

 「まず、今一番歌いたい曲は何ですか?」と尋ねられたので、トスティの『セレナータ/La Serenata』を歌いたいと即答しました。

 私はこの曲が大好きで、キング門下にいた時も、この曲を歌いたいと何度かキング先生に直訴した事はありますが、いつも軽く拒否されていた曲です。せっかく門下も変わったわけだし、ダメもとで言ってみたわけですが、先生は「じゃあ、ちょっと歌ってみましょうか?」と軽い感じで、さっそくレッスン開始です。

 つまり『…歌いたいと言い出した段階で、譜読みは終わっているよね…』って事らしいです。え? え? え? って感じです。

 先生、初見でセレナータの伴奏を弾き始めました。この曲の伴奏って、実は譜面が黒くて面倒くさいのですが、結構サラサラと弾いていました。「たまに間違えるけれど、気にせず歌ってください」とおっしゃってましたが、いやいや、なかなかピアノも名手ではないですか! そう言えば、仕事を演奏メインにシフトされる前は、声楽教室の傍ら、ピアノ教室もやられていたそうで…そりゃあ、ピアノも名手なはずですねえ。ちなみに、その前は、学校の先生もやられていたそうです。売れる前は学校の先生をやっていましたって言う歌手の方は大勢いらっしゃいますが、Y先生もそのタイプの方だったんですね。やはり、音楽の道に進むなら、生活の保険としての教員免許は、必須ですね。

 さて『セレナータ/La Serenata』をサラっと歌ってみたところ、注意されたのは、やはりお腹の支えです。「全部が無理でも、せめて出だしの音ぐらいはしっかり支えましょう」と言われました。それと、歌が小さくまとまっていて、とても残念だと言われました。もっと、声が出るはずだし、もっと歌えるはずだと言われました。

 私の歌に足りないのは“可動域”だとも言われました。腹筋の可動域、アゴの可動域、ノドの可動域…。あらゆるカラダの可動域が狭くて、それが原因で、とても歌が残念に聞こえるのだそうです。まずは、カラダを大きく動かして歌ってほしいと言われました。

 さらに、動かす方向にも問題があるようで、私の場合、あらゆるカラダの動きが下に向かって動いているそうなんです。でも、この下向きの動きは声楽ではNGなわけで、歌ではカラダはあらゆるベクトルに向かって、それぞれに固有の動きをしていかないといけないのだそうです。

 特に私の場合、残念なのは、アゴの動かし方だそうで、私はアゴを動かす時に、下アゴを下に開ける(アゴを落とすって感じです)というやり方をしているのですが、それはNGで、上アゴをメインに動かしてクチを上に向かって開く方がいいし、ノドにしても、奥を開けるのではなく、ノドの手前を下げるべきで、ノドの手前を下げれば、奥は勝手に開く(人間はそういう風に作られているのだそうです)ので、奥の事はあまり気にする必要はないと言われました。また、クチビルは腹話術師のように、残念なくらい小さな動きだったとも言われました…とにかく、次にこの曲を持ってくる時は、そういうふうに、カラダの各所を、あるべきベクトルに向けて、可動域を広く動かして歌う練習をしてくるように言われました。ん? って事は、この曲はOKってこと?

 「この歌を、こう歌いたいという思いがあるだろうけれど、今はそれを一度横において、とにかく、大きく大きく歌ってみてください。あなたが大きく歌ってくれれば、それを私が叩いて、良い形にしていきます」と言われました。つまり、お手本的な歌い方に、はめるのではなく、私の個性を生かした歌を、お客さんにお聞かせできるようなカタチに整えていきましょうというわけです。

 とにかく、カラダの可動域を広げるために、毎日しっかり柔軟体操をしなさいって言われました(汗)。「歌って、健康でないと歌えないので、歌手って、本来は健康なはずなんですよ」とニコニコされながらおっしゃってました。「ただ、周りの人にチヤホヤされやすいので、ついつい食べすぎてしまうんですよ(笑)」とも言ってました。歌手と肥満の問題は…根深そうです(笑)。
 
 
 一曲目はトスティの『セレナータ/La Serenata』で決まりです。で、二曲目は何にしましょうか? とおっしゃるので、これまたダメもとで「ベッリーニの『優雅な月よ/Vaga luna, che inargenti』を歌いたいです」と言ってみました。

 さすがに今度は、先生も即座に「低すぎて、あなたの声に合わないね」と言われました。つまり、Noって事です。

 そこで、恐る恐る取り出したのが、リコルディ社から出ている、高声用のベッリーニ歌曲集です。「この高声用の譜面で歌いたいんです」と言って、先生に楽譜を見てもらいました。先生はそれをザッとご覧になって「これならいいでしょう」と言われました。

 そこで私が「でもこの曲は歌曲ですし、作曲家の意図を尊重して、オリジナルの原調で歌った方がいいかなって思うのですが…」と言ったところ「歌曲は、歌手の声に合わせた調で歌うべきです」と即座に答えました(おぉ!)。

 さらに私の場合『優雅な月よ/Vaga luna, che inargenti』を原調のままで歌うなら、何の意味もない、とまで言われました。歌うなら高声用の譜面で歌わなければいけません、と言われました。

 ちなみに『優雅な月/Vaga luna, che inargenti』の原調はAb-durですが、高声用だとC-durです。つまり、高声用はオリジナルよりも、長三度高くなっているんです。私の場合、原調なら、本当に楽勝で歌えますが、高声用だと、数ヶ所、危険なところがあります。そこの部分で躊躇しているのですと言ったら「私が本番までに何とかします」と力強く答えてくれました。

 とにかく『優雅な月よ/Vaga luna, che inargenti』は、この高声用のバージョンで歌うことに決めました。万が一、本番当日までに高声用のバージョンで歌えなかった場合は、そこで楽に歌える原調のバージョンにして、調を下げて歌うのではなく、その時は、潔く、別の曲を歌う方が良いでしょうとなりました。

 その万が一の時の曲は…イタリア古典歌曲の『ニーナ/Nina』(もちろん高声用ね)です。この曲を保険にしておきます。なので、一応、万が一に備えて、自宅では『ニーナ』の練習もしておきます。この歌も、とても歌いたかった歌なんです。キング門下の時は、なかなか取り上げてもらえず、ようやくレッスンで取り上げてもらう約束をしていたのに…ケンカ別れをして、ついにキング先生からは習えなかった曲なんですね。なので、とりあえず、セルフレッスンをしておきます。

 さて、すでにこの段階で、レッスン時間を大きく越えていたので『優雅な月よ/Vaga luna, che inargenti』を歌うことはありませんでした。そこで「この曲も大きく歌って来た方が良いですか?」と尋ねたら「この曲は、まっすぐに歌ってきてください」と言われました。「とにかく、まっすぐにまっすぐに歌うのが、この曲の歌い方なんです。この曲は、コンクールなどでも歌われる曲なんだけれど、まっすぐに歌うのが実に難しい曲なので、ひたすら真っ直ぐを心掛けて歌ってきてください」と言われました。

 今回の選曲は、私の希望がすんなりと通ったカタチになりました。ちょっと気分がウキウキしています。でも、これはY先生の方針のようなんですよ。

 「歌は、歌いたい歌を歌うべきだと思ってます。強制されて、歌いたくない曲を歌っても、面白くないでしょ? 歌いたい歌だから、一生懸命練習するわけだし…だから、すとんさんも、自分で選曲した曲ですから、頑張って練習していきましょう」と言われました。なんか、今まで歌いたい歌をことごとく却下されてきた身としては、そんなツマラナイ事が、とてもうれしかったりします。練習、ガンバロっと。
 
 
 と言うわけで、10月に行われる地元ののクラシックコンサートでは、トスティの「セレナータ/La Serenata」とベッリーニの「優雅な月よ/Vaga luna, che inargenti」で出演する事にしました。まあ、ちょっとだけ背伸びをした選曲ですが、あと2カ月ちょっと、この二曲に真剣に取り組んで、今の時点で最高の歌唱をお聞かせしたいと思ってます。
 
 
蛇足 実は、Y先生門下は、8月のお盆の時期に発表会を行います。私たちは入門時期が遅かったので、そこには出演しません。さすがに、7月に入門して、8月の発表会出演ってのは…無いですよね(笑)。それにだいたい、すでにプログラムは完成して、関係各部署に配布済みだし(笑)。で、私もそのプログラムを見せていただいたのですが、なんか、キング門下の発表会とは、演奏される歌が全然違う…。これが門下の色って奴なのかも…。とにかく、私が知っている曲は、ソロにせよ、二重唱にせよ、ほとんどありません。これって、出演者が自分の好きな曲で出演しているのだとしたら…皆さん、相当、マニアだわ…。

 ちなみに、皆さん、そこそこ大きな曲を2曲ずつ歌うようです。これって、人数が少ないから出来るんですよね。

 出演者は14名(うち男性は5名)とこじんまりしている上に、この発表会って、三人の先生方の合同発表会なんですよ。つまり、お一人の先生が抱えてらっしゃる生徒さんって、せいぜい4~5名なんですね。皆さん、演奏仕事が主体で、教える方は力を入れてらっしゃらない先生方とは言え、発表会の規模が小さいですね。キング門下って、私が辞めた時でも、約30名ばかりいましたから、規模的には全然違うんだなあ…って思いました。

 あんまり違うんで、発表会を見に行くのが、今から楽しみです。

蛇足2 そうそう、レッスンの翌日は、朝、起きるのがとてもつらかったです。前日の声楽レッスンのハードさにカラダが相当参ったようです。支えの練習って、ほんと、つらいですし、本当にカラダを使って歌うと、檄ハードです。いかに今までが生ぬるい歌い方をしていたかって事ですが、それって、私自身に、まだまだ伸び代があるって事で、疲れて、かったるいけれど、ココロはハレバレとしています。だって、まだまだ上達する可能性がたくさんあるし、まだまだ学ぶべき事が山のようにあるって事ですから。

 キング先生には散々世話になったし、感謝もしているけれど、本当の本当に、先生を替えて良かった~と思ってます。これは負け惜しみとかではなく、本当にそう思います。たぶん、タイミング的にも、ちょうどよかったんじゃないかな? ああ、音楽の神様に感謝感謝です。

↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村 クラシックブログ 声楽へ
にほんブログ村

コメント

  1. 椎茸 より:

    すてきな選曲ですね。トスティいいですよね!
    自分の歌いたい曲を見つけるには、自分自身色々聴いていく必要がありますよね。それだけだと大変なので、私は、先生が「こんなのどう?」と曲を出してくれるのを楽しみにしています(半分アテにしてます)。

    がんばってください~

  2. すとん より:

    椎茸さん

     選曲って難しいですね。自分が歌いたい歌が歌えるのは、もちろんうれしいですが、それだけでは、自分が知っている曲しか歌えないという幅の狭さが出てしまいます。世の中にはたくさんの名曲があるのに、それを知らないばかりに歌えないと言うのも寂しい話です。

     知識という面では、素人がどんなに頑張っても、専門教育を受けた人にはかないません。色々な歌を歌いたいですし、より自分に合った曲を見つけていきたいです。そういう意味では、選曲のアドヴァイスって大切だろうと思います。一番良いのは、折衷案でしょうね。先生の歌わせたい曲と、本人が歌いたい曲の中からバランスを取ってレパートリーを広げていく…事だろうと思います。押しつけはいけませんが、野放図もいけません(笑)。

    >がんばってください~

     はい、頑張りますよ。今までは、最高音が出るか出ないか、そればかりに気を取られていましたが、今回はそこはクリアできそうなので、もっと音楽的な本質的な部分に注意をしながら練習していきたいと思ってます。

タイトルとURLをコピーしました