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少し前から、音大がヤバいらしい

 少し前…と言うのは、私のアンテナが低くて、つい最近になるまで認識していなかったけれど、実は随分前から“音楽大学という商売”そのものが、かなりヤバい状態になっていて、それが数年前から話題に上がっていた…のに、当時の私は気づかなくて、今頃知ったので“少し前”って書き方をしています。つまり、話題としては“今更”だけれど、私は今更知ったので、ブログに書きます…という言い訳なんですね。

 音大がヤバい…と言うのは、経営悪化で潰れる学校が出るかもね…という意味で、教育内容の話ではなく、経営の話です。実際、上野学園大学は音大ですが、2021年4月から大学の学生募集を停止したそうです。事実上の廃校ですが、上野学園としては、短大(音楽短大です)と中学校や高等学校(音楽科と普通科があります)は残るし、今後も音楽教育に力を入れていくのでしょうか、音大は廃止してしまうわけです…つまり「音大は潰れちゃった」わけです。

 この件が話題となって、当時は「音大がヤバいらしい」と話題になったようですが、私は寡聞にして、それに気づかなかったわけです。

 こんなページを見つけました。音楽大学財務健全性ランキングです。少し前の統計が使われていますが、ここの統計を信じるなら…上野学園大学だけじゃなく、あっちこっちの音大がヤバいしマズイ状況にあるようです。半分くらいの音大が、そう遠くない将来には無くなってしまうかもしれません。

 「ヤバいのは音大だけでなく、大学全般でしょ?」

 確かに大学という商売は、少子化の影響をモロに受けて、だいぶ前からかなりヤバくなってきたのは事実です。で、ヤバくなって、どうにかしなきゃ…、で、不人気で潰れる大学はドンドン潰れてしまい、今や一周回って落ち着いてきた感じなのです。

 大学が今抱えている問題は、少子化というよりも、そうやって苦境を乗り越えたところで、今度は文科省が介入してきて、定数に対する入学者数の制限(募集定員の1.1倍までの入学者の数的制限をかけ、それ以上に学生を入学させた場合はペナルティを課す…という事になりました)を掛けてきたので、せっかく経営的危機を乗り切ったところに、再び経済的な火種を抱えて、ふたたびアップアップとなったというわけで、音大のヤバさとは構造的な違いがあります。

 音大のヤバさは、少子化の影響が一周したにも関わらず、入学者が減り続けている事なのです。つまり“音大入学者”というパイが小さくなってきた事に、業界全体として、うまく対応しきれていないところにあります。

 無論、個々の音大ごとに頑張っているわけだけれど、個々の頑張りだけでは業界として回っていかないって事なんだろうと思います。

 一番の問題は、音大を卒業しても就職先がロクに無いって話です。昔みたいに、お金持ちのお嬢様だけが音大に進学していて、音大卒が花嫁道具の一つだった時代なら、就職先なんてロクになくても良かったのです。でも、今は違います。お金持ちのお嬢様相手だけに商売していたら、音大も潰れてしまいます。大学を存続させるためには、貧乏人の子女だって入学してもらわないといけません。でも、就職先がロクにない大学に、貧乏人の子女たちが行くはずないんです。そりゃあ、音大の経営がヤバくなるってモンです。

 音大がこうなってしまった一番の原因は、音楽業界の人たちの政治的な音痴が原因だと思うんですよ。

 例えば、元スポーツ選手で、体育大学卒業の議員さんって…たくさんいるじゃないですか? 彼らがあれこれ体育大学とかスポーツ業界などへ政治的援助をしているのです。でも、元音楽家や音楽大学卒業の議員さんが音大とか音楽業界への政治的援助って…どれだけしているのですか? ってか、そもそも、音大卒業の議員さんなんているのかしら?

 だから、音大はヤバいけれど、体育大学って、そんなにヤバくなんですよ。だって、体育大学を卒業しても、スポーツ関係の就職先がそれなりにあるからです。音大出てもプロの演奏家になれないように、体育大学を出てもプロのアスリートにはなれるわけではありません。でも、体育大学を卒業しても、この世には体育大学卒業者を受け入れる業界があり、施設や事業所があります。

 例えば、学校。だいたい、一つの学校に音楽の先生は1人いるかいないかですが、体育の先生ってそれなりにいるでしょ? また、市町村にはたいてい体育館などの運動施設があり、お役所には体育やスポーツ関係の部署があり、スポーツ関係の人が働いていますが、市町村だから言って、必ずしも音楽ホールがあるわけじゃないし、あっても貸館事業ばかりだし、働いている人も音楽関係ではなく事務職の人だったりします。街中にスポーツジム等の民間施設がたくさんありますし、その多くは会社として経営されていますが、音楽教室は…多くは個人事業であり、会社組織ではなく、規模も小さく、従業員を雇い入れるなどの余裕はありません。だいたい、どこの市町村も“健康増進”とか言って福祉関連としてスポーツ関係の行事を行ったり、そのための人を雇ったりしていますが、音楽関係の行事は…まあありません。それどころか、音楽関係は“不要不急”と言われて、真っ先に予算を削られたりするわけです。

 これ、政治力の違いなんだよね。スポーツ関係者は昔からなんだかんだと言っても政治に関わってきたから、今があり、音楽関係者は政治と距離を置いてきたから、今こうなっているわけです。

 安定した将来を提示できず、実利もなく、政治的な保護も受けられない音楽大学など、所詮、金持ちの子女向けの贅沢な教育機関にならざるをえないわけで、今現在、国力がだだ下がり中の日本においては、不要な教育機関である…と言わざるをえないわけで、その多くが潰れてしまっても、仕方ないのかもしれません。

 つまり、日本には音大が多すぎるし、今ある大学数は適正な学校数ではない…と言えるのかもしれません。そうなると、どうしても、やっぱり“音大ヤバい”って結論になるんだろうなあ。

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