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一番前で聞いちゃダメ

 何の話かと言えば、コンサートにおける座席の話です。

 私はホールに入ると、特別な事でもない限り、一番前の中央の座席に座るようにしています。つまり、指揮者の真ん前と言うか、真後ろと言うか…。つまり、指揮者が聞いている音に近い音が聞きたい…と思って、そこに座るのです。

 ちなみに“特別な事”とは…ガラガラなホールの場合が多いかな。そんなガラガラなホールなのに、一番前の中央の席に、私のようなガタイの大きな巨大デブが座って、じっと舞台を注視していたら、演奏者にとっては、ほぼ嫌がらせに近い行為じゃないの? だから、ガラガラなホールの場合は、前方約1/3ぐらいの位置の、舞台に向かって左側に座ることが多いです。そこなら、演奏者に無用なプレッシャーを与えることなく音楽が聞けるからです。

 とは言え、有料のコンサートって、大抵は客がたくさん入るので、特別な事がない限り、一番前の中央の座席をゲットするわけです。

 で、いつもはほぼオペラだったり、声楽コンサートだったりするので、一番前にすわっても問題はなく、通常の合唱のコンサート(合唱+ピアノ+指揮者)とか、オーケストラだけのコンサートでも、特に問題はありません。

 第九(ベートーヴェンの交響曲第9番)は、専ら歌う側だし、観客席で聞くにしても、人気演目ですから、なかなか良い席で聞けないのですが、今回、たまたま第九を一番前の中央の座席で聞くチャンスを得たわけです。

 聞く前までは良い席で聞けるなあ…と思っていましたし、実際、第三楽章までは問題なく聞けました。それどころか、日頃はなかなか聞き取れない微細なオケの動きなども聞けて、普段以上の満足だったのですが、いざ第四楽章の声楽部分になったら、アレアレアレ…って感じになってしまったのです。

 その時の舞台は、手前にオーケストラがあって、その奥にソリスト4名が並んで、そのまた奥に合唱が控えるといった編成になっていました。で、それだけ多くの人が舞台に上がったので(通常なら、舞台を前に延長して拡げるケースが多いのでしょうが)、今回は舞台を後ろに延長して奥行きを広げて舞台を大きくするというやり方でした。つまり、客席から見れば、声楽部門は舞台のかなり奥に配置されたような格好になったわけです。

 おそらく、舞台を前に延長しようが、後ろに延長しようが、結果は同じだったのかもしれません。第九では、それくらい多くの人間が舞台に上がり、そのために舞台が大きくなってしまうわけです。

 さらに言えば、どの舞台もそうですが、最前列の座席は、往々にして舞台よりも低い位置にあります。それも関係していたのかもしれません。

 歌が始まった途端、それまでクリアだった音楽が、いきなり風呂屋のような音になってしまいました。つまり、エコーがキツめの遠い音になってしまったのです。

 たぶん、最前列の席は舞台奥からでは、舞台の陰(下)に入ってしまい、音が頭上を通過してしまい、ホールのあっちこっちで反響した音を聞くことになってしまったのだと思います。オケの音はダイレクトに微細な部分まで手に取るように聞こえたのに、歌は回り回った風呂屋の音なのです。

 いやあ、バランスが悪い悪い。なんとも奇妙な音空間になりました。

 座席が舞台よりも高い位置にあれば、特に問題はなかったと思うし、舞台から離れていればオケと歌が混在一体となって聞こえたのだろうと思うけれど、舞台よりも低い位置の最前列の席では、オケは間近に、歌は彼方遠くから聞こえるのです。

 これはさすがに無しだわ。まあ、自分で選んで座った席だから、誰にも文句は言えないのだけれど、第九の時は、あまり前に座らない方が良い…と、今回のコンサートで学んだ私でございました。

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コメント

  1. mee より:

    フルート、ピアノなどのリサイタルでは、一番前に座ります。
    以前はホールの良いと言われる席、奥行きの真ん中どころの少し前。すとんさんがおっしゃる舞台より上になる場所。
    コンクールなどでは、審査員が座る位置を目指していました。

    演奏者の方の所作、運指、ブレス、立ち方。ピアノではペダルの使い方などなど「こういう時はどうするんだろう?」という勉強のために一番前に座ります。

  2. すとん より:

    meeさん

     そうそう、私も一番前に座る理由の一つに、演奏者の演奏している姿をじっくりと見るため…というのがあります。音を聞いているだけでは分からない事が、見ていると分かるって、たくさんあります。はは、結局、私も勉強のために、前で見ていた…んですね。

     楽器もそうですが、歌だと、息遣いや筋肉の動かし方など、音にならない部分は、やはり前で見ないと分からないものなのです。

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