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歌手と笛吹き、気質の違い

 よく、演奏する楽器によって性格が違う…なんてのは“オーケストラあるある”の一つです。確かに担当している楽器ごとに奏者の性格の違いってあると思います。それは「なぜその楽器を学ぼうと思ったのか」あるいは「なぜその楽器に惹かれたのか」という命題と関係するからです。

 例えば、ヴァイオリン奏者は積極性と繊細さを併せ持つ性格であるとか、コントラバス奏者は平和主義者で健全な人柄であるとか、オーボエ奏者は神経質で目立ちたがり屋さんであるとか…ね。ちなみにフルート奏者は、外面はいいが腹の中で何を考えているか分からないとか、なんかエラそうな態度をとりがちだとか、ヒステリックで独善的だとか…あれ、私、フルーティストの事をディスってる?

 とまあ、何はさておき、とりあえず話を進めます。

 同じ器楽同士でも奏者の性格に違いがあるならば、声楽と器楽の違い、つまり、歌手と器楽奏者の違いって、かなり大きいのではないかしらと思ったわけです。まあ、器楽と言っても、私は楽器全般に通じているわけではないので、歌手と笛吹きの気質の違いで考えてみたいと思いました。

 まず、両者の違いを考える前に、共通点を確認しておきたいと思います。

 歌手も笛吹きも、原則的にはメロディーを担当します。良くも悪くも目立ちたがり屋さんで、押しの強いタイプの人が多いと思います。よく言えば、リーダー体質なのかもしれません。逆に言えば、目立たざるをえないポジションですから、目立つ事に耐えられないといけない事は事実ですし、目立つ人間は何かと叩かれますから、メンタルだって弱くては勤まりません。押しだって強くなりますし、そうなれば、自然とリーダーシップだって取らざるを得なくなるわけです。

 また、男女比で言っても、両者ともに圧倒的に女性が多いです。押しが強くて目立ちたがり屋さんと言えば、お姫様タイプですわな。そういうお姫様タイプの方が、歌手と笛吹きには共通して多いと思います。

 それと両者ともに、呼吸を使って楽器を鳴らすせいでしょうか? 声がデカイというイメージがあります。あと、むやみに元気なイメージ…と言うか、快活なイメージがあります。

 そんな共通点があると思います。

 違いは…と言うと、まずは体型かな(笑)。笛吹きは細身の人が割りと多いイメージです。オーケストラは舞台にせよオーケストラピットにせよ狭いですからね。その狭いところに団体さんで参加するわけですし、フルートはオーケストラの真ん中辺りで演奏するわけで、どうしても場所的には手狭なところにいる事になります。そこで太っていたら…居心地悪くて、身の痩せる思いをする事でしょう。一方、歌手は太めの人が多いイメージです。

 また、趣味のアマチュア人で考えるなら、笛吹きは若い人のイメージがあります。学校出たての20代の人がブイブイ活動しているって感じです。一方、アマチュア歌手と言うと、白髪のお姉さま方が中心ですわな。いや、プロでも、実年齢はともかくとして、笛吹きさんは若々しいイメージがありますよね。

 一方、いつもドレスを着ていてゴージャスな感じがするのが歌手であって、笛吹きさんは地味とは言えませんが、ゴージャス感に関しては歌手に負けてしまうと思います。

 そして一番の違いは、真面目さ…かな? とにかく、笛吹きさんは、ほんと、真面目だと思いますよ。練習の虫が多いと思います。それこそ、黙ってコツコツと練習をしているってイメージあります。プロはもちろん、アマチュアの人だって、時間が許す限り、コツコツと笛吹いて練習ばかりしている…でしょ?

 だって、フルートに限らず、器楽って、練習すればするほど上達するし、練習すればするほど難曲の演奏が可能になるわけだからね。それを肌で知っているから、欲があればあるほど、コツコツと練習に励んでしまうわけです。

 一方、歌手は…と言うと…練習しないねえ(笑)。歌の場合は、練習すればするほど上達するわけじゃないし、練習したからと言って、難曲の歌唱が可能になるわけではないからね。出来る事は、ちょっとさらえばすぐに出来るようになるし、出来ないものは、いくら頑張っても無理は無理。器楽と違って、技術の向上ってやつには時間がかかります。今日明日頑張ったからと言って、何も変わらない事ぐらい知っています。だからと言って、サボってばかりいるなら、あっという間に下手くそになってしまうわけですから、ひとまず最低限の練習はするとしても、笛吹きさんのように、年がら年中練習の虫にはなれないわけです。

 歌手の場合、練習し過ぎると、楽器を壊すからね。練習も大切だけれど、休息も大切なのが歌手です。そこが技術向上の際のネックになるわけです。

 さらに言えば、普通の世界では「努力にまさる才能はなし」と言いますが、歌の世界では「才能にまさる努力はなし」という世界なので、そんなにハングリーにはなれないわけです。「他人と較べても仕方がないよね~」と言うのが歌の世界なわけです。だって、誰もが生まれた時に神様から与えられた声という楽器で勝負しないといけないのが歌手の世界なわけです。

 カネさえあれば、いくらでも良い楽器に乗り換えて、どんどん高みを目指していける器楽の人とは、そこが根本的に違うんだと思います。

 歌を歌っていると、カネさえ出せば、いくらでも良い楽器に乗り換えられる器楽の人って、ほんと、うらやましいです。それがしたくても出来ないのが歌手ですからね。ですから、ある意味、歌手の人って、色々と諦めていたり、受け入れていたりするわけで、そんなにギスギスしていないし、ハングリーでもなかったり、マイペースだったりするのは、そんなわけなんだろうと思います。

 でも、実はいつも歌の事ばかり考えているのも、歌手なんだよね。

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コメント

  1. とも より:

    アマチュアはともかく、
    本業の練習ではなく、体力作りが多いのは声楽組だと言われますよね。
    体が楽器ですから、メンテも大変、
    合唱の私ですら、本番近くは立ち方とかを意識します。

  2. すとん より:

    ともさん

     確かに声楽組はカラダが楽器ですから、体力づくりに励む人が多いです。しかし、器楽組でも、フルートを始めとする管楽器組は、結構カラダを鍛えちゃうんですよ。特に吹奏楽部上がりの連中、とりわけ金管楽器の人たちは、やたらと走るし、やたらと腹筋を鍛えます。そりゃあもう「あなたは運動部ですか?」ってぐらいにカラダを鍛えちゃったりする人、多いんですよ。

     同じ器楽でも、ピアノとか弦楽器の人は、トレーニングと無縁のイメージがありますが、管楽器は声楽組と同様に心肺機能が高くないと楽器が吹けないので、カラダ、鍛えちゃうんです。

     ラッパ吹きには、細マッチョな男女が多いんですよ。

  3. 椎茸 より:

    半年ほど前から、声楽に加えてクラシックギターを始めているのですが、よくわかります。
    ギターはとにかく練習練習で、休日などは何時間もやっています。そうすると、すこしずつできるようになっていくので楽しいです。
    声楽は、そもそも何時間も練習すると疲れる(笑)ので、ギターの練習とは全然ちがうメンタリティで臨んでいるなあと思います。譜読みのときはきっちりやっていますが・・・

  4. すとん より:

    椎茸さん

     おお、クラシックギターですか! 私もカルカッシはやりましたよん。でも、途中で挫折した(涙)。

     楽器は練習すればできるようになり、さぼれば腕が錆びついてくる。とても分かりやすくて単純な世界です。そこは声楽の世界とは全然違いますねえ…とにかく、声楽の世界には理不尽な事が多くて…そこがつらくもあり、楽しくもあり、なんですよね。

  5. 椎茸 より:

    実は、始めてみるまではなめてました、ギター(笑)
    町でじゃらら~んじゃらら~んとアコギを弾いている人がたくさんいるので、敷居が低い楽器だと思っていました。しかしクラシックギターは難しい! こんなに難しいとは。でも、とても魅力があって、延々練習してしまいます。
    すとんさんも、いかがですか?(笑)

  6. すとん より:

    椎茸さん

     実は私、クラシックギターを弾きます。まあ、そんなに上手じゃないけれど、やっていた当時はアルハンブラをつっかかりながら弾いていました(笑)。他にもエレキギターやエレキベースもやりましたが、結局、一番しっくりしたのがアコースティックギターでした。昔はフォークギターって呼んでいたアレね。

     結局、私がギターを弾いていたモチベーションは、歌の伴奏なんですよ。歌の伴奏をするためにギターを弾いていただけで、たまにバンドでギターも弾いたし、クラシック系のギター曲もやったけれど、一番楽しかったのは、歌の伴奏でギターを弾いていた時でした。

     今はそこから、ギターも外れて、歌だけ歌っているわけです(笑)。結局、歌が歌いたかったからギターを弾いていた…のかもしれません。

     ちなみに今は、たまにZO-3というユニークなカタチをした、アンプ内臓のエレキギターをかき鳴らす程度かな? その他のギターは、みんな、納戸にしまったままです。

     歌うたって、笛を吹くのに忙しくて、すっかり指先も柔らかくなってしまいました。

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