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ラ・フォル・ジュルネに行ってきたよ 2009 その6

 土曜日の今日は、本当なら、金魚の話をする日ですが、今週は予定を変更して、ラ・フォル・ジュルネのレポートの続きを掲載します。金魚の話は、また明日します。ダイエットの話は…今週はパスです。もっとも、ダイエットそのものは、一応、継続しております。

 では、ラ・フォル・ジュルネの話の続きです。5月5日の夕方から話は始まります。

【公演345 ミサ曲ト短調 & マニフィカト】

 尾原記念オーケストラの演奏が、いい意味での気分転換になりました。新しい気持ちで、次のコンサートに向かうことができました。次は、私の今年のラ・フォル・ジュルネの最後を飾るコンサート「ミサ曲ト短調 & マニフィカト」です。

 とにかく、今年は声楽曲のコンサートの数そのものが少ない上に、声楽には全く不向きなホールAまたはホールCでの演奏しかない。これは、歌の好きな人間は来るなと言っているようなもの。だから、今年の私は声楽を諦めて、フルート中心のチョイスにしたのだけれど、どうしても妻と息子が合唱を聞きたいと言い張ったので、それならば、ホールAよりはホールCの方が、幾分はマシだろうということで、最後の最後にこの「ミサ曲ト短調 & マニフィカト」をチョイスしました。

 というわけで、会場はホールCことライプツィヒです。1490席ですから、普通の大ホール程度の広さなのですが、とにかくデッドなホールで、音が会場の壁にドンドン吸われていくのが手にとるように分かる、演奏者にとって残酷なホールです。いやあ、本当にここのホールには残響というのがなくて、クラシックなどの生音の演奏は、CDの音量を小さく絞ったような演奏になってしまうので、私はここでの演奏そのものには、全く期待していませんでした。床とか(人の身長程度までの)壁とかイスとかは、ちゃんと木製だし、天井もそれなりに高いので、良さそうな気もするのですが、実際は、天井とは壁の大半を占める吸音材の性能がすばらしくて、まるでダメなんです。

 ダメダメと書きましたが、見方を変えれば、人工的な音場を作るなら、不要な響きを最大限にカットしているので、最高のホールなんだと思います。ミュージカルなんかには良いホールだと思います。とにかくPA使用前提の音楽ホールだと思います。

 このホールで、クラシック音楽の演奏、とりわけ、合唱は絶対にありえないことは、去年のコルボ&ローザンヌでイヤになるほど懲りてます。でも、妻と息子がどうしても合唱を聞きたいと言うし、ラ・フォル・ジュルネは音楽祭であって「“音楽”+“祭”」なので“祭”の部分に重点が置かれることがあっても良いかと考え、演奏者の方々には申し訳ないけれど、何の期待もせずに、「最後は声楽作品で締めました」という言い訳のために、このコンサートのチケットを買いました。

 このコンサートの演奏家は、指揮は、さきほどのマスタークラスでお世話になった、フィリップ・ピエルロ。それに、彼が率いる古楽オーケストラであるリチェルカール・コンソート。独奏者が、ソプラノがマリア・ケオハネとサロメ・アレール、男声アルトとしてカウンターテナーのカルロス・メナ、テノールがハンス・イェルク・マンメル、バスがステファン・マクラウドでした。で、合唱団は? と思っていたら、合唱団は無しでした。え? 合唱曲なのに合唱団無しでどうやって演奏するの?って思っていたら、合唱部分はソリストたちが重唱(つまり声楽アンサンブル)として歌ってくれました。

 ラッキー! これが実はかなり良かったのです。昨年の演奏でも思ったのですが、ホールCは合唱には全く向きません。と言うのも、合唱ってのは、弱音主体で会場の反響を前提とした音作りをするからです。でもソリストは違う。彼らは、会場の反響ももちろん利用するけれど、それ以前に自分たちの体で響きを十分に作って発声するので、反響の少ないところでも、合唱ほどには、ひどいことにはならないのですし、実際、昨年の演奏も、合唱はダメダメでしたが、ソリストたちは良かったのですよ。ああ、合唱部分を重唱で歌うなんて、想像もしなかったけれど、最後の最後で光が射してきました。

 合唱が聞きたかった、妻と息子君はがっかりしたようですが、ヘナヘナな合唱を聞かずに済んだ私は大喜び。昨年のローザンヌも合唱部分をソリストたちが重唱で歌ってくれたら、どれだけいいかと願いながら聞いていたくらいですから、合唱部分を重唱で歌ってくれるなんて、まさに私のためのコンサートみたいなものです。音楽の神様、ありがとう!

 それに、今年は座席にも恵まれました。去年は一階席の後ろの方で、二階席が屋根のように覆い被さったところ。舞台から遠かったです。今年は前から10列目の中央寄りの席。ベストとは言えないけれど、去年と比べれば、天国と地獄ぐらいの差はあります。

 なので、今年は、それなりにコンサートが楽しめました。ちょーラッキーでした。しかし、やっぱり去年並の席だったら、きっとブー垂れていたと思う(汗)。

 感想は…やっぱり古楽だね。オケの音も、歌手の声も、いかにも古楽って感じの演奏でした。確かに音量的には乏しいし、会場の事を考えると、もっとガンガン鳴らして欲しいけれど、音色的には、深みがあって美しくていいね。私はたまたま舞台の近くで聞けたから良いけれど、やはり基本的に、古楽を大ホールで演奏してはいけないと思いま~す。

 ちなみにオケの中に入った、フラウト・トラヴェルソって、キャピキャピのギャルって感じのかわいい楽器になっちゃうんだね。ソロだと素朴って感じの音色なのに、オケに入るとキュートって、楽器としてどうなのよ(笑)。やっぱり、トラヴェルソとフルートは別の楽器だね。

 歌手の方々は、パワー系ではなく、音色で勝負という感じの人が中心だったけれど、その中でも特筆すべきは、カウンターテナーのメナ。いや、いいね。アルトが力強いとハーモニーが引き締まるね。女声アルトだとこうはいかない。バロックの時代までは、アルトが歌の主役だったというのが、何となく分かる気がしました。男声アルトって、テナーよりもカッコいいじゃん。

 最後の最後のコンサートがコレで、実はよかったと思ってます。やはり、人の歌声は、人の心に共鳴するね。器楽曲も美しいけれど、人の声ほどには心に染み込んでこないもの。五人のソリストが作り出す、人声による美しいハーモニーは、決して楽器では得られないものだと思う。楽器は人が作ったものだけれと、声は神が造り人に与えたもの。その差は無視できないほど大きいと思う。心が洗われたような気がしました。

 それにしても、古楽の指揮者って、指揮棒を使わないの? ピエルロさん、指揮棒を使わずに、胸ポケットに入っていたピンクのボールペンを指揮棒代わりに持って、それで指揮をしていたよ。だから私は、ピンクのボールペンが気になって気になって(爆)。ボールペンを使うくらいなら、最初から指揮棒を使ってくれれば、私も余計なところで気を散らさずに、音楽に集中できて、もっと楽しめたのになあ…。
 
 
【リューベック広場対談 ルネ・マルタン×福岡伸一】

 マニフィカトが終了して、のこのことリューベック広場に行きました。ちょうど、ルネ・マルタンと福岡伸一氏の対談が終了するところで、来年の話を始める少し前に到着しました。ラッキー。

 来年のテーマ作曲家は“ショパン”なんだそうです。つまり、来年も、ラ・フォル・ジュルネをやる予定なんだね。よかった。

 でも、ショパンだよ。私はドン引きだよ。ショパンって聞いた途端「来年は、来るのをやめよう」と即座に決心したくらいだもん。

 だってさ、ショパンって、ピアノ馬鹿だよ。ピアノ曲とピアノが参加する室内楽曲とピアノの協奏曲くらいしか書いてないよ。一応、歌曲(伴奏がピアノだもんな)もほんのちょっとだけ書いたらしいけれど、普通は演奏されないでしょ。歌曲としては、どの程度なんだろうね?

 ショパンだよ、ショパン。ピアノばっかりだし、小品ばかりだし、寡作だし、どうするのよ? と思っていたら、さすがにマルタンも「ショパンだけだと、全曲をやっても30公演しかできない(今年は有料プログラムだけで、3日間で約170公演、去年は220公演やってます)ので、当然、ショパン以外もやります」ときました。そうでしょうね。そうでないと、喜ぶのはピアノファンだけで、オーケストラ好きや歌好きは、ラ・フォル・ジュルネをボイコットしかねないからね。

 ひとまず、ベルリオーズとメンデルスゾーンはやるって言ってました。そうでないと、オーケストラ好きが黙ってないでしょうね。それに、ベルリーニとドニゼッティもやるって言ってました。そうでないと、歌好きが泣くからね。それでもやっぱり、ショパン漬けなんだろうな。

 でもね、どこまで期待していいのやら…。去年は「来年はバッハです。東京国際フォーラムにはオルガンはありませんが、オルガン曲もやります。どうやるかは、お楽しみ~」なんて言ってて、実際はオルガン曲無しだもんね。来年だって、フタを開けてみたら、全部ピアノ曲だったりして…。

 ああ、来年は、歌もフルートも寂しい、ラ・フォル・ジュルネになりそう。とりあえず、プログラムを見てから決めるけれど、来年のゴールデン・ウィークは、東京に来るのは止めて、江ノ島あたりをハイキングしようかしら。いや、ほんと、ショパンがテーマ作曲家なら、そうなるかもしれない。

 そんな事をグチっていると、「ブラレイ先生が来るよ!」と妻のひと言。

 そう、私も妻も、実は、フランク・ブラレイ氏の大ファン。今年はバッハだったので、生粋のフランス野郎であるブラレイ先生(なぜか我が家ではブラレイ氏には“先生”という敬称をつけることになってます)の来日は無かったけれど、来年は絶対に、ブラレイ先生が東京国際フォーラムに来るでしょう。やってきて、ショパンを弾きまくるでしょ。ううむ、ショパンは嫌いだけれど、ブラレイ先生は好きなので、来年はブラレイ先生の追っかけをするかな? “ブラレイ先生のショパン・コンサートのコンプリート”もおもしろいかもしれない。そうだね、そっちの線で行くかな?

 ビバ! ショパン。来年は、ブラレイ先生を中心に聴くぞ!

 最後に、一週間の長きに渡った「ラ・フォル・ジュルネに行ってきたよ 2009」をここまで、お読みくださり、感謝感謝です。また、来年も、ラ・フォル・ジュルネに行ったら、書きますので、よろしくね。

蛇足。ショパンには合唱曲は無いよ。マルガツは…アレンジもの? それとも周辺作曲家の作品? なんか、どっちもどっちって感じで、ちょっと残念ですねえ…。ああ、今年、聞いておけば良かったなあ…。

蛇足2 今年のラ・フォル・ジュルネは70万人の来場者数だったそうです。去年は100万人を突破しているけれど、期間が5日から3日に減った事を考え合わせれば、それでも去年並の来場者数とは言えます。“ラ・フォル・ジュルネ、強し!”って感じでしょうね。

蛇足3 しかし、商売としては、割合が同じでも絶対数は減りすぎの気がします。世界不況の影響なのか、バッハだから5日間開けるほど、公演が用意できなかったのかは分かりませんが、だから来年はショパンなんだろうね。ショパンなら、ピアノ関係のチャンネル使って、ピアノ関係の人間を大勢集められるものね。どこの国だって、クラオタの数倍の数のピアノ関係者がいるわけだし、手っとり早く人を集めようと考えると、ショパンなんだろね。特に日本女性には、絶大なる人気を誇るからね、フレデリック君は。それにピアノコンサートだったら、開催費用だって、オケ付き合唱曲なんかと比べたら比較にならないほど安上がりだしね。“不況だからショパン”なんだろうなあ…。逆に言うと、私の好きなオペラは、バブリーな時代じゃないとできないだろうなあ…。

コメント

  1. inti-sol より:

    そう、去年は5日間だったけれど、今年は3日間でしたね。不況のせいで規模縮小したのかなと、漠然と思っていました。
    去年みたいに5日間の日程だったら、私ももう少し切符を取れたかなと思います。

  2. chiko より:

    いいですねえ、ラ・フォル・ジュルネ。
    来年はショパンですか。いいなあああああああ。

    さっき、全音主催の、ピアノの先生のためのショパンの講習会を見つけたんですが、どうしてもはずせない学校に行く用事がある日だったので、あきらめました。(泣)

    昨日は、小学校の、先生方と、育友会の本部の方々と、私たち委員の親睦会がホテルでありました。
    先生方も本部の方々も、学校ではもちろん真剣で一所懸命ですが、飲み会でも真剣で一所懸命に遊ぶのです。すごいなあ。
    私たち委員は全員がお母さんなので、とっても楽しませてもらいました。教頭先生は以前から顔なじみでしたが、校長先生や、会長や副校長先生方とも親しくさせて頂いて、これからの広報委員会活動にプラスにできると思います。
    先日、広報委員って何をする委員?っておっしゃっていましたね。広報委員とは、育友会に所属していて、広報誌を年に3回発行します。育友会の活動や子供達の行事や生活を取材して、冊子を作って育友会会員(子供達の親)や他の学校なんかに配ります。
    すとんさんは学校の先生だったのだから、ご存じでしょう?それとも、地方や学校で違うんですかね。
    まあそんなものの委員長です。1年間、力を合わせて、楽しく頑張りますっ!!

  3. すとん より:

    >inti-solさん

     私は、今年のラ・フォル・ジュルネの規模縮小は、世界不況のせいだろうと個人的には思ってます。おそらく、スポンサー企業が減ったり、サポートしてくれる金額も減ってしまったのではないかと思ってます。出演者も直前まで変わってましたし、規模の大きな曲(結構バッハには大規模な曲がありますよね)は、やらなかったり、やっても一回限りだったり…とかね。ドタキャンした合唱団もあったようだし…。

    >去年みたいに5日間の日程だったら、私ももう少し切符を取れたかなと思います。

     少なくとも、公演数が単純に増えますからね、それぞれのコンサートも切符が取りやすくなっただろうと思います。

     来年は何日やるんでしょうね。それより、来年は景気が回復しているかしらねえ?

  4. すとん より:

    >chikoさん

     ピアノ弾きやピアノファンの方々にとって“ショパン”って、天上の響きのする言葉のようですね。ま、私もショパンの曲の美しさを認めるのにやぶさかではありませんよ。おそらく、来年のラ・フォル・ジュルネは、そんなピアノ弾きやピアノファンの方々で、客席も華やぐことでしょうね。

     きっと、私には、場違いな雰囲気になるに違いないでしょう…。

     ううむ、なぜか“ショパン”って聞くと、ついつい悪態をつきたくなります。きっと、これも、ピアノが弾けないというコンプレックスがいい感じで刺激されるからでしょうね。

     ショパンって、クラスに一人はいた、女子にモテモテの草食系男子ってイメージなんですよ。

     PTAの広報委員の仕事は、地域や学校によって、微妙に違うと思いますが、おしなべて“広報”活動をしてます。学校新聞を作っている広報委員も入れば、ママさんコーラスが広報委員の仕事の学校もありますし、芸人さんや歌手を呼んでステージを作る仕事の広報委員さんもいます。ま、学校や子どもや地域のためになっていれば、なんでもいいんじゃないかと個人的には、思ってます。

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