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ロイヤル・オペラの「アンドレア・シェニエ」を見てきた

 ロイヤル・オペラ・イン・シネマでジョルダーノ作曲の「アンドレア・シェニエ」を見てきました。アンコールではなく、2023-24年シーズンの最後の上映で、音楽監督アントニオ・パッパーノの勇退公演です。ちなみに次の音楽監督は、チェコのヤクブ・フルシャです。パッパーノより約20歳若い人ですから、パッパーノに問題があるわけではなく、単純に若返りが目的のようです。

 さて、スタッフ&キャストは以下の通りです。

 指揮:アントニオ・パッパーノ
 演出:デイヴィッド・マクヴィガー

 アンドレア・シェニエ:ヨナス・カウフマン(テノール)
 マッダレーナ:ソンドラ・ラドヴァノフスキー(ソプラノ)
 ジェラール:アマルトォブシン・エンクバート(バリトン)

 なかなかに見応えのある上演でした。おそらく、私が今まで見てきた「アンドレア・シェニエ」の中ではベストかもしれません。ほんと、良いものを見せさせいただきました。

 とは言え、傷が無いわけではありません。それは…やはり“歌手の人種問題”かな? 

 バリトンのエンクバートは、歌唱は見事なのですがモンゴル人で、見た目も典型的なアジア系のデブなんですよ。まあ、エキゾチックな風貌と言えば、そう言えるかもしれないけれど、そんなアジアな人がジェラールですか?って話です。

 第1幕の貴族の家の使用人ならば、アジア人って設定でも通用するかもしれないけれど、第2幕以降はフランス革命の革命側の主要幹部って立場ですから、それがアジア人って、キャスティングに無理を感じてしまうわけです。特にロイヤル・オペラは、メトとは違って、ポリコレ等は軽く無視しているようで、コーラスなどもフランス民衆って事で、いかにも貧しそうな風貌の白人たちで固めているわけで、そういう中、歌唱の実力でキャスティングされているのだろうけれど、主要キャストにアジア人が混ざっているのが、強い違和感を伴うわけです。

 でもまあ、傷と言うのは、彼のキャスティングだけで、後は歌唱も演奏も演出も最高な舞台でした。パッパーノの最後を飾るにふさわしいものとなったと思います。ちなみに、パッパーノは、今後はオペラから離れて、ロンドン交響楽団で首席指揮者になります。まあ、ロイヤル・オペラとは、同じロンドンの団体なので、今後も付かず離れずの関係が続くのでしょう。そもそもパッパーノって、イギリス生まれのイギリス育ちでイギリス在住のイギリス人だからね。地元の有名人は大切にしなきゃ。それに、来季もすでにロイヤル・オペラで「ワルキューレ」を振ることになっているそうだしね。

 それにしても、カウフマンは当代随一のテノールですね。最近のメトには出ていませんが、ロイヤル・オペラには定期的に出演しています。私は映画館のオペラはメトを中心に見ているので、ぜひそちらにも定期的に出演してもらえたら…と思うのですが、やはりアメリカは日本同様、オペラでは周辺国の一つに過ぎません。やはり、イタリア、ドイツ、フランス、イギリスなどの本場の歌劇場と同様にはいかないのでしょうね。

 あと、デイヴィッド・マクヴィガーの演出はやはり良いです。メトでも彼の演出は多数取り扱っていますが、伝統的な内容を現代のセンスで構築してくるマクヴィガーの演出、私は好きだな。彼の演出というだけで、すでに舞台として成功が約束されたようなものです。

 あと、最近はメトも読み替え演出が増えてきました。伝統的な演出でオペラを見たいなら、ロイヤル・オペラの方が良いのかもしれません。

蛇足 ここの映画上映は「ロイヤル・オペラ・イン・シネマ」というタイトルなのですか、次年度から「ロイヤル・バレエ・アンド・オペラ・イン・シネマ」というタイトルに変更になるそうです。実際、映画上映している演目は、バレエ半分、オペラ半分ですから、タイトル変更も当然の話です。なぜ変わるのか? それは、正式に団体名(および建物の名称)が「ロイヤル・オペラ」から「ロイヤル・バレエ・アンド・オペラ」に変わるからです。なんでも、132年ぶりの名称変更なんだそうです。とは言え、地元の人や通の方々は、今まで通り、通称の「コヴェント・ガーデン」と呼ぶ続けるようですから、あまり問題はなさそうです。

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