先日、表題のとおり、町田イタリア歌劇団の「イル・トロヴァトーレ」を見てきました。町田イタリア歌劇団は、小さな、地域密着型のプロのオペラカンパニーです。この団体の公演を見るのは…おそらく初めてなのですが、なかなか好感を持てる団体でした。ファンになっちゃうかも(笑)。
当日のスタッフ&キャストは以下の通りでした。
指揮:吉田拓人
演出:柴田素光
ピアノ:小森美穂レオノーラ:森澤かおり(ソプラノ)
マンリーコ:堀越俊成(テノール)
ルーナ伯爵:井上雅人(バリトン)
アズチェーナ:巌淵真里(メゾソプラノ)
イネス:高橋亜矢子(ソプラノ)
ルイス:須藤章太(テノール)
フェランド:横田圭亮(バリトン)
そもそも、なぜこれを見に行ったのか言うと…出演者の中に知り合いの歌手さんがいたので、その方からお誘いがあって行った(つまり、私の自前のアンテナに引っかかったわけではありません…まあ、地域が違うからね)のですが、これが大当たりだったわけです。
正直、演奏規模は小さかったです。会場は250名も入れば満員になってしまう、小ホール程度の規模でしたし、伴奏はピアノ(と一部だけ、電子キーボード)でした。大道具は無し(字幕とともに、いわゆる、プロジェクション・マッピングを使用)で、小道具も必要最低限で、衣装は女性陣のドレスは立派だったけれど、その他は???って感じです。おまけに合唱団はアマチュアさんの寄せ集めです。つまり、一言で言ってしまえば「お金のかかっていないオペラ」なのでした。
もちろん、これは当然で、チケット代は、たったの3千円なんですよ。おまけに補助金はもらっていないようなので、経営的には明らかに赤字公演なのです。そりゃあ経費掛けられないよね。おそらく頭のいい経営者がいて、そこはうまく切り盛りしているのでしょう。
演奏規模が小さくて、大道具小道具ともにしょぼくて、合唱はアマチュアの歌劇団の公演のどこがいいのかと言うと、主役クラスの歌手たちの歌唱か素晴らしかったのです。おまけに会場が狭くて小さいし、伴奏がピアノなので、歌手たちの声がたっぷりと堪能できちゃうのです。ですから「オペラは歌が命」と思っている私にとっては、なかなか聴き応えのある公演なのでした。いや、素晴らしかったよ。で、今回は演目がトロヴァトーレでしょ? 歌が主役のオペラでしたから、そりゃあ、歌手の歌を満喫しちゃったわけなのです。
小さなオペラ団体の公演だけれど、中身は濃かったのです。なので、私は満足しちゃったわけなのです。良かったよ、町田イタリア歌劇団。
褒めるばかりでは、単なる提灯記事になってしまうので、気になった点も書きます。
主役クラスの歌手は素晴らしかったのだけれど、だからこそ、合唱のレベルの低さは気になりました。特に、男性合唱ね。トロヴァトーレって男声合唱が活躍するオペラだからこそ、合唱が物足りなく感じました。ここの合唱団がそうだとは言いませんが、日本のオペラ合唱団の構成メンバーって、アマチュア合唱団と言えども、本当のアマチュアさんだけではなく、音大卒のプロを断念された方、つまりセミプロの方が多く参加されているケースが普通で、だからこそ、アマチュア合唱団と言えども、高水準の歌唱が可能なのです。ここの合唱団も、それなりのレベルの歌唱でしたので、セミプロの方が多く参加されているのだろうと思われる一方、やっぱり、本物のアマチュアさんも参加されているようでした。
と言うのも、アマチュアの方であっても、しっかりお稽古されれば、それなりの歌は歌えるのでしょうが、悲しいかな、アマチュアさんの場合、演技はほぼ大根になりがちです。しっかり演技かできる人たちの中に、大根が混ざると…舞台では悪目立ちをするものです。それがね、ちょっと悲しいです。
歌も演技も高レベルを求めるなら、プロ、またはセミプロしか参加できなくなりますが、それでは経費的には厳しいでしょうね。あと、集客的にもね。それを考えると、合唱団にアマチュアの方の参加は必須となりますが…いやあ、難しいですね。
でもまあ、私的に注文をつけるとするなら、それくらいです。あ、第3幕のテノールアリア「Di quella pira / 見よ、恐ろしい火を」が繰り返しを省略されて歌われていたのも、個人的にはマイナスでした。まあ、メトでもパヴァロッティが省略パージョンで歌っていましたので、理解はしています。まあこのアリアは、テノールアリアの中でも難曲中の難曲アリアだもんねえ…。
結論として言えば、町田イタリア歌劇団、気に入りました。我が湘南地域にも、こんな歌劇団があればいいのになあ…と、町田の人たちがうらやましくなりました。
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