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フルートは、歌いすぎると下品です

 フルートのレッスンに行ってきました。

 私が教室に着いた時は、すでに姉様のレッスンは終わり、彼女はフルートを片づけて、先生と雑談を楽しんでいましたので、私もいきなり、その雑談に加わりました。話のテーマは“差し歯”。滑落事故のため、数本の歯を折ってしまったH先生なのですが、今はとりあえず、仮の歯を入れているのですが、いよいよ、本格的な差し歯を入れるのだそうです。そのためには、どうやら健康な歯も数本抜かなければいけないそうで、今日は、そのために歯を抜いてきたそうなんです(お気の毒)。

 で、まだ麻酔が効いている状況にも関わらず、試しにフルートを吹いてみたら、若干の違和感はあるものの、普通にフルートが吹けてビックリしましたという内容の話。きっと、麻酔でマヒしているとかしていないとか関係なく、カラダがフルートの吹き方を覚えているんでしょうね、なんかスゴイや。
 
 
 さて、今回は、ロングトーン練習は無しで、いきなり、ミニヨン・エチュードの11番です。おそらく先生は、今回で合格させてしまうおうという目論見だったようですが、肝心の私がヘナヘナだったので、またも不合格、次回にご期待という事になってしまいました。

 不合格になったものの、11番はかなり吹けるようになってきました。ただ、部分的に色々とダメなので不合格なんですね。ですから、次回までに、取り出してダメな部分だけを集中して練習してきなさいと言われました。

 そのダメな箇所なんですが…三連符のところ。まずは“歌いすぎ”だそうです。ここはメロディーではなく、伴奏のフレーズですから、フレーズを歌わずに、息をまっすぐに棒吹きをするように言われました。「あなたのフルートは、いつも歌いすぎ。もっと、歌うところと歌わないところを分けないとね。歌っちゃいけないところで歌ってしまうのは、下品です」って言われました。ま、品性が下品なのは、今に始まったわけじゃないのですが(汗)。

 また、三連符だからと言って焦らないように、とも言われました。あくまでも伴奏のフレーズなんだからしっかりブレスをして“別物”として、落ち着いて吹くように言われました。

 三十二分音符のところは…もっと、リズムを鋭くするように。スタッカートのところも、もっと鋭くするように。私の演奏では、ちょっとモッタリした感じがしてしまうので、もっとシャープに、もっと尖った演奏をするように言われました。

 また、その次の「ドシミ」と言うフレーズでは「ミ」の部分をもっと軽く棒吹きに吹くようにも言われました。なんか、私の吹き方だと、音を押しつけているようなで、うっと惜しいのだそうです。

 最初のプリモ・テンポの前の小節のリタルダンドをもっと自然に、次のフレーズに違和感なくつなげるようにとも言われました。

 その下の段にある、ボコ・ピウの箇所は、そこで急ぐのではなく、その前のfのところでフレーズにゆっくりとブレーキをかけて減速してポコ・ピウに入るように言われました。そうすると、さほどスピードを上げなくても、十分加速したように聞こえるからです。

 二度目のプリモ・テンポの直前にはリタルダンドは無いけれど、そこもリタルダンドをかけて、自然な形で次のフレーズにつながるように吹くように。

 高音Fisは優しい音色で吹くように。スタッカートは、その音だけでなく、その直前の音も短めに。中音ドレミファ#がスラーでつながっているフレーズはよどみなく流れるように吹くこと。

 その他にも細々とした注意を受けました。

 注意を受けなから、フルート奏法の注意と言うよりも、音楽そのものの演奏法の注意を受けている事に気づきました。H先生は、私にフルートを教えているのではなく、フルートを手段として、クラシック音楽を教えてくださっている…のだと気づきました。この“気づき”は、果たして正解でしょうか?

 とりあえず、来週こそは合格できるように、注意された箇所をみっちりと練習してこなければ…。
 
 
 今回の雑談は、私のラ・フォル・ジュルネ話から、色々と広がっていきました。

 まず、なぜプロ奏者はゴールドフルートを使いたがるか。H先生がおっしゃるには「見栄えが良い」「音が細くて硬いので、広いホールでは有効である」なんだそうです。

 見栄えが良い…とは、ザックリ言ってしまうと「見た目、お高そう…」って事です。プロですから、高価な楽器を使ってますというのを、観客に見せるもの必要な事ですからね。

 音が細くて硬い…とはゴールドフルートの音色の事です。音色的にはシルバーの方がふくよかで柔らかくて良いのだそうですが、ふくよかで柔らかい音色など、広いホールで吹いても、よく聞こえないのだそうです。いくら良い演奏であっても、音がお客さんの耳に聞こえなければ、それは音楽としては、意味がありません。その点、ゴールドフルートは、音が細くて硬いので、ホールでもお客の耳に届きやすいのだそうです。

 私が今まで思っていた事、大きく違っていなかったので、少し安心しました。

 そうそう、プロフルート奏者さんたちの噂話もたくさんしました。ここには書けないような話ばかりですが、プロの世界って色々あるんだなあって思いました。それにしても、H先生と工藤重典氏は、同門同期という事もあって、すっごく仲が良いのだなあと思いました。

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コメント

  1. operazanokaijinnokaijin より:

    1. フルートの見た目。私の銀のフルートが木管のように黒くなっているのが、私個人は好きですが、ま、プロの皆さんは、やはり、金ですか。

    2. フルートの音。楽器店の店頭で、金を試奏させていただくと、銀ほどのよい音とも思えませんが、ま、プロの皆さんは、やはり、大きな音あるいは強い音の金ですか。

    3. クラシックとジャズ、二刀流の中川昌三さん(に限らないのでしょうが)、金と銀とを使い分けておられますが、お金の問題、練習時間の問題、いろいろあって、大変なのでしょうね。私、アマチュアでよかった。

    4. 以前、楽器店店員さんに聞いたら、音大志望の高校生や音大生(すなわち、プロ志望のアマチュア)の多くが、金を買っていく、と。もちろん、ご自身のお金ではなく、親御さんのお金でしょうから、比較的裕福なご家庭なのでしょう。フルート、に限りませんが、プロの音楽家を目指すには、お家が裕福であることが、やはり必要条件なのかしら?

    などなどの感想を持った、今回でございました。

  2. すとん より:

    operazanokaijinnokaijinさん

     私もフルートは黒光りする方が好きですが、どうやら一般的にはピカピカのフルートの方が好まれるみたいですね。黒光りのフルートは単純に『汚らしい』と誤解されるみたいです(悲)。

     アマチュアフルートさんにもピカピカ大好きな方は大勢いらっしゃいますが、そのピカピカを維持するために、楽器を磨きすぎて、却ってメッキをはがしてしまったり、管体をサビさせてしまったり、メカのバランスを崩してしまったりと言うトラブルを招く例も多々あるようです。何事も過ぎたるは及ばざるがごとしです。

    >プロの音楽家を目指すには、お家が裕福であることが、やはり必要条件なのかしら?

     教育現場で言われる言葉の一つに「音大一人、家一軒」ってのがあります。これは、娘を一人、音大に入学させるためには、家を一軒建てるほどの費用がかかるって事です。高校の保護者面接あたりで、「ウチの娘は勉強があまり得意ではないけれど、小さいころからピアノが大好きなので、大学は音大にでも行かせようかしらと思って…」などとおっしゃる親御さんに、確認の意味で「娘さんをひとり音大に入れるには、家を一軒建てるほどの費用がかかります事はご存じでしょうか?」って尋ねるわけです。ま、実際には、金さえあれば入れるわけでもなく、親の経済力以外にも、本人の才能と努力とコンクール歴、それと師匠筋の引きなどの要素も加味されるので、そんなに単純ではないのですが…。

     逆に言えば、諸条件が揃っていれば、普通に予備校通いをする程度の費用でも、音大に入っちゃう(そしてプロになっちゃう)子もいますので、プロの音楽家を目指すには、一概に実家が裕福である必要な無いと言えば無いんですが…、やはり裕福な家の方が、子どもをプロの音楽家にするには有利でしょうね。

     フルートに関して言うと、洋銀系のフルートは論外としても、総銀フルートで音大受験は十分可能ですし、実際、黒光りする銀のフルートで音大に入ってプロになっている子を幾人か知っています。ただ、合否スレスレの子は、ゴールドに頼る傾向があるって話を聞いたことあるし、前の笛先生は、生徒さんが音大受験したいと言い出したら、まずゴールドフルートの購入を薦めたそうです。と言うのも、ゴールドフルートの方が音が大きいし、音量の幅も広いので、同じテクニックの持ち主同士ならば、ゴールドの方が総銀よりも有利になるからだそうです。

     ま、ゴールドフルートなんて、家よりも安いわけで、ゴールドフルートで躊躇してしまう親御さんならば、娘さんの音大進学について再考してもらうのが、全員の幸せなんだろうと思います。

  3. やこ より:

    先生、歯を抜いて麻酔が効いていてもフルート吹けるのですか。さすが!!
    私は上の前歯がボロボロで、2本抜けたブリッジなのですけど…
    仮歯の時は、辛かったです。
    歯のない歯茎と仮歯の間からスースーと息が漏れるので、余計な気流ができるらしく
    音が安定しなくて困りました。

    「フルートは総入れ歯でも吹ける」と聞いた事がありますが…
    総入れ歯に至るまでの道のりがオソロシイです 汗

    すとんさん、歌い過ぎなのですか。
    一度で良いからそんな風に言われてみたい私です。
    私はいつまでたっても歌い方がわからず…相変わらずの棒吹き(^^;
    歌うって、一体どういう事なんだろ???

  4. すとん より:

    やこさん

     おそらく、麻酔がかかっていようがいなかろうが、カラダにフルートの吹き方が染み込んでいますので、麻酔が残っている状態でも、平気でフルート吹いちゃえるんだと思います。ある意味、超人ですね。プロって凄いです。

    >「フルートは総入れ歯でも吹ける」と聞いた事がありますが…

     へえ~、たしかにアゴとクチビルがちゃんとしていれば、歯は入れ歯でもOKな気はしますが、でも「総入れ歯でも~」と言われると、インパクト、ありますね。でも、やっぱり、自分の歯は大切にしておきます(笑)。

    >すとんさん、歌い過ぎなのですか。

     …みたいですね。ま、これでも歌手(笑)ですから、歌うのは得意なんです。

    >歌うって、一体どういう事なんだろ???

     それを歌手に尋ねますか? 私にとって、歌うって、歩くとか、走るとか、モノを持つとか投げるとか、そういう、ほぼ無自覚に行う行動に近いものがあります。改めて、説明するとなると…難しいです。

     でも、ちょっと考えてみます。

  5. いがぐり より:

    すとんさんの「歌うことは無自覚の行動」という言葉を見て、佐久間由美子さんも同じ事を言っていたな~と思い出しました。
    学生からの質問に「息をしたり、話したり、普段何も思わずにしてることと同じだから、よくわからない」って(笑)

    私も考えてみました。

    高校の頃言われたのは(吹奏楽です、ハイ^^;)

    1.フレーズの山を見つける
    声に出して歌ってみて、気持ちが盛り上がるところを探す

    2.音形が上昇形はクレッシェンド、下降形はディミニエンド

    3.アウフタクトは大切に

    4.拍子感は出しましょう

    という、ざっくりしたものでした(笑)
    今思えば、うーーーんと思うところもあるのですが^^;

    私は、とにかくいろんな演奏(フルートに限らず)を聞いて、かっこいいのは真似したりしてました。
    必ずしも上昇形はクレッシェンドとは限らないですしね。
    貴婦人が殿方の前でわざと貧血をおこしたように倒れるように、「あぁ・・・」と消え入るように吹く上昇形とか(わかりにくいですね^^;)

    どなたかの教則本に書いてあるのですが
    まず、初めに、限りなく小さな音で均等に楽譜をさらいます。
    そうすると、「あぁ。ここでクレッシェンドしたい!」とか「ここをゆっくりしてみたい」とかいろんな欲望が出てきます。
    次に、思ったように吹いてみる
    というやりかたもありますね^^

    私が実際思うことは
    「心の中で歌いながら吹いている時は、とても気持ちがいい!」
    ということです。

    音色もいろいろ変えると楽しいですよ。
    同じドでも、柔らかかったり、はっきりしていたり、かすんでいたり、力強かったり、明るかったり、暗かったり・・・。
    今、求められているのはどの「ド」なのかを意識するようにしています。
    特に、ピアノと一緒に演奏する時は和音がなってるのでわかりやすいですよ^^
    フルートだけで練習してると明るいイメージだったけど、ピアノは暗いなぁ。
    もっと悲しげなイメージだったのかな?とか。

    先生と感じ方が違ってもいいんです。
    変な解釈(歌い方)でもいいんです。
    何かしたい!っていう想いが大切だと思っています。
    曲調や時代に合わず、あまりに変だと先生が直してくれます←よく直されます(笑)

    まずは、いろんな歌を聴いてみることをお勧めします♪

    長くなってしまいました。すみません。
    私も勉強中で、ついついしゃしゃり出てしまいました。

  6. やこ より:

    >すとんさん&いがぐりさんへ。

    「歌う」って無意識なのですね~。
    私は無意識だと…見事なまでのボー吹き(^^;

    ですが。お二人のコメントで、何となく理解しました。
    多分、本の朗読をするような感じ?
    そう考えたらできそうな気がしてきました!

    どうもありがとうございました(^^)

  7. すとん より:

    いがぐりさん

     「歌う」と言うことは、考え出すと難しいですね。先日、キング先生との会話の中に、この事について、ヒントのようなものがあったので、現在、記事として書きまとめている最中です。たぶん、来週にはアップできるかな?

     いがぐりさんの視点は私の視点とは、全然違っていて、へえ~って思いながら読ませていただきました。

    >必ずしも上昇形はクレッシェンドとは限らないですしね。

     声楽学習者がよく使う「コンコーネ50番」という初級向けのテキストの1番での課題は『上昇系をデクレッシェンドで歌う』です(笑)。難しいですね、私は今だに怪しいです(爆)

     最初に限りなく小さな音で吹いてみる…という方法は確かにGOODかもしれませんね。ただ、私のような人間だと、すべてをffで吹きかねませんが(爆)。

     歌うように吹くためには…おそらく(フルートに限らず)良い演奏をたくさん聞いている必要があるのかもしれないなあって思います。良いアウトプットをするためには、良いインプットを豊富にしておく事が大切かなって思います。

     上手な演奏と、心を打つ演奏は違うよなあ…とか、色々な事が頭の中を渦巻いております。楽器で“歌う”って、難しいですね。

  8. すとん より:

    やこさん

     私にとって“歌う事”は無意識な事なんですが、その無意識を意識化する事で、より上達できると思ってますので、現在、自分の無意識にダイブを試みている最中です。

    >多分、本の朗読をするような感じ?

     ハズレではないと思いますが、私の感覚だと、朗読ではなく、芝居かな? 楽譜は台本で、演奏は演技だと思います。ま、芝居と言っても、私のイメージでは、“演技”=“オペラ”なんですよ。

     それこそ、5/17のメトライブビューイングの記事に貼り付けた、デセイの歌のような演技を、フルートで行う事が、歌うことなんじゃないかなって思ってます。ん? なんか、理屈がグルグル廻っているかな? 分かりづらくて、ごめん。
    http://stone.tea-nifty.com/blog/2012/05/post-de21.html

  9. やこ より:

    なるほど~、オペラですか。やっと合点がいきました(^^)
    私はまだ一度もオペラの舞台を観たことがないので…
    実感として解るのはミュージカルかなぁ。

    ミュージカルスター☆になった気分で、頑張ります 笑

  10. すとん より:

    やこさん

     うん、ミュージカルでいいんじゃないかな? ミュージカル役者が演技をするように、フルートで演奏できたら、そのフルートは“歌っている”って言えるんじゃないかな? たぶん、それでいいんだと思います。

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